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遺族不明の遺骨送還の撤回を 強制連行調査団が声明発表

 日本政府が祐天寺(東京・目黒区)に預託している元軍人軍属の朝鮮半島出身者の遺骨を遺族不明のまま無断で南朝鮮に引き渡そうとしている問題で、朝鮮人強制連行真相調査団が17日、遺族が不明な遺骨送還の中止と真摯な対応を求める声明を発表した。犠牲者や遺族の尊厳を踏みにじり北南朝鮮を差別する日本政府の対応を非難するとともに、この問題が北南朝鮮と日本の真の和解と平和友好の契機となるよう真摯な決断と対応を行うよう日本政府に求めた。全文は以下のとおり。

日本政府による遺族不明な遺骨送還の撤回と真摯な対応を求める声明

 5月18日、日本政府は祐天寺(東京)で「韓国出身戦没者遺骨の還送式」を行い、遺族不明の遺骨を南朝鮮に送還する。これは日本政府が敗戦直後から行ってきた不十分な遺骨送還に比べても、最悪といえる非人道的な対応である。以下、問題点をまとめここに提起する。

これまでの遺骨送還の問題点と遺族の不信

 日本政府は戦後、いち早く連合国の犠牲者の遺骨を各国に送還したが、北南朝鮮の遺骨問題には無関心であった。しかし、連合国総司令部(GHQ)の指令により、1948年2月から朝鮮半島南部地域に限定した遺骨送還が始まり、それにともないさまざまな問題が発生した。

 「人道法」には「死者をできる限りその属する宗教の儀式に従って」(ジュネーブ条約第1条、第17 条)と明記されているが、送還された遺骨箱には位牌のみが入っていたケースが約8割を占めた(1948年返還数3643箱、その内遺骨786体)。これは代を継いで祖先を敬うという朝鮮民族の民族的慣習を無視した対応であり、南朝鮮の遺族からは「遺骨が送られてくるものと思っていたのにこんな木片で私たちを騙すのか」と、不信と反発の声があがった。そしてこれ以降、遺骨返還は23年間も中断された。

 1971年からは朝鮮半島南部の遺族を確認した上で遺骨を送還する方法がとられたものの、不誠実な対応は継続された。その一例として、2006年、日本政府は犠牲者名が書かれた遺骨箱と遺骨の写真を南朝鮮政府を通じ遺族に送ったが、この中に生存者のものまで含まれていた事実が判明した(2007年1月16日東京新聞)。

不誠実極まりない今回の遺骨返還

 日本政府は1971年以降、不十分ではあるが最小限の責任として、遺骨の返還にあたり、朝鮮半島南部出身者の遺骨の法的所有者である遺族を確認した上で遺族への遺骨送還を行ってきた。

 ところが今回、日本政府は「これまでは、遺族の判明した遺骨のみを返還していたが、日韓で協議が整ったことから、今回は、遺族の判明していない遺骨も含め返還するもの」(厚生労働省社会・援護局企画課外事室報道発表資料)と公表した。

 これは、遺族を確認できなくとも、65年前の本籍が朝鮮半島南部にある遺骨は南朝鮮に送還するということなのである。

 周知の事実であるが、朝鮮半島には解放後の北南分断により約1000万人の離散家族がいるといわれている。たとえ当時の本籍地が現在の南朝鮮にあったとしても、その遺族が南朝鮮に居住しているとは限らないのである。

 もし朝鮮民主主義人民共和国に遺族がいることが判明した場合、日本政府の法的責任は免れない。今回の南朝鮮への遺骨返還は違法行為である。

平壌宣言に反する新たな問題

 2002年9月17日の平壌宣言で「日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した」(第2項)。

 しかし、今回の送還は、上記の宣言とはまったく異なる対応である。

 そもそも、祐天寺に遺骨が残されている原因は、「過去の植民地支配」の結果であり、今回の対応は「痛切な反省」とは全く異なるものである。南朝鮮からの要請があったとしても、この問題の第一義的責任は日本にある。

 平壌宣言から既に8年が経過しようとしている。この間、朝鮮民主主義人民共和国は「拉致」被害者の遺骨を日本に送還した。一方、日本政府は、朝鮮民主主義人民共和国に犠牲者の名簿はもちろんのこと、一体の遺骨も返還していない。さらに日本政府は、祐天寺に遺骨があることを確認した平壌在住の遺族の入国すら拒否し、日本人の「拉致問題」だけを声高に叫んでいる。

 戦後65年を経た今、加害国が被害国に一体の遺骨すら返還せず、その遺族の入国すら拒否する国は唯一日本だけである。

平和と友好につながる真摯な対応を

 日本による不法な朝鮮植民地統治下で軍人・軍属として強制的に連行された被害者の遺骨返還にあたっては「遺族の意思に基づく誠実な対応」が当然に求められる。このような認識のないままに行う形式的な遺骨返還は即時中止すべきである。

 そしてまず、日本政府は犠牲者遺族との真摯な対話を行うべきである。半世紀以上も放置されたことによる様々な問題が表面化すると考えられるが、犠牲者の気持ちを少しでも癒す方法としては、真摯な対応が不可欠である。

 また、朝鮮半島南部のみに限定した冷戦時から続く一方的かつ政治的な遺族返還の対応を即時改めるべきである。

 最後に、以上のことを前提に提案する。

 戦後65年を経たことから、すべての遺骨返還が不可能なケースもあり得るだろう。

 日本は北南朝鮮の政府と犠牲者団体、日本国内の民族団体などに呼びかけ遺骨返還に関する対応を協議すべきである。例えばすべての情報を公開し、朝鮮半島のどこからでも訪問できる共同地域に追悼碑または納骨堂を建設すべきである。そして日本国内にも記録を残し、平和へとつながる象徴的な施設または記念碑建立などの対策を検討すべきである。

 「韓国併合」100年を迎える今年、この問題を北南朝鮮と日本の真の和解と平和友好の契機としなければならない。鳩山内閣の真摯な決断と対応が今、求められている。

以上

2010年5月17日

朝鮮人強制連行真相調査団
日本人側全国連絡協議会
朝鮮人側中央本部

[朝鮮新報 2010.5.17]