東京中高 民族管弦楽部 山梨で合宿 夢の舞台向け猛練習の日々 |
「今年こそ優秀作品を目指して」 東京朝鮮中高級学校民族管弦楽部が山梨県南都留郡で8月22〜25日、3泊4日の合宿を行った。11月4〜5日に行われる在日朝鮮学生中央芸術コンクールで、5年ぶりに優秀作品発表会の舞台に上がる夢を叶えるため、暑さの中、合宿へと向かう彼らに同行した。
切磋琢磨の4日間
22日の朝9時に観光バスで学校を出発し、宿に到着。荷物を降ろし午後から早速練習をスタートさせた。 今回の合宿の目標は、「合奏『サダンチュム』の曲想を統一させ、最後までひと通り合わせること」。同部の指導に当たる鄭淑佳教員は、目標を一つに絞ることによって密度の高い練習をするのが狙いだ、と話す。 暑さの中、冷房のない環境の中で始まった初日の午後は、各パート別に基礎練習の時間を多くとった。 ヘグムパートでは、演奏の基本となる弓を弾く力をつけることに徹した。集中的な練習に腕が痛み手を下ろすこともあったが、あきらめず休憩時間にもひたすら練習に励む部員の姿が目立った。普段より数倍ハードな基礎練習に、初日からつらそうな表情の部員もいた。 一日の練習が終わった後は、その日の成果、不足点を話し合い、次の日の目標を立てる。部員それぞれが一日の話し合いの中で、ウリマルを使うために努めたかどうか、練習の密度、集中力、時間厳守…。どれほど目標を達成できたかなどを自己点検した。初日ということもあり、全パートで生徒自身の自主性を重んじる姿勢が際立っていた。 2日目の朝からは、6時に起床し体力トレーニングを行った。音楽に合わせ、腹筋、背筋を100回ずつ行った後、眠たい目をこすりながらも一生懸命宿周辺を走る。「演奏するうえで必要な深い呼吸、集中力、忍耐力をつけるため筋トレは必要不可欠」と、鄭教員。3年生の文美佳さんはもともと膝を痛めているが、できるところまでランニングに参加するというから、気合が普通ではない。 2年生の洪玟ヤさんは伽耶琴のパートリーダーを務める。プレッシャーを感じながらも、練習中はリーダーらしく一人ひとり細かく指導し、できないところは何度も繰り返し練習するなど工夫を凝らしていた。 2年生でコントラバス奏者の金和淑さんは、パートが自分一人であるため、責任の重さを感じながら黙々と練習した。「毎日ほとんど個人練習なので、自分に負けず常にモチベーションを高めようと意識している」と話し、メニューも自分で考え基礎を磨き、新しい技の習得に余念がない。 2年生の趙孝哲くんは合宿中、自分の技術にあまり発展が見られないことに悩んでいた。それでも「スランプ=練習不足」だとし、技術向上に向かって励んだ。 合同練習終了後も多くの部員たちが居残って自主練を続けた。 夢の舞台に向けて
厳しい練習が続き、3日目にもなると疲労はピークに達し、生徒たちの表情から笑顔が少しずつ減っていった。だが、合奏に向け弱音をはくものは誰もいない。 「できるまで次には進まない」と、同部の部長で木管パートリーダーの申鉉宇くんの指導のもと、一音ずつ音程、音色、呼吸を合わせていった。 他のパートでも、今合宿の目標を達成するため夕方の音合わせに向け、集中力を高めていった。 24日夕、鄭教員が前に立つと、一瞬、張り詰めた空気が流れた。緊張が走る中で一度はじめから最後まで通してみる。そしてうまく合わなかったところをまた初めに戻って合わせていく。「同じフレーズの中で、自分以外のパートがどう演奏するのかをしっかり把握することによって初めてアンサンブルができる」と鄭教員。パート別で弾かせてみたり、部員全員の呼吸を合わせ完成度を高めていく。 練習後、鄭教員は、当初の目標を一応果たすことはできたが、「レベルアップのため2学期にはもっと努力していこう」と励ました。また、朝鮮学校生徒として、民族音楽を奏でる者としてきちんとウリマルを話し時間厳守、任された任務の遂行など、生活面でもしっかり規律を立てるよう強調した。 申鉉宇部長は「現在、各ウリハッキョの民族楽器部の部員数が減っているが、東京もその一つ。45年間、先輩たちが積み上げてきた伝統を守り、これから民族楽器部がさらに活性化するためにも、今年こそ優秀作品をとってもう一度その土台を作りあげたい。部員全員で力を合わせ一気に追い上げていきたい」と、コンクールに向けた熱い思いを語った。 3日目の夕方には、宿が用意したバーベキューに舌鼓を打ち、楽しいひとときを過ごした。 4日目は午前の練習を終え、バスで一路東京へ。その間の疲労がどっと出たのか、ほとんどの学生が車中ではぐっすり眠っていた。 本番まで残された時間は約2カ月。必ず優秀作品の舞台に上がるという全部員の思いを一つに結束させた意義深い4日間となった。(文と写真・尹梨奈) [朝鮮新報 2010.9.3] |