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先端科学、情報産業に力入れる朝鮮 普及する携帯電話、服装もカラフルに

国全体が孤立・独善化する日本、御用記者が占めるメディア

すばらしい施設の金日成総合大学電子図書館

 8月10〜14日に訪朝した。成田空港の出国審査のカウンターには「北朝鮮への渡航自粛」を通知する法務省名義の文章が張ってあった。「千葉法相にこういう嫌がらせはやめるように伝えてほしい」と職員に告げたが、何の反応もなかった。

 今年の8月22日は「韓国併合」ねつ造100年だったが、菅直人首相談話(8月10日)をはじめ新聞・テレビでも、国連メンバーである朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の国家と人民は完全に無視された。

 日本の政府と「記者クラブ」メディアは、ねつ造条約の言う「韓」が現在の韓国を意味しないことを百も承知で、「国交がない国は存在しない」という傲慢さで対応している。知人の在日朝鮮人は「情報統制があるのではないか」と指摘しているが、日本の政治家と御用記者たちが大本営発表の時代と酷似した意識を持っていることを表していると思う。有ることをみんなで無いことにするのを英語では「black out(情報管制)」という。

 7回目になる訪朝の目的は、12日に平壌の人民文化宮殿で開かれた「日帝の反人倫犯罪被害者の証言集会」に参加することだった。集会では強制連行被害者、元日本軍「慰安婦」、女性被爆者、強制連行犠牲者遺族の4人が報告した。青年代表が決意表明した後、私は日本人として唯一、登壇を求められ、「日本政府には過去の侵略と強制占領について謝罪し、補償する法的、倫理的義務がある。戦後65年間、過去の清算を怠った罪も問われる」と強調した。

金日成総合大学の付属プールで楽しく過ごす人々

 その後、日本政府に謝罪や賠償に取り組むよう要求した書簡が読み上げられた。最後は、約230人の参加者による「日本は過去の反人倫的犯罪行為に対する謝罪と賠償をせよ」とのシュプレヒコールで締めくくられた。

 日本の共同通信は4人で取材し、イタル・タス通信、ロイター、APTNなど外国報道機関も取材した。朝鮮中央通信は12日付で私の発言を詳しく引用し、朝鮮の労働新聞など各新聞にも載った。朝鮮中央テレビは13日夜のニュース番組で私の演説シーンも交えて報じた。

 共同通信は磐村和哉記者が書いた3本の記事(計1439字)を配信した。しかし、共同通信の配信記事には私の名前がなかった。記事は、日本からの参加者について総連関係者以外を「日本の市民団体幹部ら」でひとくくりにしている。私は「市民団体幹部」を肩書きに使ったことはないし、集会では司会の黄虎男・朝鮮対外文化連絡協会日本局長が私を「同志社大学教授」として紹介した。

 日本メディアは共同の配信記事をまったく掲載していない。朝鮮の人々が日本の過去の植民地統治に関して集会を開いたことや、日本政府の菅談話が「南」だけを相手にしたことを問題にもしないのは非正常だ。

ダチョウ牧場の案内女性と筆者

 朝鮮労働党は9月初旬に44年ぶりに党代表者会を開き、「党役員人事を選ぶ」(黄局長)予定で、平壌市内には同会議と党創立65周年を「高い政治的熱意と輝かしい労働の成果でもって迎えよう」との横断幕が掲げられていた。

 朝日新聞は8月16日、朝鮮労働党が9月初めに44年ぶりに開く党代表会について「高まらぬ市民の関心」などと報じたが、仮名の「筋」をソースにして書くのはどうか。

 1年ぶりに見た平壌の街を歩く人たちの表情は明るく、服装もますますカラフルになっている。車が増え、携帯電話が普及している。北京から平壌へ飛ぶ航空機には日本以外の外国人がいっぱいだった。中国の航空機の乗り入れも始まり、中国人観光客も目立っている。

 金日成総合大学の電子図書館を訪れた。5階建ての近代的なビルに、米パソコン大手のヒューレット・パッカード(HP)のパソコンが並び、ネットを使った講義や会議ができる部屋もある。従来の蔵書200万冊のうち15万冊がスキャンされ電子化が完了したという。前に金策工業総合大学の電子図書館を見たことがあるが、規模と内容が格段に優っている。先端科学、情報産業に力を入れていることがよくわかる。

 大学付属プールでは、選手のほか教職員がカラフルな水着で施設を利用していた。

完全に自動化された大同江タイル工場

 郊外にある大同江タイル工場では1期工事が完成し、住宅用屋根瓦は年間20万u、外壁・床・室内タイルはそれぞれ100万u生産している。行程はすべてコンピュータで自動制御されている。2期工事が進んでいるほか、同じグループが近くに建材用タイル工場を建設している。

 各種のタイルを見せてもらったが、図柄をコンピュータでつくっているという。大理石の模様のタイルに人気があるという。

 この工場で作られたタイルは、平壌市万寿台地区の最新式の集合住宅の外壁に使われている。2千人の労働者が従事しているが、若い人が目立った。コンピュータ制御センターの技術者は大学を出たばかりの20代の青年たち。工場を視察した総書記が「青年工場だ」と絶賛したという。

 ダチョウ牧場ではアフリカ原産のダチョウが1万羽飼育されていた。生まれたばかりのよちよち歩きのダチョウから大人まで、約3キロメートル続く飼育舎で育てられている。500人の職員がいる。フランス、南アフリカにも大型のダチョウ牧場があるが、集約型の牧場は世界に例がないという。

 案内役の女性は「生後1年間は冬の期間暖房室に入れるが、その後は厳しい寒さにも順応できる。動物専門家の研究調査の成果だ。野菜作りから、飼料工場、精肉加工工場などが併設されて循環型になっている。1羽から80〜90キログラムの肉がとれる。「低コレステロールの肉として健康にも良い。今は国内の食料としているが将来は輸出したい」と工場の技術者は話した。

 訪問先で会った人たちに、「日本についてどう思うか」と聞くと、「日本は過去の清算をしたうえで、国際社会で貢献してほしい」(職員工場労働者)、「日本の人民もまた軍国主義の被害者だ」(大学職員)などという明確な返事が返ってきた。

 日本に帰ると、8月27日に開かれた拉致問題関係府省連絡会議で、「朝鮮学校の無償化には、拉致被害者家族が反対しているから慎重にすべきだ、という意見があった」と伝えられ、29日には拉致家族会が「朝鮮学校の無償化に反対する集会が開かれた」というニュースがテレビで全国に流れた。

 国全体が孤立・独善化し、時代錯誤の歴史認識で混迷を深めているのは日本の方だ。(浅野健一、同志社大学大学院教授、「日朝友好京都ネット」理事、写真はすべて筆者提供)

[朝鮮新報 2010.9.10]