〈渡来文化 その美と造形 11〉 古墳壁画−四神図 |
1972年、奈良県明日香村の高松塚古墳から極彩色の壁画が発見された。石室四面の壁に四神図と男女の人物像、天井には金箔の星を朱色の線でつないだ星宿(星座)が描かれていた。 1983年には高松塚に近いキトラ古墳から同じく極彩色の壁画が発見された。 高松塚は直径18メートル、高さ約5メートルの円墳で、石室は高さ113センチ、幅103センチ、奥行き265センチ、キトラ古墳は直径14メートル、高さ3メートル、石室は高さ111センチ、幅103センチ、奥行き260センチの、それぞれ横口式石室を持つ7世紀末〜8世紀初ごろの古墳である。 それぞれの石槨壁面には漆喰が塗られ、東西南北に、青龍、白虎、朱雀(高松塚でははがれ落ちてしまっている)、玄武の四神図が残っていた。キトラ古墳では、さらに四方の壁のそれぞれに三体ずつの獣面人身像(十二支)と、天井には内規、外規、赤道、黄道を描き、金箔を朱線で結ぶ星座を配置した本格的な天文図が見られる。外規の東西には日輪、月輪が外接している。 高松塚では四神図とともにそれぞれ四群、十六体の男女像が描かれ、天井には星宿が描かれている。 青龍、白虎は首を「S」の字状に持ち上げ、全身に蛇のうろこが描かれ、たてがみが火炎状にたなびいている。左右の前足を踏ん張り、威嚇するような姿が力感にあふれる。青龍は赤い舌先と前足のつめ先が確認できる。 玄武は、蛇と亀を組み合わせた図柄で、亀や蛇の頭や亀の足、など細部にわたりよく表現されている。また、緑色の蛇のうろこ、亀の甲羅文様なども見ることができる。 朱雀は、鮮やかな色彩とともに、大きく広げた翼、力強く前方をにらむ顔など、今にも飛び立とうとでもしているかのような躍動感にあふれている。広げた翼の「唇形」の羽根は、江西大墓など高句麗古墳壁画の朱雀に共通する。 四神はそれぞれの方位を守るもので、四方の星座を動物に例えるところから発生したものであり、死後の絶対的守護神とされる。 朝鮮では、とくに高句麗で古墳壁画(4世紀末〜7世紀中葉)が数多く描かれ、キトラや高松塚古墳などのように人物風俗画と四神の組み合わさった壁画を持つ古墳としては、20基以上が知られ、また、四神のみが描かれたものとしては平壌南郊の江西大・中墓など、多数知られている。 付言するならば、高句麗壁画の白虎・青竜図の脚先はそれぞれ三本爪であり、高松塚とキトラ古墳の壁画も同様である。中国のそれらは四本爪である。これもおもしろい。(朴鐘鳴 渡来遺跡研究会代表、権仁燮 大阪大学非常勤講師) [朝鮮新報 2010.4.5] |