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〈投書〉 男子、厨房に立つべし

 最近、料理教室に通う男性が多いという。ベターホーム協会では、料理教室に通っている男性受講者数は、91年に350人だったのが99年には13倍の4567人となり、料理への関心の高さが現われている。なかでも料理をする割合は一般的に忙しい年代といわれている30〜40代男性が高く、料理をすることに対する抵抗感もあまり感じていないようである。

 そこで彼らの子どもの頃の家庭環境を調べてみると、「料理を教わる」「手伝う」等料理を親しむ環境にあったとこと、特に小学生の頃に料理が出来た人は高校生以上で習得した人よりも料理が楽しいと感じており、さらに父親が料理をよくしていたという点も理由の1つとしてあげている。

 さて私は、「スポーツ栄養学」の講義を進めていく中で調理実習を取り入れてみた。スポーツに携わる人であればなによりも食事と健康管理に関する基礎的な知識と調理技術が必要であると強く思ったためだ。対象は朝鮮大学校体育学部2年生で全員が男子生徒。課題は90分の間におにぎり、豚の生姜焼き、アサリの味噌汁を作るということ。不安な気持ちもさることながら実習は始まった。

 しかし、学生たちは包丁さばきが上手で炒め方も手馴れている。なかでもおにぎりのむすび方が丁寧で形もきれいだ。それに加え皿選びや料理の盛り付けが良く、味付けも問題ない。私の期待を大きくはずしてくれて嬉しい限りであった。

 実習過程は始終学生の顔から笑顔が絶えずとても楽しそうだった。学生たちに聞いてみると家で調理をした経験があったり、オモニの味を思い出してみたりと、各家庭の食事風景を手に取るように想像することができた。一方、後片付けが面倒とぼやきながらも学生たちは「毎日料理をやっているオモニはすごい!」と感謝の気持ちも表していた。なるほど。食を通じて人は育つのだと。

 私は「男性が料理をする」という現象が「不況の影響」や「独り身」という状況下で発生する「特殊なこと」だと思っていた。むろんこれらの理由も無視はできないが、料理をするきっかけは、50代以上だと老後の趣味、妻に何かあったらなど、若い世代ではもともと好きでチャレンジしたかった、家族や恋人、友人たちの喜ぶ笑顔を見たいという理由が多い。これらはなにも「特別な状況の限られた男性」ではなく、生きる術を自ら得ようとしている「男性の自立」の現われではないだろうか?

 実際料理をすると他の家事にも積極的に取りかかるという。さらに料理は人と人をつなぎコミュニケーションを図りながら、相互理解を深められる手軽な方法である。それに気づき始めた男性たちは躊躇なく自然と厨房に立ち始めたのではないか。

 「男子厨房に入らず」と思っている人は時代遅れと自覚し、「厨房男子」「弁当男子」を大いに応援すべきである。(金貞淑、朝鮮大学校短期学部准教授、栄養学専攻)

[朝鮮新報 2010.1.29]