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〈続 おぎオンマの子育て日記-D-〉 空腹とのたたかい

イラスト:崔麗淳

 サンホとミリョンは初級学校まで、徒歩、電車、徒歩、チユニは中級学校まで自転車、電車、自転車という方法でそれぞれ1時間以上かかる。帰り道は空腹とのたたかいだ。今も昔も「買い食い」は禁止なので、子どもたちは食べ物を探す。初級学校から駅まで歩くグループが、よその家のザクロをもいで食べたり、駅構内のパイ屋さんの試食品を食べ尽くしたりしたことがある。抗議の電話が学校に入った。子どもらしい悪事だ。私も昔、1円を拾い友人と交番に届け、お巡りさんにお茶をごちそうになるというのを数回繰り返した。何度目かで怒られてやめた経験がある。他人に怒られるのも勉強だと心の底では思っているが、1人のせいで朝鮮学校全部が悪く言われることがあるのよと、くどくど怒ってしまう。

 仕事帰りの大人たちの間で、重いカバンを背負ったまま電車に揺られていると、「しんどいねぇ。アメちゃん食べ」と、バッグからアメを出して分けてくれるおばさんが結構いるようだ。駅前に最近できたドーナツ屋のお姉さんは、買わないとわかっているのに試食させてくれる。薬局の前でよく会うおじいさんは、チョコやビスケットをくれるらしい。「見知らぬ人に食べ物をもらってはいけません」とは言わない。

 7月の終わり頃、チユニたち中3の4クラスが、高校無償化に朝鮮学校を含めるよう求める署名を集めるため、街頭に立った。1時間ほどの間に、「えらいね」「がんばって」と言いながら、豚まんやジュースや、「飲み物でも買いや」とお金をくれようとする人が何人もいたという。初めて街頭に立つ子どもたちの不安や気負いを溶かしてくれた方々に感謝を伝えたい。

 子どもに携帯電話を持たせていない。緊急時には周りの人に声をかけなさいと教えている。助けてくれそうな人を見分けられるようになりなさいと、無理を承知で言っている。

 よその子でも、子どもには何か食べさせたいと思う大人たちが、私の子どもを共に見守ってくれていると思うのである。(李明玉)

[朝鮮新報 2010.10.1]