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「天の声に導かれた訪朝」(上) 朝鮮のこどもたちと触れ合って

にこやかに歓迎の歌を!

 「北朝鮮に行く」という仲良しの大竹聖美さん(純心女子大学准教授)の言葉を聞いたとたん心が動いた。

 旅行日程など皆目わからない時点で、なぜか私も行かなければ! という強い思いに駆られたのである。−百聞は一見にしかず−正直言って現在ほとんどマイナスイメージでしかとらえられない朝鮮の現状を、少しでも自分の目で確かめてみたいという思いもあった。

 しかしその後「南北コリアと日本のともだち展」実行委員会の企画であり、事務局長の筒井由紀子さんが実務担当者であるとの情報を得て、次第に私の訪朝の目的は明るい方向を目指して定まってきた。日本・韓国・朝鮮の子どもたちの絵を通して結ばれる友好関係は、子どもの本に関わる私の中心課題の一つでもある。同行する東京の朝鮮学校の生徒たちとの初めての出会いも楽しみである。

 かくして8月18日、成田から平壌を目指して出発したが、この旅は私にとって不思議な縁に導かれて、東北アジア平和を考える指標となったのである。

はじめまして「平壌」

子どもたちにあいさつ(筆者)

 瀋陽から平壌へ。空港で待ち構えていてくださったのは通訳の孫哲秀さん、金明日さんのお二人。現地で初めて交わす「アンニョンハシムニカ」の言葉に、何とも言えない親しみの感情があふれていてうれしかった。

 空港から高麗ホテルに向かう車窓の風景は、次第に大都市の表情を見せはじめ、万寿台議事堂、凱旋門、ことに金日成広場に整然と並ぶ群集の姿には目を奪われた。9月9日の建国記念日、10月の党創建65周年を祝うための練習が連日行われているというが、大マスゲームで知られる「アリラン」公演も開催中ということで、街並み全体の表情は活気に満ちている。

 到着したホテルで、金正姫さんも通訳の一人として紹介されたが、あらためて言葉と心をつなぐ誠意ある通訳という仕事に学ぶことが多かった。3人それぞれの個性から醸される雰囲気もまた、朝鮮滞在中の貴重な体験を深めてくれたように思う。

うれしかった小学生との交流

「祖国統一」と書く女の子

 10年目を迎えた「ともだち展」の今年のテーマは「行こうよ! 行こうよ! おまつりひろば」。

 東京発、平壌発、ソウル発の道がそれぞれ描かれるが、おまつりひろばに集結するという共同作業を最後まで導くのは、絵本作家の浜田桂子さんである。

 まずは長慶小学校のワークショップからスタート。5段階評価で成績優秀な子どもたちを紹介する廊下の壁写真に少々の戸惑いを覚えたが、低学年から高学年までの美術クラブの子どもたちが今日の主役。すでに先生の指導でそれぞれの絵を描いている子どもたちの背後に回って見学する。

 羽を広げた鳥の絵やアニメの主人公などが目立ったが、色鉛筆のソフトタッチな画面はまずは小手調べといったところだろうか。画面に「祖国統一」と大きく記す女の子もいた。

 しかしその後、華やかな民族衣装で歌と踊りを披露してくれた子どもたちの表情豊かな愛らしい姿に接して私は思ったのだ。見知らぬ人たちの視線や言葉から広がるイメージも、きっと子どもたち自身のエネルギーになって、これからの「ともだち展」の画面を彩ってくれるに違いない…と。(山花郁子・児童文学作家)

※写真はすべて長慶小学校

[朝鮮新報 2010.11.19]