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〈こどもの本だな〉 GWは本と一緒に過ごそう!

家族のふれあい、とんち話など

 楽しいGWはもうすぐそこ。今回は、障がいのあるお兄ちゃんを誰よりも好きになる小学3年生の男の子の物語や、解放直前の東京・渋谷を舞台に描かれた日本で暮らす朝鮮の少女、プニのお話、そして古くから朝鮮に伝わる伝説の「とんち王」キム・ソンダルと貴族や商人たちとの愉快な知恵比べ、朝鮮から来たハルモニを宇宙人だと勘違いしてしまった姉弟の楽しい創作童話など、小学校中・高学年向けの書籍4冊を紹介する。ここで紹介する本は、一般書店のほか、コリアブックセンターでも注文できる。

 問い合わせ=コリアブックセンター(TEL 03・6820・0111、FAX 03・3813・7522、Eメール=order@krbook.net)。

「ぼくのすてきなお兄さん」−本当の幸せを見つけた兄弟

現文メディア、TEL 03・6413・7691、1200円+税

 親せきのおばあちゃんの死とともに、小学校3年生の男の子ジョンミンのもとに現れた人−。

 それは、ジョンミンには知るよしもなかった、兄のジョンシクだった。

 しかも、彼は、車椅子に乗った脳性麻痺の兄…。

 幼いジョンミンはどうしてよいかわからず、はじめは、今まで自分だけをかわいがり育ててくれた両親から見離されたと思い込み、悪態のかぎりを尽くし、ついには家出までしてしまう。

 兄のジョンシクは、それがすべて自分の障がいのためであると胸を痛める。

 過酷な運命を背負いながらもけなげに努力し、親せきのおばあさんの家にいたときからたくさんの本を読み、英語を学び、障がいを乗り越えて、パソコンのソフトまで作れるようになったジョンシク。

 素晴らしい兄とのふれあいの中で、世の中を見つめはじめ、一つひとつのできごとを通して、大きく成長していく弟のジョンミン。

 最後には、誰にも負けないくらい「すてきなお兄ちゃん」を好きになり、命がけで兄を助けるまでに成長する弟の姿は涙をそそる。

「悲しい下駄」−戦争が生んだ悲劇のなかで

岩崎書店、TEL 03・3813・5526、1500円+税

 敗戦濃厚だった1944年の日本。舞台は東京・渋谷の本町。そこではぼろ布のような服を着た貧しい日本人と朝鮮人が、ぼろい長屋に住んでいた。

 町内で遊ぶ子どもたちは日が暮れると、「今日の晩ごはん、なぁーんだ?」と自分がはいている下駄を空に蹴り上げる。表なら「ごはん」だと喜び、裏なら「おかゆ」だとがっかりした。しかしある日、プニという少女がけった下駄が木の枝に引っかかってしまった。その日、プニは何も食べられなかった。当時の子どもたちは、一足の下駄に喜んだり絶望したりしたのだった。そこから「悲しい下駄」は生まれた。

 また、戦争のさなか、日本で暮らす朝鮮人が望郷の思いを胸に、異国の地で差別を受け、無情の涙を流す姿も描かれている。

 大人たちのしわざによって戦争の犠牲になった子どもたちは、戦争の悲惨さやひもじさを目の当たりにしながらも、その苦しみの中で必死に生き抜いた。その戦争が生んだ悲劇は現在でも変わらず残っている。

 本書は、南朝鮮を代表する児童文学作家、権正生が日本での戦争体験を描いた自伝小説である。

「痛快!! キム・ソンダル」−悪を懲らしめ弱きを助ける」

海風社、TEL 06・6943・7041、1600円+税

 朝鮮のことわざに「笑門萬福来」というのがある。日本のことわざでは「笑う門には福来る」というが、朝鮮の方には「萬」の字が入るだけあって、笑う人にはより多くの福が来るとでも言いたいのだろうか。

 金先達は、類稀なる知恵と弁舌で時の権力に立ち向かい、数々の逸話を残した朝鮮のスーパー・ヒーローだ。

 ある時にはとんち、ある時には悪知恵を働かせて、悪者を懲らしめ、弱者を助ける、この天才的な「詐欺師」の痛快な話は、時代を超えて多くの庶民に笑いと喜びを与えてくれた。

 本には、彼が残したさまざまな伝説のうち、彼が「鳳伊」と呼ばれるようになった由来について(「序話」)のほか、第1章「困ったときの知恵」、第2章「取り引きにはご用心」、第3章「人の心はそれぞれ」に22の逸話を収録。相手をやり込める作品群は笑いをそそる。

 今に伝わる北と南の金先達関連図書を、韓丘庸さん(児童文学者)が主宰する朝鮮文学翻訳の会の「北十字星文学の会」が訳編した。

 同会は、朝鮮文学の翻訳を通じて、国と国、心と心を結ぶ橋渡しをしている。

「ハルモニは宇宙人?」−ハルモニの心温かい物語

岩崎書店、TEL 03・3813・5526、1262円+税

 ある日、突然リカの家にやってきた得体の知れないハルモニ(おばあちゃん)。今年小学校へ入学したばかりの弟アツシは、チョソン語で話すハルモニを宇宙から来たと勘違いし、大喜びする。6年生のリカは、勝手に上がりこんできた謎だらけのハルモニに、はじめはとまどいを隠せない。

 毎日家におしかけては、ハルモニの宝物を奪おうとする「トータク」。「トータク」とは東洋拓殖会社のことで、朝鮮が日本の植民地だった頃、朝鮮人からただ同様に土地を奪い上げた者たちなのだが、彼らから逃げてきたハルモニは、ママがむかし世話になったことからリカの家族と一緒に暮らすことになった。

 温かくも心優しい、人の世話が大好きなハルモニの、朝鮮植民地時代に受けた堪えがたい民族差別の話、朝鮮のすばらしい文化や昔話を聞くうちに、リカたちの心にも変化が。

 本書は、作者が「劇団うりんこ」に依頼されて書いた戯曲、「おばあちゃんは宇宙人?」を原型として作られた。

 作者自身、かつて日本が朝鮮にした非道な歴史を、日本人として見つめなおすためにもこの作品をしあげた。

[朝鮮新報 2010.4.23]