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〈本の紹介〉 韓国・獄中からのラブレター「愛はおそれない」

現代史の生々しい証言

 解放後、朝鮮民族は日本による長い植民地支配に終止符を打ったものの北と南に分断され、冷戦下で緊張と反目を強いられた。南朝鮮では長期の独裁政権下、市民は貧困と飢え、暴力の恐怖に打ちのめされていた。1960〜1980年代までは独裁政権がすべての権力を駆使し、人々の生活を圧迫、抑圧する「冬の時代」であった。

 そんな激動の中、民主化運動に積極的に参加していた朴聖焌は先輩から借りた「禁書」を読んだということで投獄され、結婚後6カ月目にして韓明淑と13年間引き裂かれることになる。その間、韓明淑も2年4カ月間の獄中生活を強いられる。

 獄中にいる夫を支え、5人兄弟の長女として家庭を支えながらも勉学を怠らず、常に穏和な心と笑みを絶やさなかった。民主化と統一を求め、強靭な精神力を持ち不屈にたたかい続けた韓明淑は後に南朝鮮初の女性首相に就任。今回の南の地方選挙で李明博政権による反北宣伝のすさまじい攻撃の中で、ソウル市長選に立候補、大接戦を繰り広げ、平和と統一を望む民衆の大きな支持を獲得した。

 朴聖焌も過酷な監獄の中でも、多様な分野の読書と思索で知識を積み重ねていった。

 絶望的な日々の中、二人は決して卑屈になったり恨んだりせず、むしろその暮らしの中で希望を見つけ、ともに成長し、お互いを信じる力によって強く結ばれていた。

 約500通の書簡は互いに寄り添って励ましあう二人のピュアな心が綴られており、2007年に南朝鮮で「獄中書簡集」(原文)が出版され、珠玉のラブレターとして話題になった。それは現代史の生々しい証言であるとともに、その時代を生き抜いた人々の貴重な歴史記録でもある。(韓明淑、朴聖焌著、徐勝訳、解説)(朝日新聞出版、1800円+税、TEL 03・5540・7793)(梨)

[朝鮮新報 2010.6.11]