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くらしの周辺−価値観について

 私は2回の訪朝を経て、価値観について強く考えさせられた。

 1回目の訪朝は99年で、一番苦しい時期でもあり、中でも私を一番悩ませたのが電気事情だった。夜になると平壌といえども辺りは暗闇に閉ざされ、しばしば停電もあった。

 文明社会のとんでもない優越感にどっぷりと浸かってしまっていた当時の私には、それは苦痛で仕方がなかった。

 しかし、現地でエスコートしてくださった方の一言、「電力で不便をかけて申しわけない。でも夜暗いのは当たり前。夜でもこうこうと光が差している日本の方が異常なのかもしれない」と。

 私は頭を殴られたような衝撃を受けた。なぜなら、それまで日本中心に社会を見ていたということに気づかされたからだ。その日を境に、物事をできるだけ多方面から見ていくことを心がけるようになった。

 それから10年余りが経ち再び訪朝した。「ウリナラ」は大変革を遂げていたが、ここでも価値観の違いを感じた。それは食べ物に関してだ。

 「ウリナラ」で食べた、かたちは決してきれいではないが、とてもおいしかった無農薬リンゴや、ホクホクのジャガイモの味が、今でも口の中に鮮明に残っている。

 今度また、それらを味わえるのは、いったいいつになるのだろうか? 一日でも早く自由に行き来ができるようになって、今度は無農薬の本当のおいしさを知らない日本の子どもたちに、ぜひ食べさせてあげたいと思っている。(藤代隆介 北海道初中高サッカー部監督)

[朝鮮新報 2010.2.5]