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〈第32回在日朝鮮学生「コッソンイ」作文コンクールから〉 中級部1年 作文部門 1等作品

ウェハルモニ

 ぼくは歴史に興味があります。

 歴史と言えば、高句麗を建国した東明王や、亀甲船を造り日本を負かした李舜臣将軍、伊藤博文を暗殺した安重根、朝鮮史は習えば習うほど楽しいです。ぼくは、「朝鮮の名人」という本が大好きで、よく読みます。

 だけど、歴史を習うたび、1910年に日本に国を奪われた、あの時がいつもぼくの胸を刺します。

 あの時、朝鮮民族がどれだけの苦しみを味わったか、日本に残酷なことを強いられたのか、どれだけ多くの朝鮮人が血を流したのか、朝鮮人の姓と名を奪われ、美しい朝鮮語まで奪われたのかと思うと、悔しさを押え切れません。

 ぼくのウェハルモニ(母方の祖母)は、国を奪われた日帝の植民地期に、大邱で生まれました。

 歴史好きのぼくは、ウェハルモニから過去の話や、故郷にいたときの話などをよく聞くし、その時間がとても好きです。

 両班の家の娘として生まれたウェハルモニは、幼い頃から勉強が好きだったようです。

 けれども、昔は、学校は男が行くところで、女は行くところではなかったといいます。

 曾祖母に学校に行きたいとせがんでも、当然反対され「女は裁縫や家事をしっかりやればいい」と、とがめられたそうです。

 しかし、勉強をしたいというウェハルモニの心は折れなかったようです。

 山を一つ、二つ越え、何十里も歩き、字の勉強をしたそうです。

 だから、ウェハルモニは80歳にもなるけれど、字の読み書きが上手です。

 「女が何の勉強だというのか」と、反対していた曾祖母が、ニワトリが鳴く前に家を出るウェハルモニに、人知れず温かいご飯を炊いてくれた、そのありがたみを今でも忘れられないと、涙ながらにぼくに話してくれました。

 ある日は、紙さえも十分になく、土に木の枝で「天地玄黄…」と、千字文を覚えたそうです。

 そのように暮らしてきたウェハルモニが、どうして日本に渡り、苦労しながら暮らしてきたかを、ぼくは幼い頃からウェハルモニと一緒に生活しながら、いつも聞いてきたし、いつの間にかウェハルモニの話を聞くことが、日課のようになっていました。中級部1年生になっても、ぼくはウェハルモニの近くで話を聞くことを楽しみにしています。

 ウェハルモニの話を聞きながら、一番すごいと思うことは、6人の子どもたちをみんなウリハッキョで学ばせたことです。

 日本に渡ってきて、ありとあらゆる苦労をしてきたけれど、「子どもたちをしっかりとした朝鮮人に育てることが、私の願いだ」と、食うや食わずの生活をしながら叔父とオモニを育ててきたので、みんな朝鮮人として堂々と生きています。のみならず、ぼくのいとこたちもみんなウリハッキョに通っています。

 ある日、ウェハルモニがぼくにこんなことを言いました。

 「私は故郷にいるとき、朝鮮独立のためにたたかい、犠牲になった人たちをたくさん見てきた。私も祖国統一のためにたたかう。そのためには、ウリハッキョを支え、組織を守らなければならない…」

 そして、群馬の学校を建てるのにウェハラボジ(母方の祖父)と共に、たくさんのお金を出したり、まだ各地のウリハッキョに「オモニ会」がなかった40余年前に、初めて「オモニ会」を作り会長を務め、先生たちにチマ・チョゴリやスーツを仕立ててあげたことや、毎月学校に出ては、ほかのオモニたちと校舎内の掃除、校庭の草むしりなどをしたそうです。

 今、車椅子で生活するウェハルモニを見ると、胸が張り裂けるように痛みます。

 過去にどれだけの苦労をしたから、そうなのかと思うと、とても悲しいです。

 付き添ってお手伝いしなければと、いつも思います。

 ウェハルモニは、ぼくが学校から帰ってくるのを心待ちにしていて、ぼくが帰ってくるなり、「今日は、先生の話をよく聞いて、一生懸命勉強した?」「通学路では、静かに過ごした?」などと、学校や少年団、部活のこと、すべて聞いてきます。

 あるときは、疲れて答えるのが面倒くさいときもあるけれど、いつも家にいて自由に外出もできないウェハルモニを考えると、そうしてはいけないと思います。

 ウェハルモニも、ぼくも歴史好きだから、最近では南朝鮮の歴史ドラマを一緒によく観ます。

 「朱蒙」「不滅の李舜臣」「淵蓋蘇文」「龍の涙」「善徳女王」…を一緒に観ながら、祖先たちの話や先祖たちがどれだけ知恵がすぐれ、誇らしい民族なのかを語ってくれます。

 そのときがぼくにとって、一番楽しい時間です。

 ウェハルモニが健康な間、もっとたくさん歴史の話を聞こうと思います。そして、ぼくの生活の足がかりにします。ぼくの夢は、名のある歴史研究者になることです。

 朝鮮の歴史と一緒に、世界史の勉強をがんばって、自国と民族を愛し、在日同胞社会に貢献できる立派な人になります。

 そのために、ぼくはハラボジ、ハルモニたちが建ててくれ、アボジ、オモニたちが守り輝かせてくれたウリハッキョで、一生懸命学びます。

(群馬朝鮮初中級学校 楊昌根)

[朝鮮新報 2010.2.5]