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〈渡来文化 その美と造形 7〉 法隆寺−百済観音

 法隆寺の古書に「百済より伝来」といわれる観音菩薩立像がある。1897(明治30)年に「観世音菩薩乾漆立像(伝百済人作)1躯」とあり、また、1951(昭和26)年、「木造観音菩薩立像(百済観音)1躯」として国宝に指定され、「百済観音」との愛称がある。

 平面五角形の台座に直立する。八頭身に近いほっそりとした長身で頭部がやや小さい。右腕は肘からほぼ直角に曲げ、肘から先を前方に向けて水平に突き出し手のひらを上へ向ける。左手は垂れ下げ、肘を前方に軽く曲げて手の甲を前方に向け、水瓶を持つ。下半身には裳を着け、天衣をまとう。天衣は大腿部正面でX字状に交差して両腕にかかり、両方の側面に垂れ下がる。頭髪は髻を結い、自然な波型の垂髪で両肩に長く垂れ下がっている。

 装身具は宝冠、首飾り、臂釧、そして腕釧などである。宝冠の正面に阿弥陀如来化仏(小型の仏像)が刻まれている。これらは銅製透し彫りで、別に作ったものである。

 左手に持つ宝瓶は、親指と中指で挟み、しなやかに表現されている。

光背は宝珠形で頭の後部にあって、中央部に八葉蓮華文を、その周囲には同心円状の文様帯があり、さらにその外側の周縁部には火焔文様が描かれている。光背の支柱は岳を表現した木製で、光背の基部には山岳形の装飾がある。台座は五角形の反花(蓮の花を裏返した形)座の下に2段の框がある。

 百済観音像は、人体をより立体的にとらえ、側面観も自然に近く、横から見ると体の線が緩やかな「S」字状になっている。天衣はゆるやかな曲線を描きながら前後方向にムーブマンを示し、両手の各指の多様な曲線表現などの写実的な表現は、側面をも意識したものといえる。

 面長、細身の体、そして長い足など、「異国」風の容貌にはかつては極彩色によっていっそう際立ったことだろう。

 この像は、忠清南道瑞山郡雲山面の磨崖三尊石仏像(6世紀)の向かって左の脇侍菩薩像と非常に共通していて、顔が実にやさしく作られている。なるほど、百済か、と容易に想像できる。

 この流麗な像の美しさは、日本の飛鳥時代彫刻を飾る典型といえよう。(朴鐘鳴 渡来遺跡研究会代表、権仁燮 大阪大学非常勤講師)

[朝鮮新報 2010.3.1]