韓牧師への「保安法」適用は不当 南の対北政策がもたらした「無断訪北」 |
ソウル中央地方法院が8月23日、「韓国進歩連帯」常任顧問の韓相烈牧師に対して、「証拠隠滅と逃走の恐れがある」と判断し、拘束令状を発布したと、南朝鮮メディアが伝えた。 南のインターネットメディア「統一ニュース」は、韓牧師が板門店を陸路通過し南に帰還した8月20日、韓牧師と面会した妻で「韓国進歩連帯」のリ・ガンシル常任代表の発言として、「(韓牧師は)黙秘権を行使するだろう。法廷で明々白々に(訪北の正当性を)明らかにする」と伝えた。 韓牧師は、政府の承認なしに北を訪問し、北側の要人と面会し、「天安」号事件と関連し南政府を非難したとする「国家保安法」違反の容疑がかけられ、南の検察庁、警察庁、国家情報院で構成された合同調査団が調査している。 拘束延長に対し「韓国進歩連帯」は声明を通じ、「北の各地を見て回り、北の住民に会い記者会見をした内容はすべて公開されているにもかかわらず、隠滅する証拠がいったいどこにあるのか」と主張した。 声明では、韓相烈牧師の訪北が、6.15共同宣言発表10年を迎えたにもかかわらず、李明博政権下で南から一人も北側を訪問できない悲劇的な現実と、南の艦船「天安」号沈没事件を何の根拠もなく北側の犯行だと断定し、朝鮮半島情勢を戦争の局面に陥れた李政権の反民族、反統一行為に対して、黙認することができずに行われたものだとして、「『国家保安法』を適用することは不当であり、法院は拘束延長を撤回し、韓牧師を釈放」するよう求めた。 韓牧師はこれまで40数回にわたり、当局の承認を得て合法的に北側を訪問した。 今回は6月12日に訪北し、約2カ月間滞在しながら各地を参観した。訪北の動機について韓牧師は、6月22日に平壌で開かれた記者会見の席で、「6.15共同宣言発表10周年を迎え、平壌で大祝典が開催されるはずが、(南政府が北側に)行けなくしたからといって、そのまま受け入れ見過ごすことができなかった」と明らかにしている。 李明博政権は発足直後から、民族共通の統一綱領である6.15共同宣言と10.4宣言を全面否定し、「非核・開放・3000」政策を掲げ、北側に対する対決姿勢をあらわにし、朝鮮半島情勢を悪化させてきた。 李政権が6.15と10.4を履行する立場に立っていたならば、「無断訪北」が発生しなかったことを意味する。 韓牧師は「天安」号事件と関連して、「事件は李明博式のうその決定版」(6月22日記者会見)であり、事件によって朝鮮半島情勢が極度に緊張した責任が、南側政府にあるとの見解を示している。 南側で発表された艦船沈没事件の「調査結果」(5月20日)は、当初から疑惑に満ちたものだった。5月25日に、南の市民団体「参与連帯」の平和軍縮センターが疑問点を整理したレポートを発表したことをはじめ、市民団体からは相次いで当局の発表内容に対する疑問の声が上がっている。 中国やロシアなど海外の複数のメディアも疑惑について指摘している。 中国・香港の衛星テレビ局、鳳凰衛視(フェニックステレビ)は5月20日と24日に伝えた論評で、「天安」号沈没事件の「調査結果」は誰かがでっち上げた可能性が大きく、さまざまな疑問を生んでいると報じた。 またロシアのインターネット通信「ニュースランド」は5月24日、論評で、朝鮮の潜水艇が「天安」号を沈没させたというのは信ぴょう性がないと伝えた。 一方、南当局は訪朝中に最高人民会議常任委の金永南委員長をはじめとした北側要人に面会したことも問題視しているが、韓牧師は帰還を前に8月18日に平壌で記者会見を開き、「合法的空間で会った相手に工作員というレッテルを貼り、彼らと和合し指令を授受したと処罰」するならば、6.15共同宣言以降の「10年間で南政府の許可を得て北側同胞に会った南側同胞がすべてが『国家保安法』違反にあたることになる」と反論した。 韓相烈牧師の釈放を求め、6.15共同宣言実践北南の両委員会、海外側委員会と日本、米国、中国、ヨーロッパの各委員会をはじめ、各国の同胞団体が談話や声明を発表、南の市民団体も8月20日、韓牧師の訪北を支持する集会を開催した。 6.15北側委員会は談話の中で、訪北期間に行ったすべての活動は6.15共同宣言を履行し朝鮮半島の統一を成し遂げるための正当な行動だったとし、「決して罪になるようなものではない」と主張した。(鄭茂憲) [朝鮮新報 2010.9.1] |