哨戒船沈没 確証なき「北関連説」に異論反論 「当局は信頼できない」 |
南朝鮮当局は、哨戒船「天安」が「北の魚雷攻撃」によって沈没したとのシナリオに沿って情報操作を行い、反北感情を煽っている。青瓦台や軍当局が「状況証拠」として断片的な事実をリークし、朝鮮日報などの保守系メデイアがそれを大々的に報じた。日本の新聞、テレビも提供された情報を検証することなく鵜呑みにし、「北関連説」を広めたが、南朝鮮内の世論動向を正しく伝えてはいない。南朝鮮当局が科学的、客観的な証拠もないままに「推定有罪」を唱えることに対して、異論反論が続出している。
軍事演習中の惨事
南朝鮮では、哨戒船沈没(3月26日)直後から、当局の発表に矛盾点が多く「わい曲」「ねつ造」の可能性が指摘されていた。 哨戒船は米・南朝鮮の合同軍事演習中に沈没した。西海にはイージス艦など最新鋭の戦力が配置されていた。もし哨戒船に対する「北の魚雷攻撃」があったのであれば、両軍はこれを探知できず、味方が被害を受けたにもかかわらず放置したことになる。軍当局にとっては責任問題になるが、当日の軍事的対応については、いまだ納得のいく説明はない。 この間「軍民共同調査団」が沈没の原因に関して一連の発表を行ったが、疑問は解消されていない。例えば、「調査団」は4月の時点で「バブルジェット」によって船体が真っ二つに割れ、沈没したとの見解を示した。「バブルジェット」とは、魚雷などが水中で爆発した際に生じる強力な水流のことで、魚雷が船体に直接当たらなくても大きな被害が出る。船体に直接ぶつかって爆発する直走魚雷でない「バブルジェット」方式の魚雷がさく烈する場合、海面上に数十〜数百b高さの水柱がともなうが、「天安」の生存者たちは、そのような水柱を見ていない。 「調査団」には民間人も参加しているというが、構成メンバーは明らかにされていない。今回の沈没原因は「外部爆発」ではなく、船体の老朽化によるものとの見解がある。これと関連して艦船沈没の「主犯」であるかもしれない軍当局に「調査」を任せるべきではないとの指摘もある。 告訴による「口封じ」 沈没原因に関して一般市民の中には、座礁による事故などさまざまな見方がある。一部メデイアが、哨戒船の近くに米軍の潜水艦が沈没していると考えられる「状況証拠」を示し、米潜水艦による「誤爆」や「同士討ち」の可能性も取りざたされた。しかし、この件について報じたKBSテレビは当局から名誉棄損で告訴された。 類似したケースは他にもある。廬武鉉政権時代の青瓦台安保戦略秘書官がインタビューで「政府と軍当局が国民に公開しない資料を米国が持っている」と語った。元秘書官は、米軍と南朝鮮軍の合同軍事演習中に哨戒船が沈没したのであるから、米側は当然、航跡記録、交信記録を把握していると指摘した。それは青瓦台時代の経験に基いた発言であったが、国防長官は虚偽の事実を流布したとして、元秘書官を告訴した。 北側は哨戒船沈没に対する関与を明確に否定している。「北関連説」を追及する目的に関しては「無能な国政運営によって引き起こされた危機的状況から抜け出るため」(労働新聞・軍事論評員)反北対決を扇動していると指摘した。南朝鮮では6月2日に地方選挙が行われる。与党が敗北を喫すれば保守陣営が分裂し、政権のレイムダック化が加速すると見られている。 艦船沈没問題で北への敵対心を煽る状況が生まれれば、不利な選挙情勢を逆転させ、内紛が絶えない保守陣営を結束させることができる。 大統領は謝罪せよ 李明博政権は、選挙運動が始まる20日、哨戒船沈没に関する「最終的な調査結果」を発表した。野党や市民団体は安保問題の政治利用に強く反発している。 17日、民主党、民主労働党、創造韓国党、国民参与党などの野党と宗教界、法曹界の代表が国会で共同記者会見を開き、「明確な証拠の公開、国際的な公認なき結論は、国民的、国際的不信を招く」と見解を示した。 そして「46人の人命を奪った惨事が起きて2カ月が経つが、責任をとる人間は誰一人いない。軍統帥権者である大統領が遺族と国民に謝罪しなければならない」と主張、国防長官、海軍総長など軍幹部の即時解任を求めた。(金志永記者) [朝鮮新報 2010.5.21] |