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「高校無償化」 朝鮮学校排除し始まる 文科省、「大臣任命者」による審査に言及 「生徒の学習権への重大な侵害」

「他の外国人学校との同時適用を」 朝鮮学校関係者らが記者会見

 日本の参院本会議で3月31日に可決、成立された「高校無償化法」が、朝鮮学校だけを実質的に排除した形で4月1日から施行された。

 1日に発表された文部科学省の省令などによると、外国人学校については、@本国への確認、A公的機関による認定、B大臣任命者らによる検討−−を経て、文部科学大臣が対象に含めるか否か判断する。Bに分類された朝鮮学校については、「高等学校の課程に類する課程を置く」かどうか「第三者機関」による審査を経て結論が出される見通し。「参院選後まで結論を先送りにした」との見方がある。

 これを受け、学校法人東京朝鮮学園の金順彦理事長は談話を発表。「朝鮮学校だけに対する審査は、教育の自由を無視し政治的な思惑によって教育に不当に介入しようとするものであり、外国人学校の間に新たな差別を持ち込むもの。朝鮮学校に通う子どもの学習権に対する重大な侵害だ」と強く非難し、朝鮮学校を他の外国人学校と同様に差別なく、同時に制度の対象に含めるよう求めた。

 学校教育法に定められた「各種学校」として認可されている外国人学校を本国への照会、公的機関による認定などの基準で区分けすることは、朝鮮学校を排除するためのものでしかない。実際、文科省令など言及された「大臣任命者による検討」に該当するのは朝鮮学校だけだ。国連人種差別撤廃委員会や日本の法曹界からは、「外国人学校の選別基準として教育内容を用いるべきではない」との指摘がある。また、朝鮮学校だけに基準を設けることは、外国人学校の間に差別を持ち込むもので、日本国憲法14条で定められた平等原則に反するとの指摘がある。

「高校無償化」同時適用を訴え記者会見に臨む朝鮮学校関係者たち

 日本政府が「制度開始時の朝鮮学校排除」の立場を示したことと関連し、朝鮮学校関係者、保護者、生徒、日本の市民団体関係者らが1日、参議院議員会館で記者会見を行った。会見に臨んだ関係者らは、怒りを通り越しひどく落胆した表情を浮かべていた。

 校長会の崔寅泰副会長(茨城朝鮮初中高級学校校長)は、朝鮮学校が除外されたことを伝えられた生徒が「またですか」と落胆していた姿を見て、生徒や保護者のことを思うと慰めや励ましの言葉をかけることもためらわれ、つらい思いをしたという。「平和国家であるはずの日本が子どもたちの夢や希望を実現できないのか。朝鮮学校の生徒に面と向かって『君は高校生でないから対象ではない』と言えるのか」と憤りを露わにした。

 全国朝鮮高級学校校長会の愼吉雄会長(東京朝鮮中高級学校校長)は、朝鮮学校生徒たちの日本の大学への進学、スポーツ・芸術大会への参加などを挙げながら、「(これらは)朝鮮学校が日本の高校と同等だと認められているからだと思っている。朝鮮学校だけ外すのは許せない」と訴えた。

 同高保護者の韓英叔さんも、「朝鮮学校排除には政治的意図があるとしか思えない。朝鮮学校は自治体や市民らが認めている。文科省が確認できないというのは理解できない」と述べ、当局者らの学校訪問を求めた。

 4月から同校高級部3年生になる金瑟婀さんは、「私たちが望むことは、日本の高校生と同じように勉強し楽しく過ごしたいというだけ。なのになぜ差別されるのか。鳩山首相は学校に来て、私たちの姿を自身の目で直接見て感じてほしい」と訴えた。

 会見に同席した神奈川県朝鮮学園を支援する会の園部守事務局長は、「制度自体は評価できるが、朝鮮学校だけを外したことは極めて遺憾だ。新たな差別を助長する危険がある」と指摘した。

 日朝学術教育交流協会の西澤清副会長は、「制度における就学支援金の受給権者は生徒であるはず。日本政府は、生徒に不安を与えていることについて謝罪し、当事者に説明すべきだ」と指摘。その一方で、3月27日、東京・渋谷で行われた緊急行動に多くの若者が参加したように、今回の問題を通じて民族教育の大切さが広く伝わったとし、「子どもたちに正しい方向性を示すべきだ」と訴え、朝鮮学校への「無償化」適用を訴えた。

