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〈本の紹介〉 祖国と母国とフットボール

真の友情とひたむきさ

 待ちに待ったスポーツ最大の祭典、サッカーW杯の季節。在日同胞がいつものW杯よりもっと高揚した気分でこのシーズンの到来を迎えたのには、それなりの理由がある。何と言っても北南の同時出場。とくに北は44年ぶり! しかも、それ以上に胸が高鳴るのは、鄭大世、安英学、梁勇基という「わが息子たち」の活躍が期待されるからだ。

 私たち民族はかつて亡国の悲哀を味わった。奇しくも今年は強制併合から100年の年である。その1世紀の民族の受難、在日同胞の苦難の歴史を越えて、尊厳ある生を刻んできた同胞たちの結晶である3人の選手たちが、世界の檜舞台に立ったのだ。まさしく、祖国・民族の運命と海外同胞の存在は強くつながっていることをこれほど証明するできごとが他にあろうか。

 こうしたときにぜひ一読してほしいのが、本書。先にあげた3選手だけでなく、現在、多くの在日サッカー選手たちがJリーグなどで活躍している。彼らは若い。1世や2世のようなしがらみはない。だが、日本で生まれ育ち、日本の若者と同じ時間の流れのなかに身を置いても、彼らは祖国を思い、同胞らの愛情を受けて芯のある朝鮮人として育った。そして、サッカーを通じて日本の人々とめぐり合い、真の友情と信頼を築き上げている。本書にはそうした血の通った人間同士の交流が随所に出てきて、感動的である。国境を超えた人間の絆の深さ、スポーツ交流のすがすがしさに心打たれる。しかし、本書で一つ難を言えば日本を「母国」と表現している点だ。「祖国である朝鮮半島と母国である日本」という言葉の使い方はおかしくないか。選手たちは日本を「母国」として認識しているだろうか、という根本的な疑問である。ブラジル戦の国歌斉唱の際に見せた鄭大世の感極まった涙。

 生まれて育ったのは日本であっても、祖国・朝鮮を背負って世界へと奮い立つ戦士の涙に違いない。(慎武宏著、ランダムハウス講談社、TEL03・5225・1610、1800円+税)(粉)

[朝鮮新報 2010.6.18]