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〈本の紹介〉 近代日本の戦争 台湾出兵から太平洋戦争まで

日本の歪んだ歴史認識を正す

 田母神俊雄元自衛隊航空幕僚長の論文「日本は侵略国家であったのか」が「真の近代史観」をテーマとする懸賞論文で最優秀賞を獲得し、その内容が2008年10月末に明らかになって物議をかもした。

 その内容とは、明治維新から第2次世界大戦までの約67年間のうちに「日本が行った出兵は、いかなる場合も合法的であり、相手国の了承を得てのものだった」と主張する荒唐無けいなものだった。

 同氏は退職後も約1年の間に10冊を超える本を出版し、全国で講演会を開いては間違った歴史観を国民に与え拍手喝采を浴びている。

 日清戦争時、「済物浦条約」上の「兵員若干」が認められていたにもかかわらず、4千もの日本軍が韓国へ出兵された。まさに詐欺的強盗行為といわざるをえず、「相手国の了承、条約にもとづいている」とは口実にすぎない。

 また、こういった主張は同氏の独創に限るものではなく、日本の保守的な政治家や文化人によって繰り返し主張されてきたものでもある。

 本書では、同氏が主張する間違った歴史観を厳しく批判し、近代日本が行った台湾出兵から始まり太平洋戦争に至るまでの10の出兵について考察し、そのすべてが「相手国の了承を得ないで一方的に軍を進めた」ものであったことを論証している。

 一つの戦争が次の戦争へとつながりまた新たな戦争を引き起こしていく。そういった戦争の連鎖の中で強制的に断行された不当な「韓国併合」は今年で100年を迎える。

 本書は、そのような戦争の事実が徐々に風化していくなかで、正しい歴史認識をしっかりと持つための最良な入門書となっている。(梅田正己著、高文研、1800円+税、TEL 03・3295・3415)(梨)

[朝鮮新報 2010.7.23]