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「朝鮮舞踊の緋緞道」 金剛山&東京シティ・フィル 大舞台に向け熱こもる

コラボレーション・オーケストラと朝鮮舞踊

 来る5月6日、金剛山歌劇団創立55周年記念特別公演「朝鮮舞踊の緋緞道」が東京・上野の東京文化会館大ホールで開かれる。今回初めて、金剛山歌劇団の民族管弦楽団と東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団によるコラボレーション・オーケストラの雄大なサウンドに合わせ、華麗な朝鮮舞踊が披露される。

崔承喜から

通し稽古の一場面

 現代の朝鮮舞踊は、1930年代、「東洋の舞姫」と呼ばれた崔承喜がその礎を築き、こんにちに至るまで名立たる朝鮮の按舞家たちによって発展を遂げてきた。

 今公演では、崔承喜の幻の作品とされている独舞「荒波を越えて」をはじめ、重舞「絹糸を紡ぐ乙女たち」、三人舞「寺黨の舞」など朝鮮の名作と、群舞「春香伝」、独舞「雪竹花」、群舞「大河」など、金剛山歌劇団のオリジナル作品など現代朝鮮舞踊の歴史を語る、13作品が舞台を飾る。

 5階建ての大ホールでコラボレーション・オーケストラが奏でる、朝鮮の名曲も聞きどころである。

共演を重ねて

全神経を集中させ、作品世界を表現する舞踊家たち

 金剛山歌劇団のソリストたちと東京シティ・フィルは、一昨年、昨年と2回にわたり共演を果たし、絶賛を博してきた。それをきっかけに、東京シティ・フィルの朝鮮音楽に対する理解はさらに深まり、団員たちのつながりも強くなっていった。

 東京シティ・フィル側から再度の共演をとの声があり、昨年6月に催された金剛山歌劇団「アルム」東京公演に、同関係者たちが訪れたのを機に、朝鮮舞踊との共演を決定。昨年末から、本格的に公演の準備に取り組んできた。

 舞踊家たちは、毎日7時間、全体練習を行い、夜分遅くまで寝る間を惜しみ自己練習に明け暮れているという。数多くの作品内容を消化する力、表現力、技術技量を高めるため、日々奮闘している。

ひたむきに

ひたむきに練習に取り組む舞踊家たち

 練習まっ盛りの9日、金剛山歌劇団の練習場を訪れると、舞踊家たちは通し稽古に励んでいた。18人で数作品を演じる。頭のてっぺんからつま先まで全神経を集中させ、全身で作品の世界を表現する。一瞬たりとも気は抜けない。

 通し稽古後には、細部の調整を行っていた。指導を受ける舞踊家たちの目は真剣そのもの。また、互いにアドバイスし合い、作品の完成度を高めようとひたむきに取り組んでいた。

 同歌劇団文芸局の康秀奈創作部長兼按舞家は、「朝鮮舞踊は、わが民族の貴い財産。私たちには、それを守り発展させていく責任と意志がある。異国という厳しい状況下だが、みんながその思いを胸に、共に困難を乗り越え、やりがいを感じながら踊っている。また、これらを後代に受け継ぐのは大切な課題である。公演を通じ、日本の方々、とくに同胞たちに民族芸術のすばらしさと、それを受け継ぐ3、4世たちの姿から力を得てもらえればうれしい」と語る。

ひとつになり

 本番を1カ月前に控えた舞踊家たちの意気込みを聞いた。

 独舞「雪竹花」に出演する高仁華さん(30)は、「崇高な愛国心や勇敢さ、固い意志、花よりも美しい彼女の意を舞台の隅々まで広げられるよう」まずは自身が雪竹花になりきるため、役作りに励んでいる。「6作品に出演するので、体力的にも精神的にも大変だが、大勢の観客が詰めかける大舞台で踊れるだけで幸せ。そう思うと、つらい練習も苦にならない。また、今の非正常な朝・日関係のなかで、東京シティ・フィルと共演することは、大きな意義があると思う。本番に向けて、みんなが一つになり、大きな力を発揮できるよう奮闘し、民族芸術を通じて、多くの観客に感動と勇気を与えたい」。

 朴順任さん(26)は、「昨年末から練習が始まり、やっと一定の水準までできあがった。当日までの1カ月間、さらに完成度を高めるため技術を磨いていかなくてはならない。そして作品の世界をより美しく表現することに力を注いでいきたい」と、力強く語る。群舞「春香伝」で主人公の春香役を演じる朴さんは、「春香を踊るときは、自分が本当に春香なのだと思い込んで作品の世界に完全に入り込む」と言う。

 「今回の公演は、金剛山歌劇団創立55周年を迎える記念すべき公演。今まで困難を共に乗り越えてきた団員たちと力を合わせ、観客たちの心を打つ、すばらしい公演になるよう、さらに練習を重ねていきたい」と意欲を示した。

 男性舞踊家の劉正一さん(30)は、「春香伝」で夢龍役を演じる。彼は、「30年ぶりとなる東京文化会館での公演は、歴史の新たな1nを開く意義深いものになると思う。また、東京シティ・フィルとの共演は、朝・日の友好においても好機だと思う。今、『高校無償化』問題が浮上しているが、公演を通じ、日本の方々に民族芸術のすばらしさを伝えることによって、曇った朝鮮像を少しでも拭ってもらえれば。あとは、最高の舞台を届けられるよう一致団結し、残りの課題を克服していきたい」と話した。

 独舞「荒波を越えて」に出演する李華仙さん(22)は、「日本の名高い楽団とのコラボ演奏で踊るのが楽しみ。観客たちには今までとは一味違う、さらに迫力のある舞台を披露することができると思う。今公演は、朝鮮の植民地時代や、現在の在日同胞社会の現状を表した作品など、朝鮮民族のさまざまな歴史が込められている。とくに日本の方々に、在日朝鮮人の悲痛な歴史的事実とすばらしい民族文化を伝え、私たちの明るい未来を共感してほしいと思う」と語った。

 大舞台まで余すところあと13日。練習は佳境に入り、舞踊家たちは、本番に向けてさらに熱を入れている−。(文=姜裕香、尹梨奈、写真=盧琴順記者)

●朝鮮舞踊の緋緞道

 会場=東京文化会館(上野)
 日時=5月6日(木)
 18時開場、18時半開演
 チケット=S席7000円/A席5000円/B席3000円/C席2000円(全席指定)
 問い合わせ=金剛山歌劇団特別公演実行委員会
 TEL=042・341・6411

[朝鮮新報 2010.4.21]