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〈投稿〉 民族の一員として、女性として

朝鮮新報のコラムを読んで考えたこと

 ごく普通の在日朝鮮人女性の体験、その被害の状況に怒りがこみ上げ、悔しさで涙があふれた。自分よりも弱い人間に痴漢行為をする者に対する怒り。若い同胞女性を守ってあげることができないもどかしさ。

 しかし、このような「凄まじいまでの蔑視」が、今の日本で、なんと多いことか!(朝鮮高級学校の「無償化」除外問題しかりである)

 チョゴリを着ていると痴漢行為をやめようとしない、という証言は衝撃的であった。「彼ら、相手が朝鮮人だと、自分が悪いことをしているとか、通報されて捕まるかもしれないとか思わない」ということがショックであった。

 だが、それは当然かもしれない。なぜなら今の日本社会では在日朝鮮人には何をしてもかまわない、言い換えるなら、在日朝鮮人にはどんなことをしても罰せられないという現実があるではないか。朝鮮学校の子どもたちに暴行、暴言を加えて捕まって処罰されたという話をいまだ聞いたことがない。民間レベルでの差別の問題ではない。

 日本政府が在日朝鮮人差別を傍観し、黙認し、無策という方法で差別をバックアップし、今では朝鮮民主主義人民共和国を敵視する政策のもと在日朝鮮人を「北寄り」「南寄り」に分けて徹底して差別しているのである。

 その最先頭に立っているのが中井拉致問題担当大臣であろう。彼は拉致問題の解決のために選ばれた政治家であるにもかかわらず、問題の本質の追求もその解決策の試行錯誤も放棄し、文科省が出した「すべての高校生が平等に学ぶ権利を保障する」という「高校無償化」政策の対象である高校のうち、朝鮮高級学校だけ排除をしているのである。公の場で。そして拉致問題担当大臣であるがゆえに言いたい放題、やりたい放題で、日本の国民はそれを許してしまっているのである。

 私は思う。だから、「従軍慰安婦」問題は徹底して解決すべきである。

 日本の、国家としてのこの犯罪の事実をすべて明らかにし、女性として、母親として悪夢のようにつらい体験を強要されたすべての被害者に思いをはせ、この犯罪に関わった者をすべて処罰し、二度とふたたび繰り返さないようにしなければならない。民族差別もレイプも共に重大犯罪であり、犯した者は処罰されるのだということを世論化すべきである。

 朝鮮女性を「性奴隷」にした国家は犯罪国家としての審判を受けるべきである。それが再発防止の必須条件になる。戦争に行って現地で「慰安婦を買った人」はその事実を心から恥じるべきなのである。正義とは何か? 悪とは何か? 明確にしなくてはならないだろう。

 今の日本にはこの犯罪の予備軍が大勢いるということは確実であり、それはつまり私たちの娘たちが再び被害を受けるということを意味するのだ。くだんの彼女のように。

 杞憂だと誰が断言できるだろうか。

 だから、「過去の清算」が必ず必要である。

 日本が「過去の清算」をしていないということはどういうことなのか? お金の問題ではない。良心の問題である。他国を侵略し植民地にするということの罪の重さをきちんと検証し確認すべきであり、二度と繰り返さないことがより重要であろう。

 そのために今、私たち在日朝鮮人2世、3世がすべきことがたくさんある。何ができるのか積極的に探すべきだろうと思う。

 そして経済発展した元植民地宗主国に住み続けている私たち。祖国よりも発展した経済社会の恩恵を受け、飢えることなく生きてこられた私たち。厳しい差別社会で朝鮮人として生きるのは容易いことではない。が、私たちは単なる被害者、完全なる被害者と言えるのか? 日本が犯した加害の歴史を知る努力をせず、「従軍慰安婦」問題を他人事のように無視してしまっている私たちは被害者なのか? 無意識のうちに加害者に加担しているのではないか?

 あらためて、問いかける。北とか南とかということではない。民族の一員として祖国を思うとき、なぜこんなに胸が痛むのだろうか?

 確かに今の日本社会で朝鮮人として生きることは容易いことではない。辛いことだらけだ。しかし、忙しいと言いながら、怠慢に暮らしていないか? 難しい時代だと諦めていないか? 自分のために、そして未来のために今すべきこと、できることがあると思う。

 トー ヌッキジョネ。(朴美順、愛知県瀬戸市在住)

[朝鮮新報 2010.8.24]