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〈徐千夏先生の保健だより-3月-〉 「心肺蘇生法をならったよ!」

 毎年、卒業を控えた尼崎朝鮮初中級学校中級部3年生は体育授業の一環として消防署の指導による心肺蘇生法の講義を受けることが恒例になっています。

 この日は私も一緒に参加させてもらいました。心肺蘇生法とは、人が倒れた場合、救急車を呼んで到着するまでの間、それ以上悪化させないで状態を保つことであり、必要によっては安全な場所へ移し、人工呼吸や心臓マッサージあるいはAED(自動体外式除細動器)を使用する応急処置のことを指します。

 はじめ消防署の隊員の方が心肺蘇生法のお手本を見せてくれました。きびきびしていてとても緊張感がありました。生徒たちも固唾をのんで見守りました。終わった瞬間拍手がおこりました。次に実際に生徒たち全員に行ってほしいということでした。最初は恥ずかしがっていた生徒たちですが、「この人形が自分の両親や家族だったらどうしますか?」という隊員の一言にもう一度「ピリッ」とした緊張感が走りました。

 実際に人形に人工呼吸してみたものの、開く口が小さくて空気が漏れたり、心臓マッサージも結構な力が必要なので、女子生徒は苦戦していました。が、取り組む姿勢は恥ずかしがっていた最初とはうってかわって、真剣そのものでした。

 最後にAED機械の説明を聞きました。生徒のほとんどがその機械の存在を知っていました。尼崎初中でも校長室に設置してあります。

 何か質問がある人? との問いかけにいろんな質問が飛び交いました。

 @「溺れた人にAEDを使ってもいいのか?」

 A「ひと気のいない山で誰かが倒れた場合、どうやって救助するのか?」

 B「胸毛が多い人はどうやってAEDを使うのか?」などなど…。

 ちなみに@はパッドを貼る場所をタオルで拭いて使用する。

 Aは安全な場所へ移して、まずは容態を確認する。心肺蘇生法が必要なら続けて、必要なさそうなら、助けを呼びにいく。

 Bは毛が邪魔して電機が通らないので、まずはパッドでビリビリっと毛を抜いて、はじめるという返答が返ってきました。

 救急車が来るまで平均7分、心臓が止まってから3分で50%が死亡、呼吸が止まってから10分で50%が死亡するという「カーラーの救命曲線」があります。

 というように、救急車が到着するまで、何らかの処置をしなければ倒れた人を救えないという緊迫感も教わりました。

 何人かの生徒に感想を聞きました。

 「たくさんのことを習いました。これからもし電車の中で倒れた人を見かけたら、助けたいと思いました」

 「講義の間、たくさんのことを教わりました。人工呼吸が弱い、心臓マッサージの速度が速すぎる…この経験を生かして、人助けをしたいと思いました」

 「聞いたり、見たりするのより実際にやってみると全然感じが違いました。これを期にもっと詳しく勉強して何かに生かしたいと思いました」

 「実際に蘇生法を経験して、医療従事者の大変さが身にしみてわかりました。これからは社会に貢献できる人間になりたいと思いました」

 さすがは卒業を控えた生徒たちだけあって、しっかりした考えを持っていました。

 こうした経験が将来の人生選択の一つとなり、社会で生かせたらいいなと思いました。

 みなさんの学校でも、心肺蘇生法の講義をぜひ生徒たちに体験させてあげてください。

 きっと、何かを感じとってくれると思います。

[朝鮮新報 2010.3.24]