朝鮮学校生徒にも差別なく同時適用を 「高校無償化」問題で東京朝鮮学園が談話発表

 「高校授業料無償化」制度施行を受け、学校法人東京朝鮮学園の金順彦理事長が1日に発表した談話は次の通り。

 昨日の参院本会議で「高校授業料無償化法案」が可決、成立しましたが、国会審議での文部科学大臣の答弁や報道などによると、文科省は学校法人の認可を受けている外国人学校の中で朝鮮学校に通う高校生に限っては、無償化の対象にするかどうかの可否を有識者からなる「第三者機関」の審査に委ねその決定を夏までに先送りするとしている。

 このことに関して朝鮮学校の教職員、学生、保護者たちは、何故都道府県から同じ認可を得た外国人学校の中で、朝鮮学校だけが審査の対象となるのか大きな驚きと不安を禁じえないでいる。特に生徒たちは、今まであらゆる場で「私たちも同じ高校生、差別しないでください」などと幾度となく鳩山総理や川端文部科学大臣をはじめ日本政府に求めてきたにもかかわらず、その切なる願いが踏みにじられ彼らの心は深く傷ついている。

 朝鮮学校だけに対するこのような審査は、「教育の自由」を無視して政治的な思惑によって教育に不当に介入しようとするものであり、外国人学校の間に新たな差別を持ち込むものとして、法の下の平等に明らかに違反する。

 また、朝鮮学校に通う生徒らを高校無償化制度の対象から恣意的に除外することはもちろん、その教育内容を経済的給付の可否の判断材料にすることは、朝鮮学校に通う子どもの学習権に対する重大な侵害にもなる。

 そもそも今回の「高等学校の課程に類する課程」かどうかの判断基準は、国会答弁で文部科学大臣が明言しているように2003年当時、朝鮮学校だけを除外するために考案された許しがたい外国人学校の大学入学資格区分を参考にしたものである。

 当時、文科省は、朝鮮学校についてだけ、「当該外国の正規の課程(12年)と同等として位置付けられている」かどうかを、大使館等を通じて「公的に確認」することができないとして、朝鮮学校の修了者は各大学での「個別審査」によるという差別的扱いをした。

 これが、2002年の日朝首脳会談後の「拉致」問題を契機に日本で渦巻いた反共和国、反朝鮮人感情を背景にした政治的判断の結果であったことは当時の新聞報道を見ても明らかである。

 今回も、文部科学省が財務省に提出した概算要求では朝鮮学校等を含めて試算がなされていたにもかかわらず、一部の閣僚が朝・日間の政治、外交問題などを口実に朝鮮学校を対象から外すよう首相や文部科学大臣に働きかけた結果、朝鮮学校を除外する方向で最終調整しているとの報道までなされるに至った。

 そもそも高校無償化法案に基づく就学支援金の受給権者は「生徒」であり、学校は、事務処理の便宜上、それを代理受領するにすぎない。

 もし、各種学校の認可を得た外国人学校の中で朝鮮学校のみがこの制度対象から除外されるならば、それによる経済的不利益は、朝鮮学校に通う生徒及びその保護者に生じることになり、これが本制度の趣旨を没却するものであることは明らかである。

 まして、朝鮮高級学校に子どもを通わす保護者は当然、納税の義務を果たしており、今後、高校無償化の実施に伴い扶養控除額が引き下げられるため、朝鮮高校だけが無償化の対象から除外されると、その保護者だけが「給付なし、控除なし」の二重の差別的な取り扱いを受けることになる。

 今年の3月16日に、国連・人種差別撤廃委員会も、朝鮮学校を高校授業料無償化の枠から除こうとする日本の政治家の動きについて懸念を表明し、日本政府が高校無償化で朝鮮学校を除外するのは人種差別に当たり、人種差別撤廃条約の「教育に関する権利の平等保障義務」に違反していると警告し、改善を勧告している。

 朝鮮学校が、日本の高等学校と同等の教育課程を有しているということは、朝鮮学校の教育課程に関する情報が、監督庁である都道府県に必要に応じて提出され、朝鮮学校自らがホームページ等でも公開しているので、わざわざ新たな審査の場をもうけなくとも容易に判断できるはずである。

 このことは、日本のほぼすべての大学が朝鮮高級学校卒業生の受験資格を認めており、実際、東大や京大をはじめ多くの国公立や私立大学に現役で進学している事実ひとつ見ても明らかである。

 にもかかわらず、日本植民地支配の被害者である在日同胞の子孫であり、日本で生まれ育った朝鮮高級学校生徒に対して、このように差別することは、理不尽であり断じて許されないことである。

 日本政府は、民族や国籍の違いによるこれ以上の差別を生じさせぬよう、朝鮮学校を他の外国人学校と同様に差別なく、同時に「高校無償化」制度の対象に含めるべきである。

[朝鮮新報 2010.4.2]