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〈教室で〉 九州中高 国語担当 孫明浩先生

伝える力、理解力育てる

 生徒に満面の笑みがあふれる。その視線の先には、九州朝鮮中高級学校で中高級部の国語を教える孫明浩先生(40)の姿があった。いつも生徒目線で授業を工夫し、生徒たちの学校生活に潤いを与えている。メリハリのある授業や生活指導、人柄によって「母国語が好きになった」という生徒が増えているだけではなく、その熱血ぶりは同僚のなかでも一目置かれている。

「中心」をとらえる

取材を通じ中心をとらえ、報告を行う中3の生徒ら

 10月のある日、身の周りの社会現象について取材をし、グループごとに朝鮮語で報告をする中級部3年生の国語授業が行われていた。国際的な話題や携帯電話依存症など興味のある問題について、生徒らがあらゆる資料を持ち寄って発表する。生徒らは熱心に調べた内容をもれなく紹介しようと必死だ。

 なかでも高く評価されたのは、「世界と日本」というテーマで日本が誇る技術や輸出入の現状についての内容を発表したグループだ。「プレゼン上手」と評判だった金聖黎さんについて、「原稿をほとんど見ずに正確な朝鮮語で伝える能力に長けていた」と孫先生はほめた。

 母国語教育において、孫先生が授業中に重視している点がある。教科書をできるだけ見ずに、教員の声や録音を生徒に聞かせていることだ。

 生徒が朝鮮語に耳を傾けリスニング能力を高めることで、少しずつ授業内容の中心をしっかりととらえていく能力が育つ。そのような能力が今後、社会生活において役立つスキルにつながればと考えている。さらに学期ごとに一回ほど行う発表会を通じ、生徒らは発表する能力も高めていくことができる。

 朝鮮大学校教育学部で国語を専攻したという孫先生は、国語授業が民族的な自負心を確立するうえで大事な科目であると強調した。

話す前に「思考」

 取材、整理、発表するまでに、どれだけしっかり考え、話すことができたか。そして、どれだけ理解できたか。

 孫先生は生徒たちに、物事の中心をとらえる力が育つよう、「これだけは教える」というキーポイントを定め、それを追求していく方式で、授業を進めている。生徒が主導的に臨めるよう、たくさんの質問を投げかけて考えさせることで、「思考して話せる生徒」を育てている。

 昔に比べ、今の生徒は、ある行動をした後の予測をせず、その場のみを重視する傾向が強いという。孫先生が実践する質問のシャワーから生まれる生徒の思考は、予測する能力を育てる一つのプロセスであることがわかる。

 一方、孫先生は学校生活すべてにおいて生徒との関係を大切にしている。掃除の時間にもできるだけ率先して行動し、昼食も一緒に食べる。それらは生徒との間に、確固たる信頼感を築く要因かもしれない。孫先生が担任を受け持つ高級部2年の李基駿班長は、「掃除の時間を含め、すべての行動で僕たちを引っ張ってくれる」と語った。

 孫先生はまた、西東京朝鮮第2初級学校が近年、生徒数倍増を果たしたことを例にあげ、生徒だけではなく、学父母の求めにも耳を傾けることが大事だと指摘する。

 民族教育において、母国語を深く習得することは大きな力になると話す孫先生。異国で住む子どもたちが多言語に触れるなかで、民族性を大事にしてくれたらと目を細めていた。(李東浩)

[朝鮮新報 2010.10.29]