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合同演習に見る対立構図 「朝鮮挑発者」対「平和交渉者」

 延坪島事件の直後、米国と南朝鮮は事態収拾に関する中国の提案を無視し、朝鮮西海で合同軍事演習を強行した。南の軍当局は事件の発端になった海上射撃訓練の再開を発表し、新たに任命された国防長官は「北が再挑発すれば、空爆する」などと強硬発言を繰り返している。

自省なき「談話」

米国は朝鮮西海で南との合同軍事演習を行い、意図的に「戦時状態」をつくりだした。 [写真=聯合ニュース]

 朝鮮は現在の情勢を戦時状態と見ている。「われわれは、高度の冷静と自制を維持している」(5日発朝鮮中央通信)との立場を表明しているが、客観的に見れば、人民軍の砲門は「今も開かれている状態」(朝鮮外務省スポークスマン)だ。今後、武力衝突回避のための実質的な措置が講じられない場合、米国と南朝鮮による挑発行動が戦争の導火線になる可能性がある。

 西海で合同軍事演習が行われる直前、中国は戴秉国国務委員をソウルに派遣するなど、緊張激化を避けるために動いた。演習開始の当日には「6者会談首席代表による緊急協議」を提案した。しかし、戴秉国国務委員と会談した李明博大統領は、翌日発表した「談話」で、対話による問題解決の意思を示さなかった。「今後、北の挑発には必ず代償を払わせる」「決して後には引かない」とひたすら対北対決を煽った。

 李明博大統領の「談話」は、延坪島事件の原因を覆い隠すき弁と扇動に過ぎなかった。西海の砲撃戦は、南の現政権が北との和解を望まず、南の軍隊が人民軍による再三の警告を無視し、北側領海へ砲撃を行ったことによって引き起こされた。「国民の生命と財産を守れなかった責任を痛感する」と大統領は発言したが、自らの行動を自省せず、北側への責任転嫁によって世論の非難を免れようとする態度では、危機打開の糸口を探すなど望むべくもない。

 強硬一辺倒の「談話」は、李明博政権が問題解決を目指す対話外交の流れにブレーキをかけると宣言したようなものだ。北に「挑発者」のレッテルを貼り、南が「被害者」を装うことで、世論を欺き、朝鮮半島とその周辺で行う戦争騒動を合理化する。南の哨戒艦沈没事件の時と同じ構図だ。

つくられた戦時状態

 哨戒艦の沈没でつくられた状況は「戦略的忍耐」という対朝鮮圧迫路線を追求し、北東アジアの軍事的緊張を高めることで、地域における覇権強化を狙った米国の利益にかなうものだった。当時、米国は「北の脅威」を理由に、2012年に予定されていた南への戦時作戦権委譲を延期させ、沖縄の米軍基地問題も自国に有利に決着させた。

 朝鮮は、今回の事態についても米国が「黒幕」だと見なしている。米国は朝鮮が停戦協定違反と判断することが十分予想される南の砲撃を黙認し、北南間で武力衝突が起きると、ただちに大規模な合同軍事演習を敢行した。哨戒艦沈没事件を口実にした演習時には、中国の反対で計画発表に止まった原子力空母ジョージ・ワシントンの西海進入も、今回は実現させた。

 米国は、西海で演習を強行し、原子力空母をこの海域に展開させることによって▼朝鮮に対する威嚇▼中国への軍事的な圧力▼「同盟国」である日本と南朝鮮を完全に掌握するという「一石三鳥」の効果を狙っているという指摘がある。実際、西海演習に続き、沖縄東方海域や日本各地の基地などで過去最大規模の米日合同軍事演習が行われた。ジョージ・ワシントンが出動し、南朝鮮軍も米日の実動演習に初めて「オブザーバー参加」した。

「中国の役割」は詭弁

 米国は意図的に戦時状態をつくり出したが、客観的に見れば、西海で起きた北南砲撃戦は朝米間の軍事対決の様相までも変えてしまった。米国は哨戒艦沈没事件のときのように、緊張激化で「漁夫の利」だけを得る状況にはない。

 朝鮮半島の停戦体制は有名無実と化し、今回のような南の軍事的挑発に対する拘束力も失っている。現在の不安定な状態を解消させる法的責任は、停戦協定に署名した朝・中・米の3カ国が担っているが、朝鮮にとっての交戦国は米国だ。問題解決のカギが「中国の役割」にあるという米国のレトリックは、朝鮮半島における軍事的対立の本質から目をそらすためのものだ。

 中国が提案した6者首席代表協議について、米国と南、日本は「慎重に対応」すると足並みを揃えているが、何の代案 もなく対話を先送りにするならば、それは現状維持ではなく、戦争の危機を高める行為だ。延坪島の部隊に対する人民軍の射撃は、相手が停戦協定を一方的に破棄するならば、自国もそれに拘束される理由はないという原則を軍事行動で実証したものだ。そして朝鮮は、自国を威嚇する米国主導の軍事演習を停戦協定違反と見ている。

 朝鮮は敵対国の挑発に断固対応する立場を表明しているが、一方では米国との敵対関係を清算する方法も提示している。停戦協定を平和協定に転換させ、1950年から続く戦争状態に終止符を打つというものだ。

 朝鮮の平和協定提案に対する中国の態度は肯定的だと伝えられている。今後、事態の推移は、朝鮮半島における「戦争挑発者」と「平和交渉者」の対立を、よりはっきりと示すことになるだろう。(金志永)

[朝鮮新報 2010.12.8]