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青年劇場 第101回公演「太陽と月」

 4月16日から25日まで東京・新宿の紀伊国屋ホールで、劇団「青年劇場」の「太陽と月」(作・演出=ジェームス三木)が上演された。

 同劇団はこれまでも日本の植民地支配下に置かれた朝鮮での創氏改名をテーマにした「族譜」(2006年)など、日本の現代史を直視した作品作りに積極的に取り組んできた。

 「太陽と月」は、満州を舞台に「理想の国家作り」という体裁で侵略を美化しようとした日本の野望を劇化したもの。

別人のようになって戻ってきた早苗を日出夫が説得する(写真提供=青年劇場)

 1932年、中国東北部に忽然と現れた「満州帝国」は、わずか13年で流れ星のように消滅した。当時の国際連盟は、満州を日本主導の傀儡国家と見て承認せず、中国の民衆は「偽満」と称して、存在すら認めていない。はたして「満州帝国」は存在したのか。まぼろしの国家だったのか−。

 舞台は五族協和の王道楽土にあこがれ、新天地満州に移民したある日本人家庭を描いている。

 南満州鉄道(満鉄)理事の山倉誠二郎の邸宅では、長女・早苗と婚約者・吉野日出夫との婚約の打ち合わせが行われていた。吉野は満州国政府官僚である。早苗の兄は関東軍将校だ。父・誠二郎は、満州の花形官僚の婿と関東軍将校の息子を誇りに思い「満州国はわが家にあり」と喜ぶ。

 新国家の輝ける未来とともに若い二人の幸せを願う一家に、突如として悲劇が襲う。早苗の乗ったトラックが武装農民に襲われたとの連絡が入るのだ。家族や吉野の必死の捜索もむなしく、早苗の行方はわからない。それから2年9カ月後、あきらめかけていた家族のもとに突然帰ってきた早苗は、喜ぶ家族をよそに、すっかり別人のようになっていた。

 早苗は言う。「満州国の創建をアジアの人々は歓迎したか、がっかりしたか」「戦争を起こすのは、国家になりすました政府であり軍隊だ」「天皇と溥儀皇帝のどっちが大事か」「もし、満州国と日本が戦争をしたらどっちにつくのか」…。

 家族は、早苗が「危険思想」に侵されたとして、必死の説得に当たり、監禁するにおよぶ。兄の房彦はピストルまで構える始末だ。

 作者のジェームス三木さんは、満州に生まれ、幼少期を過ごした。「かつて満州に移民した日本人は200万近くにおよんだが、誰ひとりとして満州国籍を持たず、日本人のままであった。関東軍は満州を武力で制圧し、国土防衛と治安維持に当たったが、満州国軍には入らず、あくまでも天皇の軍隊であった。満州政府の実権を握っていたのは、日系官僚であり、日本の国策によって、送り出された開拓農民は、在来の満州農民を圧迫し、不安をつのらせた」という。そして、本作品のタイトルについて「『太陽と月』は、日本と満州の相対的関係を表している。太陽から見る月と、月から見る太陽とは、まったく違う」と述べている。

 観劇中、関東軍に在日、在「韓」米軍を重ねて見たのは記者だけだったろうか。(金潤順記者)

[朝鮮新報 2010.5.14]