戦略見直し迫られる米国、対話外交再開の駆け引き |
今年前半、哨戒艦沈没事件により緊張が高まった朝鮮半島の情勢に変化の兆しが表れている。6者会談再開に向けた各国の動きも見られる。米国の主要紙もオバマ政権の新たな対朝鮮アプローチの試みについて伝えている。
「戦略的忍耐」の限界
対話外交の模索が表面化したのは8月。中国の武大偉朝鮮半島問題特別代表が朝鮮を訪問(16〜18日)した。朝鮮中央通信は、武大偉特別代表が朝鮮側と「地域情勢と朝中親善関係、6者会談再開と全朝鮮半島非核化実現など共同の関心事となる問題を深く討議」し、双方が討議した問題に「完全な見解の一致を見た」と伝えた。その後、武大偉特別代表は6者会談参加国を巡り、朝中首脳会談(8月27日)の直後、米国を訪れた。 一方、9月には米国のボズワース対朝鮮政策特別代表が6者会談参加国を訪問、ソウルでは「遠くない時期に(朝鮮と)対話が可能であると楽観している」と述べた。 この時期、ニューヨーク・タイムズ(8月27日付)はヒラリー・クリントン国務長官が約1週間前に召集された政策評価会議で、新たな対朝鮮アプローチに関する提案を出すよう要請したと報道した。中国が武大偉特別代表を朝鮮に派遣するなど、対話外交の復元に積極的になった時期と重なる。同紙は、朝鮮が圧力に屈し自ら変化するまで待つという「戦略的忍耐」路線を追求してきたオバマ政権内で現在、朝鮮との「関係再開」を検討しなければならないとの認識が広がっていると指摘した。 一方、ワシントン・ポスト(9月17日付)は、米国、南朝鮮、日本が現状打開策の一つとして「哨戒艦沈没事件に対する朝鮮の遺憾表明」が検討されており、「李明博大統領は当初、『責任の認定』と『謝罪』を要求したが、『哀悼表明』のレベルまで要求が緩和されたように見受けられる」という「分析」を記事にした。記事が伝えた打開策は、米国が局面転換を図るよう南朝鮮に圧力をかけているかのようだ。 「3段階」の「修正」 米国メディアの報道が対朝鮮半島政策是正の動きに焦点を合わせているのは偶然ではない。哨戒艦沈没事件を口実に朝鮮半島の対決構図を激化させようとした思惑ははずれた。 朝鮮は米国の挑発に対して「自衛的核抑止力」に基づき強硬な対応策を講じた。ワシントン・ポストは、オバマ政権関係者の言葉を引用し、既存の対決路線が「戦争を誘発する可能性に対する憂慮」から新たな「関係再開」路線が検討されるようになったと伝えている。 朝鮮の「魚雷攻撃」によって艦船が沈没したという「調査報告」を突きつけ、中国を苦境に陥れようとした米国のもくろみも裏目に出た。国連安保理では「魚雷攻撃」に関する強引な主張は拒否され、中国は朝鮮と二度にわたる首脳外交を通じ「戦略的友好関係」をより積極的にアピールした。 朝鮮は、圧力に屈服するどころか自ら立てた行動計画を着実に実行している。9月に開かれた朝鮮労働党代表者会は、朝鮮の体制が磐石であり米国の望むような「変化」は起こらないことを示した。 一方、中国共産党総書記の胡錦濤国家主席は党代表者会の成功を祝賀し、朝鮮との関係を「高度に重視する」と明言した。 一部メディアは、朝鮮に対する「戦略的忍耐」の無効性が露呈し、対話外交の復元を模索せざるを得なくなったオバマ政権が、中国が示した3段階提案」(朝米2者会談−6者予備会談−6者本会談)の「修正」を主張していると伝えている。9月中旬、米上院軍事委員会聴聞会で発言したキャンベル国務次官補も「6者再開のための最も重要な措置」は「北南間の関係再開」であると述べている。 「終戦」に関する提案 9月以降、離散家族再会問題などで北南対話のチャンネルが開かれたが、それは米国の指示によるものではなく、朝鮮の積極的なイニシアティブによるものだ。 現在、オバマ政権は「北南関係改善の先行」などの「条件」を掲げ、あたかも米国に局面転換の権限があるかのように振る舞い、国際世論を欺いている。北京を訪れたボズワース特別代表は「対話のための対話ではなく、実質的な成果のある会談にしなければならない」と朝鮮側に注文をつけた。 オバマ政権の高官らが戦略見直しを迫られた内情を覆い隠すために虚勢を張り続けると、後により大きな逆風が米国自身に跳ね返ってくることも予想される。朝鮮は今年1月、平和協定締結のための会談開催を停戦協定当事国に正式に提案した。朝米の交戦関係にピリオドを打ち、6者会談のテーマであった非核化のプロセスを滞りなく進めるという朝鮮の立場は揺らいでいない。オバマ政権が「対話のための対話」ではなく、実質的な問題解決を願うならば、朝鮮の提案に何らかの態度を示さなければならなくなる。(金志永) [朝鮮新報 2010.10.6] |