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戦時作戦統制権の移管延期 軍事主権放棄、高まる非難世論

 李明博大統領は6月26日、カナダ・トロントでオバマ米大統領と会談し、2012年4月17日に予定されていた「韓米連合軍司令官」(駐韓米軍司令官)から南朝鮮軍への戦時作戦統制権の移管を、15年12月1日に約3年7カ月延期することで合意した。南朝鮮の内部では、軍統帥権という自主権に関わる重大な問題が「密室取引」のような形で突然決まったことに非難の声が上がっている。一方、北側も「天安」号沈没事件を機に朝鮮半島情勢が緊張する中で決まった戦時作戦統制権移管の延期を、「危険極まりない現在の事態をさらに極限に追い込み、われわれとの全面戦争も辞さない極めて重大な挑発」(1日、祖国平和統一委員会スポークスマン談話)と断じた。

朝鮮の「脅威」口実に

戦時作戦統制権の返還を求めてたたかう南朝鮮の人びと(写真は昨年10月、国防部庁舎前でデモを行う市民団体のメンバーたち) [写真=統一ニュース]

 戦時作戦統制権とは、戦争が起きた際に部隊の作戦を指揮する権限のこと。南朝鮮は朝鮮戦争さなかの1950年7月、マッカーサー国連軍司令官に軍の作戦指揮権を委譲した。その後、作戦統制権と改称され、78年の「米韓連合軍司令部」の創設に伴って同連合軍司令官(駐韓米軍司令官)に引き継がれた。

 南朝鮮軍の作戦指揮権を米国に渡したのは、南朝鮮を米国の軍事的支配にさらに深く押し込み、米国の戦争下手人として北侵戦争に積極的に出るためのもので、南朝鮮の人民はその後の60年間、作戦指揮権返還のために粘り強くたたかってきた。

 とくに、6.15北南共同宣言の発表によって統一の新たな局面が開かれると、南朝鮮では反米自主化の機運が高まった。冷戦の古い枠組みの解体を求める世論に押された米国は07年2月、12年4月まで「韓米連合軍司令部」を解体し、戦時作戦統制権も「韓米連合軍司令官」から南朝鮮軍に移管することで当時の盧武鉉政権と合意していた。

 なお、平時の統制権は94年に南朝鮮側に移管されている。

 しかし、08年2月に発足した李明博政権は金大中、盧武鉉政権時代を「失われた10年」と規定し、前政権が米国から12年までに戦時作戦統制権を譲り受けることにしたのは「誤った選択」であり、時期尚早であるとし、それを覆すためにあらゆる手段を講じた。

 南朝鮮メディアが伝えたところによると、今回の戦時作戦統制権の移管延期は南朝鮮側の要請に応じて決まったもの。両者が移管時期を再検討した結果、「安保環境の変化」を考慮し移管を調整することで一致したという。

 南朝鮮側はこの「安保環境の変化」について、昨年5月の朝鮮による第2次核実験、今年3月の南朝鮮軍の哨戒艦「天安」号の沈没事件などを挙げている。これらの動きを受けて、移管時期を延期すべきとの意見が台頭し、両者が水面下で交渉を進めてきたという説明だ。

 青瓦台の金星煥外交安保首席秘書官は6月26日、12年は南朝鮮と米国、ロシアで大統領選挙があるほか、中国でも指導者が代わり、北が強盛大国の大門を開くと宣布した年だと指摘。朝鮮半島周辺情勢が不安定になる要素が複数あることから、作戦統制権の移管にはふさわしくないと双方が判断したと強調した。シャープ韓米連合軍司令官も30日、「韓国軍への作戦統制権移管延期は戦略的なもので、韓米同盟はいっそう強化される」と述べた。

米の支配深まる

 戦時作戦統制権の移管が延期されたことについて祖国平和統一委員会(祖平統)は1日、スポークスマン談話を発表.

 「李明博が米国と共に艦船沈没事件をでっち上げた謀略的正体も今回の取引劇を通じて完全にあらわになった」と指摘し、今回の延期劇にひそむ危険性を明らかにした。

 同談話は、「天安」号沈没事件が「日本の米軍普天間基地の移設の要求を抑え、南朝鮮のかいらい一味からは戦時作戦統制権の移管の延期を狙った米国の特大型謀略劇だった」との見解を示した。

 戦時作戦統制権の移管延期によって、米国の政治・軍事・経済的支配はより深まることが予想される。さらに米国の戦争策動が強化され、南朝鮮軍がその突撃隊として前面に立つことにより、朝鮮半島とその周辺地域の戦争の危険はいっそう増大することになる。

 南朝鮮の政界では、野党勢力を中心に大統領の事大・売国的な行為を非難している。

 民主労働党は「戦時作戦統制権を外国に渡す国が一体どこにあるのか。しかし、李明博大統領はオバマ大統領に『感謝する』と言った。このような恥辱はない」という見解を表明し、政権の責任を厳しく追及する構えを見せている。

 戦時作戦統制権の移管延期の代価として今後、南朝鮮が市場開放、米軍維持費の分担、海外派兵、ミサイル防衛システムへの加担など、米国の要求を受け入れざるをえない境遇に置かれることを憂慮する声が各方面から上がっている。

 南朝鮮の世論は、李明博政権が極秘に米国との「密室取引」で戦時作戦統制権移管の延期劇を演じたことに怒りを表明し、当局に対して「詐欺劇」の真相を公開するよう求めている。(李相英記者)

[朝鮮新報 2010.7.7]