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「保安法」濫用した暴挙 国情院、進歩連帯幹部を逮捕

合法的な北南交流を問題視

 南朝鮮の国家情報院と警察当局が6月29日、「国家保安法上の会合、通信、指令受領」の容疑でソウル市内にある韓国進歩連帯(以下、進歩連帯)の事務所と幹部らの自宅に対する捜索を敢行、同団体のハン・チュンモク共同代表ら3人を逮捕、連行した。進歩連帯をはじめとする市民団体は、今回の国情院による弾圧を「時代錯誤の暴挙」だと強く非難し、北側との合法的な交流を違法とする当局の姿勢に反発を強めている。

政局転換用の企画捜査

ソウル市内で行われた決起集会で弾圧に対する抗議の意を表す韓国進歩連帯のメンバー(3日) [写真=統一ニュース]

 逮捕されたのはハン共同代表のほか、チョン・デヨン前執行委員長、チェ・ヨンオク自主統一委員会副委員長だ。

 国情院と警察当局は同日早朝、進歩連帯の事務所周辺を警察官数十人で包囲した後、捜索を開始。コンピュータのハードディスク、各種資料、ノートなどを押収した。さらに、進歩連帯の後援団体「進歩サラン」も捜索し、名刺、ハードディスク、DVD、ハン共同代表名義の後援金通帳などを押収した。

 進歩連帯のチャン・デヒョン執行委員長は南朝鮮のインターネットメディア「統一ニュース」の取材に対して、今回の「国家保安法上の会合、通信、指令受領」容疑が「6.15南側委員会を通じた北側との実務接触を問題にしたもの」だと明らかにした。「数回にわたって北を訪問し、中国などで北の統一戦線部の工作員らと会合を持って指令を受けた」というものだ。

 ほかの関係者も「これを口実に統一運動に対する弾圧を本格的に始めようということだ」という見方を示した。

 進歩連帯と民家協(民主化実践家族運動協議会)をはじめとする市民・社会団体のメンバーは同日の記者会見で、国情院の捜索を「地方選挙で惨敗した李明博政権の政局転換用の企画捜査であり、進歩陣営に対する報復」だと指摘した。

 進歩連帯のリ・ガンシル常任代表は、「過去10年間、南北交流事業を行ってきた人々、金剛山や開城、平壌を訪問した人々も逮捕するのか。政府は地方選挙惨敗の後、野党勢力の糾合に寄与した進歩連帯に筋違いの憂さ晴らしをしている。民意を受け止めて国政刷新をするのではなく、進歩連帯に弾圧を加えることは絶対に許せない」と当局の姿勢を厳しく批判した。

 逮捕された3人のうち、チョン前執行委員長とチェ自主統一副委員長は1日に釈放されたが、ハン共同代表は現在もソウル拘置所に収監されている。

 進歩連帯側は「統一部の許可をもらって北側と接触した事案に『国家保安法』違反を持ち出すのは、6.15共同宣言を無効化し、南北関係を後退させようとする反統一的暴挙」だとし、法廷闘争を通じてハン共同代表の無罪を勝ち取る構えだ。

「利敵団体」指定が狙い

 進歩陣営の中では、今回の捜索と逮捕劇が「進歩連帯に対する利敵団体指定を狙ったもの」だという見方が一般的だ。

 捜索の現場に立ち会ったソン・ヨンソプ弁護士が「統一ニュース」に明らかにしたところによると、当局の令状には「連邦制統一の主張、高麗民主連邦共和国創立方案など北側の主張と一致する綱領」といった内容が含まれていた。3人が「2001年から南北交流のための実務接触を口実に北京、瀋陽、開城などで北側の統一戦線部の工作員らと会い、北側の指令を受けた後、07年に韓国進歩連帯を設立した」という記述もあったという。

 令状の内容を確認したソル・チャンイル弁護士も、「進歩連帯の設立と活動は北の指令によるものだと記されており、国情院は3人が合法的な接触を装って北の工作員と会い、進歩勢力の単一戦線体の設立について話し合い、進歩連帯を発足させたと見ている」と述べた。

 進歩連帯の関係者や弁護士らは、「北の統一戦線部の指令」で進歩連帯が設立されたという線で捜査を進めながら、ハン共同代表を「スパイ」に仕立て上げ、本格的に進歩連帯を瓦解させようというのが国情院の狙いだと分析している。

 さらに、国情院の次のターゲットが6.15南側委員会ではないかという見方も出ている。ハン共同代表やチョン前執行委員長に対する取調べの過程で、6.15南側委員会の結成の経緯に関する質問を集中的に受けたことが、ハン共同代表の夫人ソン・ミフィさんの証言によって明らかになった。

日本からも抗議の声

 進歩連帯関係者の訪北や北側人士との会合は国情院と統一部の承認の下で行われた。合法的な会合に「国家保安法」違反の嫌疑をかけるのは不当だ。

 しかし、このようなケースは今回が初めてではない。

 08年、南北共同宣言実践連帯組織発展特別委員会のカン・ジング委員長が「国家保安法上の会合、通信」の罪で懲役2年、資格停止2年の有罪判決を受けた。04年、中国・瀋陽で行われた北南共同行事の実務会談で北側の関係者と会ったことが問題視された。

 09年、祖国統一汎民族連合南側本部のリ・キュジェ議長ら3人も「国家保安法上の潜入、脱出、会合、通信」などの嫌疑をかけられ逮捕された。

 ソン弁護士は、「正常な南北交流活動の次元で行われたことを今になって不法だと解釈するのは大きな問題」と捜査の不当性を指摘する。

 南朝鮮当局の横暴な措置に日本の国会議員や市民団体からも抗議の声が上がっている。

 社民党の服部良一衆議院議員は弾圧に抗議し、ハン共同代表を即時釈放するよう求めるメッセージを国情院に送った。日韓民衆連帯全国ネットワーク(日韓民衆連帯)と「闘う第三極創りをめざす近畿会議」(近畿会議)も、弾圧の即時中止とハン共同代表の即時釈放を要求する運動を展開する予定だ。

 3日には、ソウル市内の国情院庁舎の前で韓国進歩連帯による決起集会が開かれた。

 常任顧問や常任代表などの幹部、各地域の傘下組織の会員600余人が参加した。民主労働党のリ・ジョンフィ、ホン・フィドク両議員も出席した。

 参加者らは「国家保安法」の濫用による進歩陣営への弾圧の中止、ハン共同代表の即時釈放と責任者の処罰を求めた。(李相英記者)

[朝鮮新報 2010.7.9]