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〈100年を結ぶ物語・・・人々の闘いの軌跡・・・G〉 「高校無償化」問題

日本市民のたたかい

多くの日本市民たちが「無償化」除外問題に反対し声を上げた

 「高校無償化」からの朝鮮学校除外に反対する声を上げているのは同胞だけではない。多くの日本市民たちが街頭宣伝や大規模な集会やデモ行進、文科省などへの要請活動を繰り広げてきた。

 6月27日の芝公園でのデモ行進に参加した柏木美恵子さん(練馬区在住)はその理由を、「日本の民主主義の根幹に関わる問題。在日朝鮮人が生きにくい社会は、私たち日本人も生きにくい社会だ」という。

 「これは私たち日本人の問題」−日本にはびこる民族差別、排外主義の風潮を払拭しようと、同胞たちに負けじと高らかに声を上げてきた。また、それに賛同する日本市民たちは多い。

 東京・多摩市に住む常野雄次郎さんが「日本人として、政府に対して責任を感じる。朝鮮学校を標的にした差別的処遇は、植民地支配の継続であり、帝国主義の存続を示している」と語るように、「無償化」問題は、単発的な事柄ではない。日本社会に存在する朝鮮敵視、在日朝鮮人弾圧の流れのなかで浮上した問題である。現に、法案の試算の中には朝鮮学校も含まれていた。しかし、中井洽拉致問題担当相の「朝鮮学校除外」発言によって流れが一変した。数多い外国人学校の中、朝鮮学校のみが外された形で法案は施行された。3月には橋下徹大阪府知事が、朝鮮を「不法国家」と扱い、朝鮮学校に対する府の助成の是非において「肖像画」を外すことなどを条件とした。

 日本の教育基本法にあるように、教育の機会は均等に与えられるべきで、教育上の差別は言語道断である。今まで出されてきた「子どもの権利条約」「人種差別撤廃条約」などの国際人権諸条約により、子どもの学習権は、国籍や民族などにかかわらず居住国が保障する義務があり、外国人学校の子どもたちも、日本の子どもたちと同等に扱わなければならないことは明らかである。まして、朝鮮学校は、その歴史的経緯から考えてもなおしっかりと保障されるべきである。

小学生の呼びかけ

文部科学省にも訪れ、「無償化」法案への朝鮮学校適用を求めた日本市民団体は多い

 多くの世論が集結し、「50万人署名運動」も優にその目標数を越えた。

 東京都公立学校教職員組合の長谷川和男さんは、37年にわたり朝鮮学校と交流を深めてきた。「交流会には、たくさんの教員たちが参加してさまざまなことを学んでいる。日本語の授業内容だけを見てもすばらしく、生徒たちも実に意欲的で礼儀正しい。長年の経験のなかで、朝鮮学校が十分に高等学校に類する教育内容を備えていると実感している」と話した。現場を見て朝鮮学校の生徒たちと触れ合っている日本学校の教員や近所の人たち、地域の人たちは朝鮮学校の真の姿を知っている。

 朝鮮学校の民族教育は、半世紀以上に渡り実施されてきた。現在、ほとんどの日本の大学が受験資格を認め、インターハイや各分野の学生コンクールなどにも出場している。65年間、その教育内容をろくに知ろうともせずに、ここにきて「教育内容が不透明」などというのは言いがかり以外の何ものでもない。

 オモニたちの話のなかでこんなことを耳にした。「うちの子と同じ保育園に通った日本の小学生が『無償化』問題を知り、『なんで? おかしいよね?』と母親に訴えた。そして、通う小学校のクラスで署名を呼びかけ、集めてくれた」と。幼い日本の児童までもが、この不当な差別に首を傾げている。いかに異様な社会かを物語っていないか。

不幸な歴史に終止符

 この間に筆者が会ってきた日本の政治家・文化人をはじめ、市民たちはみな「差別や蔑視がまん延している社会は直ちに是正すべきだ」と、危惧していた。「差別や敵視からは何も生まれないし、始まらない。日朝の不幸な歴史に終止符を打ち、友好の一歩を踏み出さなければならない」と、ある20代の日本人女性は切実に語っていた。

 「高校無償化」除外という恥ずべき差別が続けられてはならない。「学ぶ権利」が平等に保障されるべきという人類の普遍的価値に基づいてこの問題が解決されるよう強く望む。(姜裕香記者、おわり)

[朝鮮新報 2010.8.24]