軍事分野で深まる朝中友好 「地域安定」目指す協調体制 |
朝鮮と中国の友好関係は軍事分野でも深化している。中国人民志願軍の朝鮮戦線参戦60周年に際し、中国中央軍事委員会の郭伯雄副主席(中国共産党政治局員)を団長とする代表団が訪朝した。10月25日、平壌では金正日総書記が参席して盛大な記念行事が行われた。安全保障政策における朝中の共同歩調は、今後の北東アジア情勢に大きな影響を及ぼすと見られる。
「参戦60周年」を記念
金正日総書記は今年の5月と8月、中国を非公式訪問し胡錦濤主席と会談した。郭伯雄副主席は、自身の訪朝が「両国首脳の共通認識を実現するため」だとしながら、「朝鮮の同志たちとともに地域ひいては世界の平和と安定、発展に貢献」していくと述べた。朝中が軍事分野での交流を通じて示した「血盟関係」が、「仮想敵国に対する軍事的対応」ではなく「地域の安定」に照準を合わせた事実は注目に値する。 朝中の友好親善関係は、「外国の侵略者に反対する共同闘争の中で結ばれた」(労働新聞)と言われる。抗日の共同戦線(〜1945年)、朝鮮人民革命軍の指揮官、隊員も参加した国共内戦(〜1949年)を通じて結ばれたきずなは、朝鮮戦争(1950〜53年)の時期に力強く誇示された。米国を相手に、同じ塹壕の中で肩を寄せ合って戦ったその経験は、いまも朝中友好の強化発展に弾みをつける原動力になっている。 「参戦60周年」を機に再確認された朝中の「血盟関係」には、他の二国間関係にない特徴がある。それは社会主義理念の共有だ。朝鮮労働党と中国共産党はともに「プロレタリア国際主義」の旗印を掲げる政党だ。その精神に立脚するならば、反帝国主義と社会主義発展のため私心なく相互支援するのは当然の道理だ。また、現実問題として社会主義国家である朝鮮と中国は山河連なる隣邦であり、地政学的にも共通の利害がある。 冷戦終結後の激動する国際情勢の中で、朝中関係にも一時期、紆余曲折があった。90年代初頭、中国は南朝鮮と外交関係を樹立した。また朝鮮半島の核問題でも朝中が常に「共同戦線」を形成していたとは言い難い。昨年も朝鮮に対する国連制裁決議に中国が賛成する一幕があった。しかし朝中首脳の積極的なイニシアティブにより「伝統的友好」は新たな発展段階に入った。それは「関係修復」の次元を越え、「(朝中親善は)全盛期を迎えた」(労働新聞)と評価されるほどの緊密な連携を実現している。
課題は「戦争終結」
中国の軍部は、これまでも朝鮮の自主路線、原則を曲げない対米交渉のスタンスを積極的に支持していたと伝えられている。「戦友としての義理」を誰よりも重んずるであろう軍部の代表が「参戦60周年」を機に隣国を訪れ、朝中の平和志向を表明した。実際、両国には朝鮮半島で続く交戦状態に終止符を打つという共通の課題がある。60年前に勃発した朝鮮戦争は「一時中断」されたに過ぎない。停戦協定(1953年7月27日)にサインしたのは朝鮮と中国、そして米国だ。 今年1月、朝鮮は停戦協定を平和協定に替えるための会談の開催を関係国に正式に提案した。「60年目の終戦提案」は、時代の潮流をふまえたものだ。現在の視点に立てば、冷戦の終結によってもたらされたものが「社会主義の終焉」と「米国一極支配」でなかったことがわかる。朝鮮の核保有と米国覇権の弱体化、「全盛期」を迎えた朝中関係など一連の変化によって東北アジアにも新たな秩序が形成されつつある。 朝鮮半島における戦争終結は、冷戦時代から続くこの地域の対立構図を解消し、新たな安全保障の枠組みを構築する起点となる。 「参戦60周年」に際して胡錦濤主席も参席して行われた北京の人民大会堂での「記念座談会」では、習近平副主席が中国人民志願軍による「抗米援朝」の正当性を強調し、「朝鮮半島の平和と安定は世界の平和と安定につながり、この問題に関する中国の基本的立場と政策的主張は一貫している」と明言した。 現在、中国を中心に6者会談再開のための外交努力が続けられている。ブッシュ政権時代、米国は朝鮮に国際的圧力をかける「1対5」の構図としての6者会談を想定したが、「参戦60週年」を記念する朝中協調に見られるように、東北アジアの政治軍事的パワーバランスは動いている。朝鮮半島の平和構築が主要テーマとして浮上する多国間外交は、これまでの6者会談とは異なる様相を呈するようになるだろう。(金志永) [朝鮮新報 2010.10.29] |