北南和解・協力の象徴 金剛山観光が重大危機 |
「事業再開は南当局の対応次第」
北南和解、協力の象徴として1998年から行われてきた金剛山観光事業が重大な危機にひんしている。朝鮮アジア太平洋平和委員会(ア太委)は4日、スポークスマン談話を発表し、南朝鮮当局が観光再開を引き続き阻む場合、観光事業と関連するすべての合意と契約の破棄、観光地域内の不動産凍結などを含む「断固たる措置」を取ると宣布した。そして18日、金剛山地区内の不動産を調査するとしながら南の所有者に召集をかけた。これと同時に、南当局が観光を再開させない場合は新たな事業者に観光地区を開放する意向を南側に伝えた。スポークスマン談話で示された措置が実行段階に移ったと見られている。 名勝地総合開発指導局は19日、「金剛山、開城地区の観光再開を阻む犯罪的策動は絶対に容認されない」と題する詳報を発表し、「観光の道が開かれるか否かは、全面的に南朝鮮当局の態度いかんにかかっている」と強調した。
「3大条件は解決済み」
金剛山観光が中断されたのは、李明博政権が発足した年の2008年7月だ。 11日、金剛山地区で通行が禁じられた北の軍事統制区域内に不法侵入した南の女性観光客が、警戒勤務中の人民軍哨兵の取り締まりと警告を無視して逃走し、射撃されて死亡する事件が発生した。 その翌日、南当局は北側があたかも「罪のない観光客」を故意に射殺したかのような対応を示し、金剛山観光を一方的に中断させた。 それから2年近くもの間、観光事業は再開されておらず、再開のメドも立っていない。 南側が「3大条件」が解決されなければ観光を再開できないと居直っているためだ。 「3大条件」とは、@金剛山観光客事件の真相究明A身辺安全保障B再発防止措置をいう。 しかし、北側が再三明らかにしているように、「3大条件」はすでに解決された問題だ。 @の問題は、「事件発生後直ちに事件の全容をすべて明らかにし、南側関係者と共同で現地調査までしたので、これ以上解明するものはない。事件の現場は軍事統制区域であって誰もむやみに出入りすることができないうえ、事件から日時が経過して高潮などの影響によって地形・地物も大きく変わったことにより、現地調査の意味もなくなった」(名勝地総合開発指導局詳報)。 ABの問題は、すでに北南間で十分に協議、解決され、合意した。とくに2009年8月、平壌を訪問した現代グループ会長と会見した金正日総書記は、観光事業に必要なすべての便宜と安全を徹底的に保障するという「特別措置」を下し、これが明記されたア太委と現代グループの共同報道文が発表された。 2月8日の接触後も引き続き南当局が「3大条件」を掲げていることについて北側は、観光事業を破綻させるための口実だと指摘している。 名勝地総合開発指導局詳報は、南当局が観光再開を阻む目的について、米国に追従して反北核対決騒動と制裁策動をいっそう強めようとするところにあるとの見解を示し、「南当局の反統一対決政策が撤回されないかぎり、これから南側と百回向かい会うとしても観光再開問題が解決されない」という結論を下している。 南で再開要求の声 金剛山、開城地区観光事業の中断が長期化する状況下で、南の事業主である現代峨山の経営は圧迫され続け困難に陥っている。1千人以上いた従業員は1年半あまりで400余人に減り、給与も削減されたという。北側が金剛山地区内の不動産を調査すると宣布した18日は、現代峨山チョ・ゴンシク社長が辞意を表明した日でもあった。チョ社長は、「観光再開のため懸命に努力したが、実らなかった」としながら、この責任を取ると述べた。 南朝鮮内では、「3大条件」一辺倒で観光再開へ努力を傾けようとしない南当局に対し、「再開への意志が見られない」と批判が高まっている。 22日、ソウルの統一部庁舎前で記者会見を行った韓国進歩連帯などの市民団体は、「南当局は身辺安全などの問題解決を観光再開の条件としているが北は最高級の形で保障している」「無責任な居直りで破局を招いた統一部長官の解任と金剛山観光の即時再開を求める」と主張した。 南の主要メディアも、「南政府の慎重かつ賢明な対応に注目する。破局させずに突破口が開かれるべきだ」(連合ニュース、21日)と求めている。(姜イルク記者) ▼金剛山観光事業 南朝鮮現代グループの鄭周永名誉会長(当時)が1998年6月、赤十字を通じた支援として牛500頭を連れ板門店経由で訪北した際に北と合意した。同年11月、南・江原道束草市の東海港と北・江原道高城郡の高城(長箭)港を観光船が結ぶ形で事業がスタート。03年2月からは陸路による観光が実施された。観光客は200万人を超す。 [朝鮮新報 2010.3.26] |