〈みんなの健康Q&A〉 タバコと歯周病と老化−関係と予防 |
Q:タバコと歯周病にはどのような関係があるのですか? A:喫煙はガンの重要な環境要因ですが、循環器、呼吸器系などのさまざまな疾患の発症ともかかわりが深いことが多くの疫学研究から明らかにされています。喫煙と歯周病の関係はあまり知られていませんが、喫煙者は重度の歯周病に罹る確率が5〜7倍も高いといわれています。 最近の歯科疾患実態調査の分析結果からは喫煙者は吸わない人に比べ早く歯を失い、年齢別の比較でも失う歯の本数が多いことがわかっています。 喫煙者の歯周病の特徴的な臨床像としては、腫れや出血などの症状が少ないわりに歯周組織の破壊が進んでいることや、メラニン沈着による歯肉の変色などがあります。 Q:喫煙が歯周病を進行させる理由はなんですか? A:歯周病はデンタルプラーク中の歯周病原性細菌が原因となって、歯周組織(歯肉、歯根膜、歯槽骨、歯根セメント質)が破壊される感染症です。 歯と歯茎の境目の歯根表面に付着したプラーク中の細菌の攻撃に反応して、歯肉は炎症を起こし、血管から浸出した好中球という白血球や他の免疫担当細胞が活動し始めます。 好中球は細菌を取り込み自ら壊れてしまいますが、この時に活性酸素を放出します。 炎症は生体にとって重要な防御反応ですが、同時に炎症の結果産生された分解酵素によってその場の組織を「破壊」してしまいます。 こうして歯根表面と付着していた歯肉が剥がれ、深くなった溝は歯周ポケットと呼ばれ、酸素を嫌う歯周病原細菌の格好の棲家となるのです。 タバコの煙にはニコチン、一酸化炭素、タールなど200種以上の有害物質が含まれています。 ニコチンは末梢血管を収縮させ血流量を低下させることで、外敵と戦う免疫細胞も供給不足となります。さらにニコチンは好中球の機能を低下させるため、感染が起こりやすくなるのです。細胞に供給される酸素や、栄養が不足すると破壊された組織の修復も遅れ、結果として歯周病が進んでしまうのです。 Q:喫煙者の歯周病と老化にはどのような関係があるのでしょうか? A:老化の原因として活性酸素による「体内酸化」が注目されていますが、タバコを吸うとこの活性酸素が大量に発生します。それを取り除くために抗酸化物質の代表であるビタミンCが大量に消費されるのですが、限界があり身体が徐々に錆付いていくのです。 歯を支えている歯根膜や歯肉はコラーゲン線維からできていますが、喫煙はコラーゲンの新陳代謝にも影響を与え、歯周組織の老化が進んでしまうのです。コラーゲンを主体とする皮膚も同じ様に影響を受けるため喫煙者の顔には皺ができやすくなります。 喫煙者はガンや脳血管障害、虚血性心疾患などのリスクが高まることがわかっていますが、これらは本来高齢者に特徴的な病気です。さらに、歯周病の悪化で歯を失うとQOL(quality of life=人生の質、生活の質)が低下し老化が進んでしまうことになります。 Q:歯周病を予防し若さを保つためにはどうしたら良いのでしょうか? A:歯周病はライフスタイルやストレスの影響を受ける生活習慣病と言われています。 美味しく食べ、楽しく会話し、美しい笑顔を保つためには、健康的な規則正しい生活習慣が大切です。 すなわち、抗酸化食品を含むバランスの良い食生活と適度な運動、ストレスを溜めないための工夫や、喫煙や過度の飲酒を慎むことも必要でしょう。とは言っても自己管理はなかなか難しいことも事実です。 禁煙外来や、歯周病のメンテナンスなど専門家の支援も受けてみてはいかがでしょうか?(朱弘院長、藤橋歯科医院、栃木県宇都宮市中央1−5−7、TEL 028・637・0903、http://www.fujihashi-dental.com) [朝鮮新報 2010.5.12] |