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編集を了えて

 3月初めに河津聖恵さんからメールが来て、「高校無償化」から朝鮮高級学校を除外する動きに、詩人としてひどく心を痛めておられることを知りました。とりわけ次の言葉が私の胸を打ちました。

 「日本に生まれ、日本で生きていく在日の方々の尊厳のために、あるいはそこに映し出される日本人の尊厳のためにも、ぜひお力をお貸しください」

 私はすぐに返事を出し、いくつかの具体的な提案をしました。それで実現したのが、詩人たち有志で発表した3月7日の緊急アピールです。

 神戸で開かれたその集まりでは、京都朝鮮高級学校から朝鮮大学校に進まれた詩人の金里博さんが、自身の生い立ちを含めて在日を生きることの労苦を熱い語調で語り、大きな感銘を与えました。その後、高級学校は当面無償化から除外し、第3者機関を設置して教育内容を検証するという政府方針が決まり、次の行動が必要になりました。

 富哲世さんからの提案で、リーフレットを作成して詩人たちがそれぞれ自分の言葉でこの問題を語り、広く世論に訴えて行こうということになったのが3月14日、神戸のスペイン料理店カルメンにおいてでした。原稿の締め切りを3月25日にしましたが、予想を上回る24人の方々からメッセージが寄せられ、今日ここに一応の完成を見た次第です。

 ここにはそれぞれに力点を異にした問題意識と個性に応じた表現があります。しかし共通していることは、日本政府の取ろうとしている措置が民族差別を呼び覚まし、在日の若者や子どもたちを傷つけ、日本が目指しているはずの成熟した共生社会の構築に逆行することへの強い危惧です。

 私たち言葉に携わる者は、今の社会におこなわれているさまざまな言動・言説・言論に深い関心を抱いています。それが他者への想像力に裏打ちされたまっとうな日本語であることを願い、そうした思いを一人でも多くの人々に届けるべく、このささやかな冊子を世に送ることにします。(寺岡良信・詩人)

[朝鮮新報 2010.5.10]