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金正日総書記の中国東北地方訪問 革命伝統の継承と新たなる経済協力

振興の地、歴史をたどり未来描く

 朝鮮労働党代表者会と党創建65周年という重要な政治日程を控えた時期に行われた金正日総書記の中国訪問は、今後の内外情勢の変化を予感させるものだ。今年5月、朝鮮の2度にわたる核実験(06、09年)を挟んで4年ぶりに行われた朝中首脳会談は、新たな友好関係の大きな枠組みを設定した。そのわずか4カ月後の電撃訪中は、時代が動いても変わらないスタンス、揺るぎなき革命伝統の継承をアピールした。

友好のルーツ

 今回、金正日総書記は中国東北地方の吉林省、黒竜江省を訪れた。胡錦濤主席との朝中首脳会談も北京ではなく、吉林省の省都である長春で行われた。東北地方は1920年代に始まる金日成主席の抗日闘争の舞台であり、日本の侵略と植民地支配に反対する共同闘争を通じて朝中友好の歴史的なルーツが育まれた土地でもある。

 主席は生前、この地を再び訪れることがなかった。朝鮮中央通信によると総書記は主席の思いを胸に吉林毓文中学校など、ゆかりの場所を訪れたという。「抗日の伝説的英雄」によって開拓された革命の歴史に精通している朝鮮人民は、今回の訪中に込められた総書記の意図を理解しただろう。

 「東北地域に入った瞬間から、長白山の山並み(舌拷至 匝奄匝奄)と鴨緑江の流れ(笑系悪 荏戚荏戚)に今も歴々と刻まれている革命烈士の血で染まった足跡を顧みて崇高な感情を禁じえず、朝中友好の貴重さをなおいっそう感じることになりました」−首脳会談後に催された歓迎宴で総書記は、「金日成将軍の歌」を引用した演説を行っている。そして総書記が訪れた毓文中学校でも現地の学生たちが、この歌を披露したという。

 主席が通った毓文中学校は今も朝中友好の象徴になっている。総書記は中国で唯一、主席の銅像が立つこの場所を戴秉国国務委員をはじめとする中国側幹部の案内を受けながら訪問した。

経済協力の拡大

 中国側も歴史を共有している。朝鮮の革命家たちは、抗日闘争を展開し民族の独立を達成しただけでなく、中国の国共内戦における共産党の勝利と中華人民共和国の建国(1949年)にも貢献した。金日成主席と毛沢東主席、周恩来首相など先代革命家たちの同志としての絆は強かった。朝中は1950年代、米国の侵略に対抗する共同戦線を形成した。

 胡錦濤主席は今回の首脳会談で、朝鮮との「戦略的友好関係」に言及し、◆首脳レベルでの持続的な交流◆国際および地域問題における意思疎通◆経済貿易協力の推進、拡大を朝鮮側に提案した。

 現在、中国は総書記が訪れた東北地方の経済発展に力を注いでいる。昨年、政府は大規模な豆満江流域開発プロジェクトである「長吉図(長春−吉林−図們)開放先導区」建設を承認した。内陸部である「長吉図先導区」が東北アジアの物流拠点になるためには海上航路を確保しなければならない。中国政府が注目するのが朝鮮北東部に位置する羅津港だと伝えられている。

 一方、朝鮮側は今年1月、羅津港を有する羅先市を特別市に昇格させた。昨年12月には総書記が羅先市を訪れ現地指導を行っている。

 中国が進める「東北振興戦略」を朝鮮側は肯定的に評価している。今回の訪中でも総書記は変貌する東北地方の発展ぶりを直接目撃した。

 朝鮮と中国は山と河が連なる隣国だ。今後、経済の各分野と隣接する地域(道−省)間の交流が活発になるとの観測もある。新義州(平安北道)−丹東ルートを利用した5月の総書記訪中には平安北道の党責任書記など地方の幹部も随行した。満浦(慈江道)−集安ルートによる今回の訪中の随行員にも慈江道の党責任書記などが含まれている。

共同利益の追求

 総書記の東北地方訪問は、拡大する朝中経済協力のルーツについても再確認させた。新たなステップを踏み出した両国の友好関係もその歴史を振り返れば、出発点は金日成主席が東北地方で中国の革命家、人民らと共に闘った1920年代にまで遡る。

 主席の生誕100周年を迎える2012年までに朝鮮が達成するとしている目標は経済復興と人民生活の向上だ。今後、大胆な政策によって大きな変化が生まれるかもしれない。朝中関係においては、その礎を主席が築いた。朝鮮が目指す「強盛大国の大門」は、敵対国の期待するような「路線の転換」ではなく、自主の旗印を掲げ、隣邦との同志的関係を強化するという「革命伝統の継承」の延長線上にあるのだ。

 朝中の友好は「歴史の風波と試練を乗り越えた友好」であるといわれている。両国の歩みが常に順風満帆だったわけではない。とくに冷戦後は、時代の変化と共に関係が推移した。朝鮮が核保有国になった事実が示すように、北東アジアの安保状況は大きく変わった。

 現在、朝中両国は東北アジアの新たな国際秩序を想定し、長期的な視野に立って共同の利益を追求している。朝中の共同歩調は、例えば南の哨戒艦沈没事件への対応でも示された。米国と南当局が事件を口実に強行した朝鮮半島周辺での合同軍事演習に中国は反対した。

 経済の分野でも双方の利益を考慮した協力関係が築かれている。朝鮮は2012年に向けて対外経済活動を拡大し、外国投資を積極的に受け入れる方向へと転換している。中国側も自らの改革開放路線の経験を押し付けるのではなく、朝鮮が自国の実情に即した経済発展の道を歩むことを支持する立場だ。(金志永)

[朝鮮新報 2010.9.3]