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「6者」中断と軽水炉建設、正当な経済主張の行使

 最近、訪朝したヘッカー米スタンフォード大教授が、平安北道寧辺地区に「実験用軽水炉」が建設されていることを明らかにした。朝鮮が軽水炉に関する情報を積極的に公開したことに対し米国は、「深刻な挑発行為」(ボズワース朝鮮政策特別代表)だと非難し、メディアは原子力発電所のためのウラン濃縮技術を「核兵器開発」と強引に結び付けている。原子力の平和利用を「脅威」として印象付ける危険な世論操作が行われている。

核の平和利用

朝米ジュネーブ合意による軽水炉建設は中断した。(写真は鏡南道新浦の建設場) [写真=聯合ニュース]

 ヘッカー教授の証言は、9.19共同声明(2005年)などの6者会談合意に朝鮮が拘束されない状況が今日も続いていることを物語っている。昨年4月、朝鮮の人工衛星発射が「弾道ミサイル発射」と断定され、国連制裁が発動された。自主権尊重と主権平等という6者会談の前提が崩れた時点で、朝鮮は対抗措置として「二つの路線」を提示した。

 第一の路線は、「自衛的核抑止の強化」だ。昨年5月に2回目の核実験が断行された。既存の核施設(黒鉛減速炉)の使用済燃料棒から抽出した、すべてのプルトニウムを武器化するという立場も表明した。

 第二の路線は、「ウラン濃縮技術による軽水炉発電所の建設」だ。これはあくまでも原子力の平和利用であり、国家経済発展のための中心課題の一つであるエネルギー問題の解決にその目的がある。

 朝鮮は6者会談が破たんした状況に対応して、「二つの路線」を推進した。昨年9月の時点で、使用済み燃料棒の再処理が最終段階で行われていた。ウラン濃縮実験も成功裏に行われ、終結段階に入っていた。朝鮮は、国連安保理議長に送った書簡を通じて、これらの進ちょく状況を公表した。

 対話外交の再開に否定的な立場をとり続けた米国は、寧辺の現状を「北朝鮮の瀬戸際戦術」だと説明し、責任の所在をあいまいにしているが、軽水炉発電所建設計画は、突然浮上したものではない。ヘッカー教授は、昨年から続けられてきた原子力の平和利用計画の推進状況を現地で確認しただけのことだ。朝鮮は、今回も自らの計画を隠し立てすることなく、寧辺を訪れた米国の核専門家に対してウラン濃縮の新施設を堂々と公開している。

2012年目指し

 朝鮮は、2012年に強盛大国の大門を開くという目標を掲げている。自力更生に基づく軽水炉発電所の建設も、経済復興のための国家計画の一つだ。ヘッカー教授は、寧辺の軽水炉について2012年の完工を目指していると説明を受けたという。

 過去には軽水炉発電所の建設が、朝米会談や6者会談のような外交の「成果」として想定されていた。朝米基本合意文(1994年)や、9.19共同声明にも朝鮮に対する軽水炉提供問題が明記されているが、約束は反故にされた。

 人工衛星発射が国連制裁の対象となり、6者会談が破たんした後、朝鮮は朝米関係の全過程を総括し、一つの結論に達したと伝えられている。朝米間では敵対関係の根源である戦争状態を終息させない限り、いかなる会談も合意も、無用の長物だということだ。米国が平和協定締結提案を無視している現状では、朝鮮としても戦争抑止力を引き続き強化しながら、敵対勢力の制裁に対抗する独自の国家発展計画を推し進めるしかない。

 「2012年構想」について、朝鮮の経済関係者は「自立的民族経済に基づき、その潜在力を発揮するプロセスの中で、強盛大国の大門を開ける時点を設定した」と指摘する。そして「2012年」は「対外経済関係における有利な条件、不利な条件を計算しながら立てた目標ではない」と断言する。彼らの見解によれば、6者会談の開催いかんにかかわらず、朝鮮は必ず「大門」を開くということだ。

 「2012年構想」が外部環境の変化に左右されないためには、経済の自立性、主体性を強化しなければならない。特に経済復興の中心課題である電力問題の抜本的解決のために、国内の豊富なウラン資源を利用する「主体的な核動力工業」の完備に国家的な関心が注がれている。

オバマのジレンマ

 朝鮮は今年9月の党代表者会で最高指導機関を選挙し、強盛大国建設に向けた体制を確固たるものにした。オバマ政権が「戦略的忍耐」という交渉回避術を続ける目的が、制裁と圧迫によって自国の経済を破たんさせることにあると看破した朝鮮が、「チュチェ(主体)軽水炉」建設にまい進することは、経済主権の正当な行使だ。

 自前の核燃料で動く軽水炉発電所が建設されれば、核問題に関する従来の交渉の枠組みは無効になる。軽水炉の提供を「代価」に朝鮮側の行動を促すことはできなくなる。

 今後、関係国が朝鮮の原子力発電所建設に異議を唱えなければ問題はないが、「チュチェ軽水炉」の完工は、米国が朝鮮に対する「交渉の切り札」を失うことを意味する。「待ちの戦略」を続けるオバマ政権は、進退両難のジレンマに直面することになった。発電所建設のためのウラン濃縮技術が、「核兵器開発」に転用されるという情報の流布がエスカレートし、新たな強硬策の口実に利用されないとも限らない。オバマ政権は平和的な衛星発射も制裁の対象にした。

 米国が原子力の平和的利用を妨害し、圧迫を加えれば、朝鮮を第一の路線、核抑止力強化の積極的な推進へと追いやることになりかねない。任期前半に対朝鮮政策で無駄な時間を浪費したオバマ政権が、事態を収拾する最も確実な方法は、6者会談の合意精神を再確認する対話の場を速やかにつくることだ。(金志永)

■2009年4月14日 外務省声明

核抑止力強化

 6者会談合意により無力化された核施設を原状復旧させ、正常稼動させる措置が講じられる。その一環として実験用原子力発電所から出た廃燃料棒を再処理する。

発電所建設

 主体的な核動力工業構造を完備するため独自の軽水炉建設を積極的に検討する。

■2009年4月29日 外務省スポークスマン声明

核抑止力強化

 朝鮮の最高利益を守るため、追加的な自衛的措置を講じる。それには核実験と大陸間弾道ミサイル発射実験などが含まれる。

発電所建設

 軽水炉発電所建設を決定し、最初の工程として核燃料を独自に生産、確保するための技術開発を始める。

■2009年6月13日 外務省声明

核抑止力強化

 新たに抽出されたプルトニウムすべてを武器化する。現在、廃燃料棒は総量の3分の1以上が再処理された。

発電所建設

 ウラニウム濃縮作業に着手する。軽水炉建設の決定に従い、核燃料確保のためにウラニウム濃縮技術開発が成功裏に行われ実験段階に入った。

■2009年9月3日 国連安保理議長に宛てた書簡

 廃燃料棒の再処理は最終段階で行われ、ウラニウム濃縮実験も成功し終結段階に入った。

[朝鮮新報 2010.11.26]