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朝鮮の論調 09年 12月

 昨年12月初旬、ボズワース米特別代表一行が訪朝した(8〜10日)。2泊3日に及んだ行程の詳細は明らかでないが、朝鮮中央通信は虚心坦懐な議論が行われたと報じた。あわせて金正日総書記に宛てたオバマ大統領の親書があったことも報じられた。

−対米 今後も引き続き協議を行う

 ボズワース氏の訪朝は、オバマ政権発足後に初めて行われた朝米直接会談という点において重要な意味を持つものだった。

 朝鮮中央通信は11日、これと関連した朝鮮外務省代弁人の記者会見内容を報じた。

 代弁人は、ボズワース特別代表一行が金桂官外務次官との会談、姜錫柱第一外務次官との面会を行った事実を明らかにし、「平和協定締結と関係正常化、経済およびエネルギー協力、朝鮮半島非核化など幅広い問題を長時間にわたって真摯かつ虚心坦懐に議論した」と発表した。

 また、「実務的で率直な話し合いを通じて相互理解を深め、互いの見解上の差を狭めて共通点も少なからず見出した」とし、「6者会談再開の必要性と9.19共同声明履行の重要性に関しても一連の共通認識が生まれた」と述べ、最後には「朝米双方は残された相違点をすべて狭めるために、今後も引き続き協力していくことにした」と語り、今後も朝米間で継続して対話が行われることを示唆した。

 会見内容を見るかぎり、朝鮮側が極めて肯定的に受け止めていることが印象に残る。朝米双方にとって有意義な話し合いが行われたことを仄めかしている。

 一方、米国側の反応も前向きだった。「とても有益だった。率直で真摯な意見交換ができた」(ボズワース氏)、「(予備的な協議としては)非常に建設的だった」(クリントン国務長官)とそれぞれ述べている。

 他には29日に米国人一人の抑留が伝えられた。朝鮮中央通信は、この米国人が「24日に朝中国境地域から不法入国し、現在、当該機関で調査中である」と報じている。

−対日 「在特会」騒乱招いた敵視政策

 さまざまな分野で日本を批判してきたほとんどすべての問題について、非難論調が配信された。

 列記しただけでも▼「日本の常任理事国入り企図」(労働新聞1日付)、▼「関東大震災時に敢行された野蛮な大虐殺蛮行」(労働新聞3日付)、▼「『非核3原則』は見せ掛け」(労働新聞9日付)、▼「許されない宇宙軍事化策動」(民主朝鮮9日付)、▼「朝鮮人大虐殺犯罪は必ず清算されねばならない」(労働新聞13日付)、▼「悪名高い人権蹂躙者」(労働新聞22日付)、▼「破廉恥な領土強奪野心」(労働新聞28日付)などがある。

 中でも、「在特会」なる組織が京都で起こした騒乱に対し、労働新聞は24日付の記事で厳しく非難している。

 記事は、今回の騒動を「反総連狂乱劇」と切り捨て、「日本の政治が不治のガンのように長らく病んできた民族排他主義によってもたらされた」と指摘した。そして、「朝鮮と総連および在日同胞に対する敵視政策」がその背景にあると述べた。

 また、在日同胞の初歩的な生存権まで奪おうとすることに(騒動の)目的があると強く糾弾した。

 鳩山新政権に言及する内容は、引き続き配信されていない。

−対南 統一は「新しい世代のために」

 引き続き北南関係改善を訴えている。

 労働新聞は4日付の記事で「自主、平和統一、民族大団結の祖国統一3大原則は最も正当な統一綱領」と主張した。

 5日付の記事でも「後代に伝えるべき最も重要なものは統一された祖国であり、繁栄する民族の未来だ」指摘した。

 労働新聞はまた、7日付の記事でも「祖国統一は、片時も先送りできない時代の切迫した課題であり、われわれの世代にとって必ず成し遂げねばならない任務」と強調。「われわれの世代に祖国を統一できずに分裂を持続させるならば、これから育つ新しい世代も北南に分かれた祖国で育ち、不幸と苦痛を味わうことになるだろう」とし、民族の分裂は大きな不幸の根源になると主張した。

 これまでにも北南関係改善を求める論調が多数配信されたが、今月になってから「次の世代のために」という文言が加わった。「われわれの世代に統一を成し遂げよう」というのは、金正日時代のうちにという意味にも受け取れる。

 一方、労働新聞は12日付に北南関係に言及する「評論員」名義による長文を掲載した。

 評論員は、関係改善に取り組んだ北側のさまざまな措置を羅列しながら、「(これに対する)南側の態度には失望させられた」と指摘した。

 そして、「この間、公式・非公式な接触と会談を通じて交わした合意と約束」があったことを公表し、これらを玄仁澤統一部長官に代表される反統一勢力がすべて反故にしたと糾弾。関係改善のために傾ける北側の努力に南側も積極的に呼応すべきであると強調した。

 2月6〜14日にサッカーの東アジア女子選手権が日本で開催される。

 これと関連し、中井洽・拉致問題担当相(国家公安委員長)は「制裁がかかっている段階だから(朝鮮女子代表の入国には)当然反対だ」と発言(昨年12月10日)。千葉景子法相も同調した。

 12日、朝鮮女子代表の不参加が正式に発表された。

 大会を運営する東アジアサッカー連盟の小倉純二会長は「大会不参加は『歓迎されていない』と判断されたからと思う。われわれは今でも北朝鮮が参加することを歓迎している」と語り、暗に残念がった。

 あるサイトのアンケートによると、先の中井氏の発言を巡る賛否はちょうど五分と五分。排他的な風潮に異を唱える人が半数しかいないと見るべきか、半数もいると見るべきか。

 今回の騒動でほくそ笑むのは「制裁」強硬論者、残るのは無用の禍根、聞こえてくるのはサッカーファンの溜息だけである。(韓昌健記者)

[朝鮮新報 2010.1.15]