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〈みんなの健康Q&A〉 加齢と健康寿命(上)−高齢期の変化

 Q日本では平均寿命が延び続けていますが、いくつになっても健康で自立した生活を送りたいと誰もが願っています。

 A:最新の統計では日本人の平均寿命は男性は79.29歳、女性は86.05歳で、それぞれ世界で第4位、1位であり、日本は堂々の長寿国として君臨しています。

 しかし、この平均寿命は生存者の年齢を一律に足して割ったものですから、元気な人も、寝たきりの人も、いっしょに計算されているわけです。

 そこには生活の質は考慮されていません。

 日本では保険制度が確立されているので医療受給のおちこぼれがなく、またさまざまな介護・入院施設が増えているので、たとえ寝たきりで何もかも介助が必要な人でも長生きができます。

 Q平均寿命といっても、健康的に長生きしている年齢と必ずしも一致するとは限らないわけですね。

 A:日常的に介護を必要としない自立した生活ができる生存期間こそ大切にしなければならないという観点で、WHOでは「健康寿命」という概念を提唱しています。

 平均寿命から健康寿命を差し引いた年数はすなわち介護を必要としている期間と規定され、これは何らかの病気で入院中か寝たきり、自宅療養などを余儀なくされている期間ということになります。

 長寿国とはいえ、日本ではこの要介護年数が7〜8年といわれており、決して短いとはいえないのが現状です。

 Q老い、老化といわれる高齢期の体の変化について教えてください。

 A:老化とは加齢とともに心身の機能が低下することを言います。

 加齢という時間の流れは万人平等に同じ速さで進行するものですが、老化の速さは人によって大きく異なり、老化の早い人もいれば、遅い人もいます。

 外見的な老化として、皮膚の弾力がなくなってきます。

 それに、顔や体のあちこちにしみもできます。髪の毛はだんだん薄くなり、白髪化していきます。

 視覚では近くの細かい文字が読めなくなり、いわゆる老眼になります。また、白内障になる人が多くなります。

 聴覚では、耳が遠くなり、人との会話が困難になり、都会のざわざわした中では話を聞き取るのが難しくなります。

 歯ももろくなり、咀嚼力が落ち、食べるものも制限されてきます。

 骨や関節が弱くなり、反射神経も衰えてきますので、転倒したり骨折する危険性が高くなります。

 とくに女性は女性ホルモンの急速な減少や、過去に出産などで失われたカルシウム不足が関わり、50歳前後から骨粗鬆症を引き起こしやすくなります。

 体全体としては、細胞の免疫力や適応力が低くなり、ウイルスや細菌に対する抵抗力や病気からの回復力も低下してきます。

 Q年齢とともに物忘れをしやすくなり、注意力が散漫になるといわれていますが、なぜですか。

 A:脳細胞の減少から、意志や注意力をつかさどる脳の前頭葉や記憶と関係している側頭葉が老化してくるといわれています。

 しかし、言語機能や感覚をつかさどる機能は最後まで残り、判断力や総合的なものを考える力は衰えません。(金秀樹院長、医協東日本本部会長、あさひ病院内科、東京都足立区平野1−2−3、TEL 03・5242・5800)

[朝鮮新報 2010.6.30]