神奈川オリニフェスタ「ミレ」2010 教育フォーラム(大人の部) 鶴見朝鮮幼稚園の体育館で開催 |
「ウリハッキョの価値を実感できた」
「神奈川オリニフェスタ『ミレ』2010」が6月27日、鶴見朝鮮幼稚園で行われた(主催=同実行委員会)。今年で6回目となるオリニフェスタは、例年と異なり、子どもの部「マンモス朝鮮幼稚園」と大人の部「教育フォーラム」に分けて開催された。大人の部は、子どもたちの明るい未来のために正しい知識を習得し、共通する環境の中で親たちが抱える複雑な問題を共有しようとするもの。 教育フォーラムでは「がんばってます。ウリハッキョ!」と題して4人のパネラーを招き、生徒数減少など、ウリハッキョが抱える諸問題についてディスカッションが展開された。この日のパネラーは日本デザイナー学院、日本写真芸術専門学校の宋成烈理事長、映画「ウリハッキョ」の金明俊監督、北海道朝鮮初中高級学校教員でサッカー部監督の藤代隆介氏、神奈川のオモニ代表金春美氏で、神奈川県青商会の車葡剣實長が司会進行を務めた。 優れた教育、人材育成 現在、同県下のウリハッキョが抱えるあらゆる問題のなかでも一番深刻なのは、生徒数の減少傾向だ。 同実行委がその理由を探る過程で得たのは大きく4つに分けて、@ウリハッキョの教育は教科書も含めて日本学校よりレベルが落ちるのでは? A卒業後の進学、進路が限られているのでは? B学費が少し高すぎるのでは? C人数が少ないからウリハッキョに送りたくないのでは?−という仮説だった。 「この4つの仮説は妥当なのか」、パネラーたちがそれぞれ仮説を検証する形でディスカッションは進められた。
まず藤代氏が、朝鮮学校の生徒が日本の生徒に比べ、比較的コミュニケーション能力が高い秘訣は国語の教科書の内容の豊かさにあると述べた。
「あいさつはもちろん、相手の目を見てしっかり受け答えができる。それが自然と身につく内容が国語の教科書に含まれている。一見当たり前なことだが、それができない日本の生徒は意外に多い。また歴史の授業では、正しい歴史観を持って多角的に物事を見る力を身につけさせることができる」と朝鮮学校の教科書の優れた点について語った。 仮説Aについては、宋氏が「EQ(感情や心の知能指数)教育が高いウリ学校卒業生のチャンスの時代を迎えている」と言うワンフレーズを掲げ、「どこの企業も今一番必要としている人材は、IQよりもEQ能力と社会人基礎力。利己的発想がはびこる日本社会の中で、愛する者たちのために′」身的に活動するアボジ、オモニたちの姿を見て育つ子どもは、とてつもなくEQが高くコミュニケーション能力に長けた人間に成長する。つまりこれから日本、海外で本当に必要とされるのはウリハッキョ出身者だ」と説得力のある解説を展開した。 金明俊氏も「実際、多くの場で朝鮮学校の生徒が活躍している要因は、One for all, All for one≠フ集団主義、朝鮮民族であるとの自尊心、強い精神力をもてる教育を朝鮮学校で行っているからだ」と断言した。 仮説Bについては、金春美氏が「公的助成金が少ない中で、現実的に朝鮮学校の学費は日本学校に比べ高いようだ。しかしどこにも負けない『知徳体』のそろった人材が育っている。そのことは胸を張って言える」と話した。 また、宋氏は「学校運営と教育費には本来お金がかかるもの。朝鮮学校の学費は決して安くはないが、その内容を考えるとむしろ良心的とも言える。高いとみるか安いとみるかは、教育に対する価値観が反映される」と述べた。 また、パネラーらの発言に先立ち、神奈川中高を卒業し、現在子どもをウリハッキョに通わせている具星鵬氏が、現在の教科書は、内容もレベルも以前に比べ大きく変化、向上したことも指摘。4つ目の仮説については時間の関係上省略され、VTRを見ながら今日のディスカッションを想起し、自身で答えを探すことになった。
ウリハッキョへの確信
川崎市に住む金雅代さんは現在2歳の子どもを来年、朝鮮幼稚園に送る予定だ。 「今日はとても良い一日だった。正直、日本学校へ送るという選択肢もあったが、この教育フォーラムに参加したことによって、子どもをウリハッキョに通わせる確信を持てた。これからも先生方、学父母みんなで力を合わせ、朝鮮学校と在日社会をさらにグレードアップさせていきたい」と述べた。 4歳の息子を川崎初級付属幼稚園に通わせている金貴龍さんは「ウリハッキョに送ることに経済的な不安はあった。だがウリ幼稚園に通ってしっかりあいさつをするようになった息子の姿を見るとその心配は消えた。今日一日を通してもウリハッキョへの確信を持てた」と話した。(尹梨奈記者) [朝鮮新報 2010.7.9] |