〈月間平壌レポート -10年3月-〉 変ぼうする街と暮らし |
経済復興へ一丸の取り組み 【平壌発=李相英記者】2008年末以来、1年数カ月ぶりに訪れた平壌。「変革の年」といわれた09年がもたらした変化をいたるところで垣間見ることができた。
「ビナロン慶事」
首都・平壌の変化はめまぐるしい。都市の姿も人びとの暮らしぶりも−。 2012年の完工を目標に現在、10万世帯住宅の建設が進められている。モデル事業として昨年、万寿台通り団地が完成した。対象地は市中心部から郊外にいたるまで大きく3つのエリアに分かれている。今年中に3万5千世帯、来年に3万世帯、そして2012年に3万5千世帯分の住宅を建設する計画だという。 開始から1年あまりが過ぎた3G携帯電話サービスも好調だ。事業主であるエジプト・オラスコム社によると、加入者は昨年末の時点で9万人を突破。現在も申込が殺到し、端末などサービス提供側の準備が需要に追いついていない状態だという。 今や市民生活に定着した感がある携帯電話。もちろん、諸外国のような普及率とはいかないが、今後も利用者数は順調に増加していくことは間違いない。 最近、経済分野でもっとも大きな話題となったのは2.8ビナロン連合企業所(咸鏡南道咸興市)の再建だろう。金正日総書記の2日連続の視察、同企業所に対する特別感謝文など破格の扱いが連日各紙の紙面を賑わせた。今月6日には、おひざ元である咸興市で「現代的なビナロン工場の竣工を祝う」大規模な集会が行われた。 集会の数日前、化学工業省の関係者にインタビューする機会があった。その際、関係者は現地で国家行事が催される予定だと明かした。しかしその彼も、まさか総書記が国家行事とはいえ地方都市での集会に出席するとは夢にも思わなかったはずだ。 総書記がこのような場に姿を見せるのは異例中の異例。また、経済建設の分野で一度に80人近い労働英雄が誕生したのも異例のこと。本紙平壌支局の現地スタッフの一人は、「西海閘門の建設時以来の受勲ラッシュではないか」と話す。 これらは2.8ビナロン連合企業所再建の意義の大きさを物語るものだ。国産の原料による繊維生産で衣料部門の発展を後押しするほかにも、ビナロン生産の過程で生まれる各種の化学物質を経済の各部門に供給できるようになった。 現代のライフスタイルは化学工業の発展を抜きにして語ることはできない。今年、朝鮮が人民生活の向上を至上命題に掲げたことを考えるとき、今回の国を挙げての盛り上がりが意味するものも見えてくる。 強盛大国の扉を開く2012年が目前に迫っている。 平壌市民に「人民生活の面から見る2012年のイメージ」について問うと、さまざまな答えが返ってくる。「普通江商店のような施設が市内に増えて、モノを買いたいだけ買うことができるようになる」といった、衣食住の充実を挙げる答えが多い。 人民生活に関しては、商品の安定供給や価格の値下げ以外にも電気、ガス、水道、通信といったインフラ、医療など住民サービスの充実が取り組まれている。工場などの生産部門、商店や食堂など末端のサービス部門にいたるまで一丸となった取り組みが今後どのような成果を生み出していくのか注目される。 世界に目を向ける 一方、文化・芸術の面でも変化はいちじるしい。 銀河水管弦楽団、三池淵楽団といった新グループの斬新な公演、歌劇「紅楼夢」や「エフゲニー・オネーギン」など海外作品のリメイク版も人気を集めている。 世界に目を向けた朝鮮芸術の発展という方向性が示される中、ロシアのチャイコフスキー名称モスクワ国立音楽大学代表団が訪朝( 11〜18日)した際には、金元均名称平壌音楽大学と同校との間で交流、協力に関する合意書が調印された。 モスクワ音大は世界中の大学とこのような協定を約30件締結しているが、朝鮮とは初めてだという。しかし、両大学間の交流は以前からさまざまな形で行われていた。ロシア側の専門家による朝鮮での教授活動、朝鮮学生の留学受け入れなどだ。 ロシアが生んだ大音楽家チャイコフスキーの名を冠した大学代表団の訪朝。当然、彼が作曲した「エフゲニー・オネーギン」の観覧も日程に組まれた。 公演に対する代表団メンバーの評価は上々だった。同大学のアレクサンドル・ソコロフ総長は、「朝鮮が自らの力でこの作品をふたたび上演したことは大変すばらしいこと。もし朝鮮側がロシア語によるオリジナルを上演する意向があるなら、ロシアでの公演も可能だと思う」と述べた。 [朝鮮新報 2010.3.31] |