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石炭資源に基づいた化学工業の発展 経済全般への波及効果、高まる期待

 【平壌発=李相英記者】朝鮮の化学工業が新たな段階に入った。金正日総書記の現地指導も大規模な化学工場の再建、現代化のプロジェクトに関するものが少なくない。現代の生活は化学工業の発展を抜きにして考えることはできない。軽工業発展に不可欠な各種原料も、その多くは化学工場で生産される。農業生産に必要な化学肥料も例外ではない。現在、朝鮮では国内に豊富な石炭を利用して化学工業を発展させていく方針が再び強調されている。

現地指導の重要対象

南興青年化学連合企業所の外観 [朝鮮中央通信=朝鮮通信]

 朝鮮国内の中心的な化学工場として、2.8ビナロン連合企業所(咸鏡南道咸興市)、興南肥料連合企業所(同)、南興青年化学連合企業所(平安南道安州市)などがある。この3つの企業所は近年、金正日総書記が幾度も足を運び現地指導を行っている重要対象だ。

 近年、これらの企業所は生産設備の現代化を推し進めてきた。2.8ビナロンはビナロン生産工程を一新した。興南肥料と南興青年におけるプロジェクトは石炭ガス化による肥料生産工程の確立だ。

 2.8ビナロン連合企業所は1961年の竣工から30年以上の長きにわたって国内の化学工業をリードしてきた。90年代中盤からの経済的苦境の中で生産がストップしたが、今回、16年ぶりにビナロン生産を再開した。今回の出来事は、繊維部門のみならず化学工業全般を活性化し、ひいては人民経済の各部門にも利益をもたらすものとして受け止められている。

 今回のビナロン生産工程の一新は、国内で「慶事」と呼ばれた。ビナロンという「チュチェ繊維」の生産再開はもちろんだが、ビナロン生産の過程で得られる各種の化学製品を経済の各部門に供給できる展望を開いたためである。

2.8ビナロン連合企業所の施設の一部 [朝鮮中央通信=朝鮮通信]

 生産される化学製品の一部を挙げるだけでも、アセチレン、酢酸、ポリビニールアルコールなど数多い。これらは合成樹脂、食品、日用品、農薬、染料などの原料として幅広く用いられる。

 一例として、酢酸やエタノールは食品、製薬工業で需要が高い。

 アセチレンは金属の溶接炎の原料として用いられるほか、合成ゴム、合成樹脂などの原料になる。

 アセチレンから作られる塩化ビニールは塩化ビニール系樹脂の原料として、雨具、靴、玩具、食器、各種パイプ類、ホースなど用途は幅広い。ポリビニールアルコールは包装材や化粧品の原料になる。

 また、ビナロン生成に触媒として用いられる苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)は石鹸や基礎食品の生産に用いられるほか、化学工業全般に広く利用される基本原料だ。

4月から肥料生産

 今回の2.8ビナロン連合企業所の再建によって、石炭中心の化学工業の発展という方向性が明確になったといえる。

 南興青年化学連合企業所でも昨年完成した石炭ガス化プラントの正常稼動を控え試運転の段階にある。4月中には本格的な化学肥料の生産が始まる。

 化学工業省のキム・ファシク責任部員は「国産原料と自国の技術に基づいた主体的産業構造の確立が朝鮮の科学工業発展の方向性だ。ビナロン生産工程の再建と石炭ガス化工程の確立は、その土台を築く成果だ」と語る。

[朝鮮新報 2010.4.2]