〈渡来文化 その美と造形 21〉 耳飾り |
日本の古墳から出土する耳飾りには、主環に一条あるいは数条の垂飾りの付く有鎖式のものがあって、鎖の長短によって長鎖型と短鎖型に分けられる。 長鎖型には、金製で中間飾りに円形の歩揺を取り付けた熊本県江田船山古墳出土のものや、中間飾りの空玉と、金線をらせん状に巻いた飾りに円形の歩揺を多数取り付けた奈良県新沢千塚古墳126号墳出土のものがあり、これは鎖の長さが21.5センチあって、同型の中では最も長い。 短鎖型と呼ばれるものは、主輪に数条の垂飾りを下げるものと、一条のものとに分かれる。前者は、梔子形垂飾りを用い、刻目突帯や金粒の装飾を施している。後者は、心葉形、三翼形の垂飾りを下げる。 また、無鎖式垂飾り付き耳飾りは、主環に碗型などの中間飾りをつけたもので、個性的なものが多いとされる。 新沢千塚古墳126号墳は、東西22メートル、南北16メートル、現状の高さ1.5メートルほどの長方形の古墳で、出土遺物は朝鮮と関わりが大変深く、数量的にも多い。このうち、一対の垂飾り付耳飾りは、一個の主環に3条の垂飾りがついている。3条のうちの1条の中間飾りには、針金の芯に歩揺を通した金線を巻きつけたものを7個つなぎ、歩揺のついた空玉と中空になった三叉状の垂飾りがその下端についている。このような形式は、皇南大塚南墳の金冠垂飾や慶州・校洞出土の耳飾りに見られる。残りの2条は、細い兵庫鎖(長円形の金属の環を二つ折りにして連ねた鎖)を主体とし、間に歩揺を巻きつけた飾りと、下端に空玉を下げている。実に優美で繊細なものである。 江田船山古墳は、5世紀後半築造の全長61メートルの前方後円墳である。家形石棺から金銅製冠帽、純金製耳飾り、金銅製飾履など、朝鮮とのかかわりの深さをうかがわせる副葬品が出土している。 純金製耳飾りは一対あり、長鎖式のもので、ひとつは、空球と宝珠形・円錐形の垂飾りを兵庫鎖で連結している。空球は金粒や刻目突帯文が刻まれ、円錐形垂飾りには青色のガラス玉が嵌め込まれている。もう1つは、大小の心葉形垂飾を板状の継ぎ手で連結し、三角形の切込みをもつ一対の円筒状飾りを間に付けている。 4世紀前半、伽耶地方で盛行した垂飾り付き耳飾りが、5世紀後半に日本に伝えられ、後に、新羅からも導入され普及していったものと考えられる。 これらの耳飾りは、日本では九州から関東地方にわたる40以上の古墳から出土しており、それも、飾履、冠、帯飾り、指輪、ブレスレット、ネックレスなどと同伴していて、その影響が広く強い。(朴鐘鳴 渡来遺跡研究会代表、権仁燮 大阪大学非常勤講師) [朝鮮新報 2010.7.12] |