〈朝大 朝鮮歴史博物館-10-〉 朝鮮の三国時代7 高句麗壁画古墳/四神図 |
東西南北、四方を護る神獣たち 高句麗の古墳壁画には四神図も描かれている。四神とは、四方をつかさどる想像上の神獣で、東の青龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武の総称である。高句麗では5〜6世紀頃から人物風俗図に四神が現れ、やがて四神図だけが壁一面に描かれるようになる。四神図は高句麗壁画古墳に描かれた最後のモチーフでもある。今回は四神図コーナーについて紹介する。
地名の残る江西三墓
四神図が描かれた古墳のなかで最も有名なものはおそらく江西三墓であろう。ここでいう三墓とは三基の墓という意味である。この古墳は南浦市江西区域三墓里に位置しており、その地名が示すとおり大・中・小の墳墓が鼎立している。時代は7世紀前半頃である。 三基のなかで南にある大墓と、その後方に並列する二基のうち西側にあたる中墓からは四神図が確認された。よく磨かれた花崗岩の壁面に直接描いたものである。残念ながら東の小墓からは壁画が確認されなかった。 朝鮮学界では被葬者を7世紀前半の王にあたる26代嬰陽王と27代榮留王、弟の太陽とみる。ちなみに太陽は王位にはついていない。大墓の天井に王墓の証しといえる黄龍が描かれているのがその重要な根拠なのである。
大墓の青龍と玄武
大墓には四神すべてが描かれているが読者の方々にお馴染みなのは青龍と玄武かもしれない。 まずは青龍を見ることにする。余談ではあるが来館者から龍と虎はどのように見分けるのかとよく質問される。壁画の配置(方角)と角の有無で見分けると答えているが、なるほど龍には角があり虎にはないのである。よくみると青龍の頭部と首部は「S」字に描かれその首部には帯のようなものが見てとれる。舌は前方にのびていて爪は三本。これらは高句麗の青龍によくある特長とされる。少し離れてみるとこの青龍、威風に満ちあふれ天空に浮かぶがごとくである。 蛇と亀が絡まった玄武は、首部の色彩がとてもカラフルで、身を回転させながらからまる蛇がよく表現されている。見事な構図と色彩を兼ね備えた江西大墓の青龍と玄武。一見の価値があるといえる。
中墓の朱雀白虎
江西中墓でよく紹介される四神図に朱雀と白虎がある。 南の神獣である朱雀の朱色は実に鮮やかで1400年の時を越えて伝わったものとはとても思えない。来館されるとわかるのだがこの朱雀、他の四神に比べひときわ小さいのである。これは墓室の羨道(出入口)の両脇に対で描いたためである。 西の白虎は躍動的で今にも襲いかかってきそうな凄みが感じられる。頭部と細長い胴部が実にバランスよく配置され、振り上げた右足はまさに生きている虎そのものである。朱雀と白虎もぜひ見てほしい展示品なのである。(河創国・朝鮮歴史博物館副館長) 朝鮮歴史博物館へは「朝鮮大学校国際交流委員会」へ電話連絡のうえお越しください。 朝鮮大学校 東京都小平市小川町1−700、TEL 042・341・1331(代表)。 アクセス ・JR中央線「国分寺」駅北口より西武バス「小川上宿美大前行き」または「小平営業所行き」「朝鮮大学校」下車徒歩1分 ・JR中央線「立川」駅北口より立川バス「若葉町団地行き」、終点「若葉町団地」下車徒歩10分 [朝鮮新報 2010.6.18] |