労働新聞論評員の記事 「グランドバーゲン」は一顧の価値もない |
労働新聞17日付は、「南朝鮮当局のいわゆる『グランドバーゲン』を評する」と題する論評員の記事を掲載し、「論議する一顧の価値もない」と一蹴した。「グランドバーゲン」は南朝鮮当局が示した「北核一括妥結案」で、その内容は、北が6者会談に復帰し核を確実に放棄すれば、それに見合う果敢な「経済支援」を行うというもの。すなわち、北の核と「経済支援」を交換する取引をしようということだ。昨年9月、李明博大統領が訪米時に打ち出した「グランドバーゲン」について北が公式見解を表明するのは初めて。記事の内容を紹介する。
無知ぶりをあらわに
「グランドバーゲン」の趣旨と目的に関する南当局の説明はとんでもない。 核問題をいくつかに分けて少しずつ補償する方式の段階的接近方式でなく、一度に完全かつ逆戻りできない方式の「統合的接近法」で解決するというのである。そうして、「統合的接近法」による「不可逆的核廃棄」こそ、北の戦術に利用されない根本的で根源的な「北核解決法」であると騒ぎ立てている。 これは、あまりにも愚鈍で幼稚、拙劣な謀略シナリオであり、その議論は一顧の価値もない。 何よりも「グランドバーゲン」は、朝鮮半島の核問題に対する無知ぶりをあらわにしたでたらめなき弁である。 朝鮮半島の核問題の解決法を論じるには、核問題がどのようにして発生し、その本質が何なのかを初歩的にでも知って論じるべきであろう。 冷戦が終息し、大国間の関係が変わったこんにち、米国の核攻撃の矛先は朝鮮に集中している。この脅威に対処して、朝鮮が尊厳と安全を守るために核抑止力を備えたのはあまりにも当然である。われわれが核兵器を持たなかったら、米国がすでに侵略戦争の火を付けたはずであることは言うまでもない。 にもかかわらず、現南当局は朝鮮半島に核問題を生じさせ、核戦争の危険を招く外部勢力に対しては擁護し、自国の尊厳を守ろうとする同族に対しては悪らつに言いがかりをつけて「核放棄」を念仏のように唱えている。 まさに、「グランドバーゲン」は、原因と結果、加害者と被害者も見分けられず、朝鮮半島の核対決と核交渉の歴史的プロセスと背景も分からない稚拙な創案品にほかならない。 南当局が核問題を論じるなら、何が先で、何から解決すべきかということから勉強すべきであろう。 親米事大で反民族的 「グランドバーゲン」は、同族を米国の核戦争の貢ぎ物にするための極悪な親米・事大的、売国・反民族的なき弁である。 もともと、南当局は核問題を論じたり、それに関与する資格や体面すらない。 朝鮮半島に核問題が生じてこんにちのように広がることになったのは、歴代の統治層が米国と共謀、結託して主人の核戦争政策に積極的に追従したことにも主に関連している。 南当局は、米国が南朝鮮にわが民族を数十回、数百回皆殺しにしても余る多数の核兵器を搬入しても抗議一つしたこともなく、米国の核戦争装備が南朝鮮にわが物顔で出入りしても、それに文句を言うどころか、むしろ門戸をすっかり開いてあげた。 この世に、南朝鮮のように米国の核が完全開放され、「有事」の核兵器使用権まで外部勢力に丸ごと任せている国はどこにもない。 「グランドバーゲン」の大前提は、米国の核は問題にならず、北の核こそ危険なので放っておいてはならないということであるが、これは米国の強盗の論理をそのまままねたもので、事大・売国に狂った南当局のような親米手先ならではの思考方式である。 米国は、今回の「核体制の見直し」(NPR)で新たな核戦略を発表する一方で、朝鮮に対して自衛的核抑止力を口実に核不使用の対象から除外することを特別に宣布した。これは、われわれに対する核先制攻撃の悪巧みをさらに露骨に表したものである。 南当局は米国のこのような危険極まりない核の脅威は棚に上げて、正当防衛のためのわれわれの正義の核を問題視している。 真に核問題が心配ならまず、これまで米国の核をかばってきた犯罪行為を謝罪し、主人の「核の傘」を取り払って、南朝鮮駐屯米軍と核兵器を撤収させ、朝鮮への米国の核先制攻撃戦略に反対すべきであろう。 北南関係進展を阻む 「グランドバーゲン」は、朝鮮半島の核問題の解決を破たんさせ、北南関係の前進を阻むための反平和的で反統一的なき弁である。 現在、朝鮮半島は戦争が終結していない状態にあり、いつ火の手が上がるか分からない事態にひんしている。こうした状況で、自身の犠牲を受け入れてまでわれわれが一方的に核兵器を差し出せないのは誰の目にも明らかである。 「グランドバーゲン」は、このような初歩的な常識や原理原則も忘れ、核問題解決の正しい処方や方途もないただの殻にすぎない。 南朝鮮が、大規模の果敢な「経済支援」の財布をちらつかせば、われわれが直ちに応じると期待しているようだが、これよりも愚かな寝言はない。 民族の尊厳と国の自主権を頼もしく保証しているわれわれの強力な核抑止力をそのような三文の値打ちもない「善心」でかすめようとすることこそ、金と商売しか知らない者の考えであり、そのようなたわ言はわれわれに対する愚弄である。 南当局が民間団体のささいな北南協力事業までいちいち阻みながらも「大規模支援」や「国際的協力」などを言っていることこそ、笑止千万である。さらに、裏で「制裁」が効力を発揮しているかのように快哉を叫ぶ連中が「支援」をうんぬんするのは、実に鼻持ちならない。 複雑に入り組んだ核問題を一挙に解決すると言っていることもやはり、政治門外漢の愚かな妄想である。 何の信頼もない状態で、核問題の最終段階で議論すべき内容を一度に解決するということも途方もないが、核危機の解消に必須不可欠な米軍撤退、合同軍事演習の中止、朝米平和協定の締結などのようなものをどのようにして「統合的接近法」で一度に扱うことができ、南当局にそうする権限があるのかということである。 南当局は、「グランドバーゲン」を南北間で議論するだの、「核の障壁」を越えずには南北関係の進展を考えられないだのと騒ぐ一方、北が「グランドバーゲン」に「深い関心」を持っていると思うと差し出がましいことまで言っている。 「グランドバーゲン」がもたらしたものとは、核問題の解決に複雑さを増して北南関係を一段と破局に陥れたことだけである。 「グランドバーゲン」はその内容と本質において、極悪な反統一対決政策である「非核・開放・3000」と何の違いもない。 南当局は、誰も関心を示さない間抜けな「グランドバーゲン」のようなものを持ち出してはならない。 【労働新聞論評員の記事】朝鮮労働党機関紙の労働新聞に掲載される論評は党の見解と立場を反映しているが、とくに「論評員」の名義で発表されるものは、署名入りの一般の論評よりはるかに重きがおかれる。民主朝鮮などの他紙にも全文が掲載され、テレビ、ラジオでも繰り返し報道される。李明博政権の反北対決路線に対する北側の公式見解と立場を表明する労働新聞論評員の記事が発表されたのは、08年4月1日、5月30日、10月16日、12月19日、09年6月25日、12月12日に続いて今回が7回目になる。 [朝鮮新報 2010.4.23] |