「無償化手続き停止は理不尽」 朝鮮学校関係者が緊急声明発表 |
衆議院第1議員会館で記者会見 25日午後、朝鮮学校関係者による記者会見が日朝学術交流協会の主催によって、衆議院第1議員会館で開かれた。会見では、全国朝鮮高級学校校長会、朝鮮学校全国オモニ会連絡会、全国朝鮮高級学校学生連絡会、全国の朝鮮学校理事長連名の「緊急声明」が発表された。声明は、「無償化手続き停止」は理不尽極まりないとしながら、日本政府が一日も早く朝鮮学校に「無償化」制度を適用することを求めた。全文は次のとおり。 報道によると、11月24日の閣議後の会見で仙谷由人官房長官は、朝鮮学校の高校授業料無償化について「朝鮮半島が緊張してくる中で現時点では手続きを停止することが望ましい」と言明し、高木義明文部科学大臣も朝鮮半島の緊迫情勢と関連し「朝鮮学校の授業料無償化制度適用についての影響は極めて大きい」としながら「重大な決断をしなければならないかもしれない」と発言したとされています。また、菅直人総理は、みずから文部科学大臣に、「プロセスを停止してほしい」と指示を出したことを明らかにしました。 私たちは、このような菅総理の指示と仙谷官房長官や高木文科大臣の発言に驚きを禁じえません。 そもそも「高校無償化」制度の趣旨は、「すべての者に対して教育の機会が与えられるものとする」国際人権規約A規約の理念にもとづき、「すべての意志ある高校生などが安心して勉学に打ち込める社会をつくるために、家庭の教育費負担を軽減すること」にあったはずです。 また、「外交上の配慮などにより判断するべきものではなく、教育上の観点から客観的に判断すべき」というのが、朝鮮学校生徒への高校無償化制度適用についての審議過程における政府の統一見解であったはずです。 高木文科大臣自身もこれまで一貫して「政治と教育の問題を混同してはならない」との態度を取ってきましたし、11月5日にみずから発表した談話では「就学支援金は学校に支給されるものではなく、生徒個人個人に対して支給される」としながら、「国籍を問わず、わが国において後期中等教育段階の学びに励んでいる生徒を等しく支援する」ためのものであることを明確にしました。 私たちは、このような「高校無償化」制度の趣旨や政府の統一見解、文科大臣の公式発言に照らしてみて、なぜ、いまになって、総理と官房長官、文科大臣がみずからをも否定する矛盾に満ちた指示や発言をするのか、到底理解することが出来ません。 今まで再三にわたり明らかにされてきたように、朝鮮高級学校に通う生徒たちは、朝鮮籍と韓国籍、日本籍をもつ在日の子弟たちであり、彼らは日本に永住しながら民族的素養と誇りをもって日本の地域社会に貢献し国際社会でも活躍できるよう勉学に励んでいます。このような生徒たちとその都度起こりうる朝鮮半島の事態はまったく関係がありません。 にもかかわらず、今回の朝鮮半島における緊迫情勢を結びつけて、朝鮮高級学校生徒に対する無償化の「手続きを停止」するということは、理不尽極まりないと言わざるを得ません。 ふりかえれば、私たちは、朝鮮高級学校の無償化問題が提起され始めた二月下旬以来、日本学校や他の外国人学校に通う生徒たちと同様に朝鮮学校生徒たちにも等しく適用することを、日本政府に強く求めてきました。 その間、多くの与野党の国会議員や全国各地の地方議員の方々、日弁連と地方弁護士会や大学教員をはじめとする教育関係者や詩人などの文化人、報道各社、各界各層の社会団体や市民団体など、多くの日本の人々が支援を寄せてくださいました。 また、今年開かれた国連人種差別撤廃委員会と子どもの権利条約委員会の日本に対する審査会合では、この問題が取り上げられ複数の委員から憂慮が表明されたうえ、公式的な懸念や勧告も出されました。 文部科学省関係者の方々も、いく度となく各朝鮮高級学校を訪問し、教育の現状と生徒たちの構成や実態を詳しく把握してきました。 にもかかわらず、今年の4月に「高校無償化」制度が実施されてから8ヶ月が過ぎようとしている今日に至っても、朝鮮学校生徒だけがその適用を何度も先送りされ、対象から除外れたままになるという深刻な民族差別が続いています。このような事態に私たちの心がどれほど傷ついてきたか分かりません。 これ以上、私たちの心を傷つけないでください。私たちは、もうこれ以上待てません。 私たちは一日も早く、日本政府が11月5日に高木文部科学大臣が発表した談話と文部科学省が決定した「外国人学校の指定に関する基準や手続等を定めた規程」にしたがって、朝鮮高級学校生徒に無償化制度を適用することを切に願います。 2010年11月25日
全国朝鮮高級学校校長会 [朝鮮新報 2010.11.25] |