top_rogo.gif (16396 bytes)

私の中に−許英子−

雷鳴が
私の中に あるのなら…

世渡りに疲れ
くたびれてしまった私の魂
邪で 卑屈になり
思わず膝をつこうとするとき
自ずと響く自鳴鼓のような
雷鳴、轟く叱責があるのなら

稲妻が
私の中に あるのなら…

些細なことに囚われ泣き笑う
小人の輩になり下がり
満面朱を濺ぎ 諍うとき
千万度のあの焔で灸をすえ
生まれ直すことができるのなら

あぁ、
一杯の清らかな若水が
私の中に あるのなら…

垢染み 汚れてゆく
私の顔 私の手
老いと共に日々積りゆく 我執に慾
冷たい水で 潔く濯ぎ流し
真っさらに洗いあげた晒しのように
きれいに なれるのなら

許英子詩集「銀の重み」(2007年・村)

 ※自鳴鼓=敵が侵入するとひとりでに鳴ると言われた太鼓。古代朝鮮・樂浪にあったと伝えられる。

 ホ・ヨンジャ(1938〜)

 詩人。慶尚南道咸陽郡生まれ。韓国文檀史上初の女性同人「青眉」の結成に参加。1972年〜2003年まで誠信女子大学校国語文学科教授として在職。現在同大学名誉教授、韓国詩人協会長、韓国女性文学人会長など歴任。(選訳・金栞花)

[朝鮮新報 2010.3.8]