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〈詩〉 友よ

遠く去った 友よ
君も俺と同じ八十路を迎えたことだろう
金剛山の雪も溶け 春風に白髪をなびかせ
朝鮮の地に立っている君を思う

祖国を愛する為に帰ると
祖国を失った俺に告げた
あの時の君の其の面構えを忘れない
学業なかばで去っていった 友よ

今、君の祖国は三十八度線のすぐ向こうに
三万の核兵器を抱える軍隊と
十万の韓国軍に日々凝視されている

ならず者の国家として先制攻撃を受け
葬り去られたイラクの悲劇を
友よ 大きな恐怖として受けとめていないか
人間は平等に生きる権利があるんだと
日本で差別された二代に渉る生き様を
刻んで君は祖国に帰った

洪水や飢饉の貧困のなか
未知の社会主義経済のあり方を
聡明な君は今、年輪をかけて
思考を重ねていることだろう
それを許さぬ核を備える強大な国の前で
恐怖を抱えながら友よ 祖国を守るすべを考えるか

友よ 北風は厳しかったと思う
奥さんを貧しさの中で亡くしたという君
だが子供も孫も元気で
ピョンヤンに住むという労働者一家

君の選択は正しいと思う
貧しい中で祖国を守るすべと
働く人々、農村の人々と共に苦しみのなか
暮らしのたつきをまさぐる君の選択は正しい

友よ 俺が想いを馳せる君の
その白髪の一本一本が
僕ら青春時代にえがいた理想を
苦しみを噛締めながら生きた君の
命の証として銀色に光っている

友よ やがて昔ながらの長閑な
朝鮮の風景のなか 君と逢いたいと思う 友よ!

(栗原治人)

(神奈川・横浜市で開かれた第48回日朝友好展に出展された作品)

[朝鮮新報 2010.6.7]