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安重根が国の仇を討ったと聞いて(3首)−金澤榮−

     1

平安道の壮士が一人
両目をカッと見開き走り出で
まるで仔羊でも潰すかの如く
痛快に 国の仇の息の根止めた

我 死なずに生き延びて
この良き知らせ聞く事となり
咲きこぼれる菊の傍
歓びに気がふれ
歌い狂い 乱舞する

     2

海蔘威の港を
旋回していたあの鷲が
ハルビン駅でドカンと
稲妻の如く
赤き炎を噴いたのだ

我こそと思いあがる
六大陸の豪傑たち
落ち葉散らし吹く秋風に
皆、箸をとり落とした

     3

古より滅びし国は
一つ二つではないとは言え
コソ泥、邪な売国奴らが
堅固たる国家を壊してしまい

崩れ落ちる空 支えんと
かの如き烈士が現れ
たとえ国は滅びたとて
後に残りしその光
永久に 輝かん
朝鮮古典文学選集6「漢詩集(2)」
(1985年 文芸出版社)

 キム・テギョン(1850〜1927)

 朝鮮王朝末期の詩人・学者。開城出身。20歳前後に平壌、金剛山、九月山などを遊覧しながら多くの詩を詠み、その才能を世に知らせた。42歳で科挙に級第した後ソウルに移り、主に歴史編纂作業に従事した。1905年、日本の侵略に悲憤し中国に亡命、反日運動に参加。多くの愛国的作品を残した。詩文集「江稿」、「韶堂集」などがある。

 この詩は、義兵将安重根(※詩中「平安道の壮士」とあるが、黄海道出身)が、伊藤博文をハルビン駅で射殺した義挙に接して詠んだものである。(選訳・金栞花)

[朝鮮新報 2010.5.31]