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「宣伝用」砲撃と州知事訪朝 追い込まれた米の収拾策

 西海砲撃戦の発生から約1カ月後に実施された南朝鮮軍による延坪島での砲弾射撃(20日)は、朝鮮人民軍との全面衝突を回避しようとする米軍の「逃げ腰」を印象づけた。人民軍の対応射撃を避けるため、当初計画された射撃水域と着弾点は変更された。米側は南朝鮮軍を挑発行為に煽りたてる一方で、破たんした強硬路線を収拾しなければならない状況に追い込まれている。

破綻した強攻策

 南朝鮮軍による「射撃訓練」終了直後、朝鮮人民軍最高司令部は「いちいち対応する一顧の価値も感じない」との立場を表明した。

 今回の事態を、「なぜ朝鮮が応戦しなかったのか」と捉えるのは間違いだ。「朝鮮の反撃を避けるため、米国が小細工をした」との観点に立たなければ、状況を把握できない。

 11月23日、南朝鮮軍の挑発に対する人民軍の断固たる応戦措置は、停戦協定締結当事国であり、南の戦時作戦権を持つ米国に大きな打撃を与えた。オバマ政権は「天安」号沈没事件以後、西海と東海で南と合同軍事演習を強行し、緊張をエスカレートさせてきたが、それが臨界点に達すると戦争が勃発するという現実を目の当たりにした。

 今回、米国は「対北強硬策」を主張する李明博政権と南朝鮮軍の体面を守るため、いわゆる「宣伝用の挑発」を準備しながら、朝鮮側を不必要に刺激せず、対応砲撃を受けずに済む「挑発」のレベルを考えたようだ。その結果、射撃水域と着弾点が変更され、11月23日の射撃時に残った砲弾を1時間ほど撃ち放ち「訓練」を終えた。

 あの日、米国は世界の注目を延坪島に集め、大芝居を打ったと言える。「南朝鮮軍が主導し、米軍が支援する」という「訓練」を「国連軍司令部の構成国代表」と「軍事停戦委員会の関係者」が参観した。米国務省は朝鮮側に「射撃現場には米国人と外国人記者もいる」と「通報」したという。「人間の盾」をつくり、相手を脅迫する手法だ。

 一方、米国メディアはホワイトハウス、国務省の朝鮮半島担当者が「訓練」の様子をリアルタイムで確認し、米軍の統合参謀本部議長はペンタゴンで「真夜中の指揮」を執ったと大々的に報じた。

 ところが朝鮮人民軍は、米国の「総動員態勢」という演出された「訓練」には対応せず、「騒々しく爆音を鳴らすだけの卑怯者による幼稚な火遊び」だと皮肉った。現在の朝鮮半島における紛争の実態を、これほど端的に表したフレーズはない。

「包括的措置」論議

 米国は、外交分野でも路線の見直しを迫られている。もう一つの停戦協定締結国である中国は、危機打開を目指す対話外交の再開を一貫して主張しているが、米国は「中国が朝鮮に影響力を行使するべき」と逃げ口上を繰り返すだけで、実効性のある代案を示せずにいる。

 延坪島で「訓練」が計画された時期、米ニューメキシコ州のリチャードソン知事が訪朝した。知事は南の「訓練」に対する朝鮮側の「自制」を求めたという。朝鮮側がどう反応したかは想像に難くない。一方が忍耐力を発揮しようとしても、他方が挑発すれば、事態の収拾は不可能だ。紛争の根源が取り除かれなければならない。

 知事に同行したCNN取材陣のレポートによると、平壌滞在中に朝鮮半島の緊張緩和のための「包括的措置」が論議されたという。米国、南朝鮮と紛争地域を監視する軍事委員会の設置問題を協議することに朝鮮側が同意した、とCNNは伝えた。今回の知事の訪朝は「個人資格」ということになっているが、報道された議論の内容は普通の「個人」が何の根拠もないまま提案できるテーマではない。

 ホワイトハウスと国務省は、知事の訪朝が政府とは無関係だと表向きは冷淡な反応を見せている。しかし、米国が延坪島で「宣伝用の挑発」を準備し、実行に移そうとする時、「情報発信力を持つ政治家」の訪朝と、平壌における朝鮮外務省、国防委員会関係者との会談が許可されたことは、紛れもない事実だ。

 今年1月、朝鮮は停戦協定を平和協定に転換させ、半世紀以上続く米国との「交戦状態」に終止符を打つことを提案していた。それを否定し、この1年間、自国の利益のために地域の軍事的対立を煽ってきた米国が、人民軍の砲撃に急所を突かれ、朝鮮の平和攻勢に押される局面が始まったとの観測が出ている。

 国際政治の動向など眼中にない南の好戦勢力は、延坪島「射撃訓練」に続き、ソウル近郊の抱川市にある演習場で「過去最大規模の合同実弾訓練」を実施した(23日)。

 オバマ政権が、朝鮮人民軍最高司令部が言及した「2次、3次の強力な対応打撃」を回避したいのであれば、「射撃訓練」の着弾地点を計算するような姑息なやり方ではなく、対話再開に向けた外交上の妥協点を探すべきだ。

[朝鮮新報 2010.12.24]