朝鮮の自立路線と成果 報じられない「経済事情」 |
「瀬戸際戦術」は虚構 日本では、延坪島事件が「北の挑発」によって引き起こされたという虚偽報道が続いた。先に砲撃した南朝鮮軍の行動には言及せず、人民軍の対応砲撃を一方的に非難するメディアは、例によって「瀬戸際戦術」のレトリックを使い「砲撃の目的」を解説した。朝鮮が「国内の不安」を抑え、国際社会から「譲歩」と「援助」を引き出すために、意図的に緊張を高めているというのは根拠のない的外れな主張だ。例えば現在、朝鮮国内では砲撃戦に関するニュースよりも、経済分野で達成された成果が大々的に伝えられ、生活向上に直結する生産工場の実績などが人々の関心を集めている。
国内資源の活用
朝鮮は2012年に「強盛大国の大門を開く」と宣言した。最重要課題は経済の復興と人民生活の向上だ。内閣の関係者によると、目標達成の根拠は「自立的民族経済の潜在力」だという。外国との経済交流・協力も重要な要素ではあるが、「大門」を開くカギは、経済の自立性を強化することにあるとの指摘だ。 6日発朝鮮中央通信は、金正日総書記が金策製鉄連合企業所(咸鏡北道)を現地で指導したと伝えた。鉄鋼生産における国の最重要拠点である同企業所は、非コークス製鉄を成功させ、国内の褐炭を利用するいわゆる「チュチェ鉄」生産システムを確立した。 総書記は現地指導の現場で、国内の原料に基づく非コークス化と石炭ガス化が「われわれの経済発展で譲歩できない鉄則」であり、これまでの実践を通じて正当性が証明されたこの路線を、「経済建設の変わらぬ生命線」としなければならないと強調したという。 ソ連と東欧の社会主義が崩壊する以前、朝鮮はコークスを含む工業の原料、燃料をバーター貿易の方法で確保していた。しかし冷戦構図が崩壊し、物品を直接交換する求償貿易のチャンネルは失われた。 90年代の経済的な試練の時期、朝鮮が原料難、燃料難を解決するために選択した道は、建国以来の自立経済路線をさらに徹底して推し進めることだったという。既存の輸出入ルートが突然遮断された冷戦後の体験も、外国の「善意」や「支援」に依拠する経済発展方式を排除する方向に作用した。 どのような国際環境の中でも、自国の資源、技術で自立経済を発展させていくというのが、経済復興戦略の柱として位置づけられている。朝鮮は90年代の危機をチャンスに変えて、自国の産業構造を大きく革新した。
「12年」の根拠
自立更生によって躍進する国家は常に前向きだ。日本のメディアは、その現実を決して伝えようとはしない。朝鮮の現状を90年代の延長として捉え、その行動を「瀬戸際戦術」の枠に無理やり押し込めようとしている。 「2012年」が目前に迫り、「北の挑発」が頻発しているという暴論も、朝鮮の現実からは、あまりにもかけ離れたものだ。国内の経済学者は、自立的民族経済の発展に力を注いだ10数年間の実績に基づき「2012年構想」が打ち出されたと指摘する。「大門」を開く時期と、敵対国の制裁や6者会談の有無など対外的な環境の変化は関連がない。「2012年」は、そもそも朝鮮国内の要因によって設定された目標だ。 現在、経済の自立性を強化することによって達成された成果は「チュチェ鉄」だけではない。今回、金策連合企業所の前に現地指導を受けた端川マグネシア工場(咸鏡南道)は、マグネシアクリンカーと軽焼マグネシア生産の非コークス化を実現した。 「チュチェ肥料」、「チュチェ繊維」の成果が報道されたのも今年だ。南興青年化学連合企業所(平安南道)には、大規模無煙炭ガス化工程に基づく化学肥料生産システムが建設された。2.8ビナロン連合企業所(咸鏡南道)では、無煙炭と石灰石で製品を生産する近代的なビナロン工場が竣工した。 朝鮮の自主経済路線は原子力の平和利用分野でも具現されている。国内に豊富なウラン資源を利用する原子力発電所の建設計画が進められている。「実験用軽水炉」の完成は、2012年を目標にしているという。 自衛権の行使 延坪島事件の後も、経済分野に対する金正日総書記の現地指導が続いている。2012年を目前にして、朝鮮が軍事的緊張を激化させなければならない理由はない。経済復興の前提は、国の平和と安定だ。朝鮮の発展と繁栄を望まない敵対勢力が軍事的挑発を行えば、当然自衛権を行使するだろう。朝鮮には、自立更生によって先端水準を達成した国防力がある。 「瀬戸際」論の文脈では、今回の人民軍の対応砲撃を説明できない。自主、自立、自衛の原則を実践する朝鮮は、敵対国の動向に関係なく、自らの「2012年構想」に沿って滞りなく前進しようとしている。内部に問題を抱える国は、外部に頼るしかないという身勝手な先入観にとらわれている限り、朝鮮の行動パターンを予測するのは不可能だ。(金志永) [朝鮮新報 2010.12.15] |