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〈虫よもやま話-31-〉 学習−最終回−

ニッポンニゲナガハナバチの蜜収集の様子

 「教授に熱意のこもった手紙を書きなさい!」

 大学院に入学前、不安を抱える私に多くのアドバイスをしてくれたのはイモ(伯母)でした。自身の進学への情熱を手紙に書いて教授へ送るよう強く勧めたり、研究室訪問を事前に行うことを幾度なく強調しました。私が幼い頃から学習には大変厳しかった伯母ですが、その分、意欲も高めてくれました。

 今回はその「学習」について語ろうと思います。

 従来、昆虫類は生まれつき本能的行動に支配されていると考えられてきましたが、「柔軟性」も予想以上にあるということがわかってきました。よく「下等」だと思われがちな昆虫類ですが、彼らにも立派な脳が具わっており(もちろん私たちほど複雑ではありませんが)、学習能力を具えていることが近年の研究で明らかにされてきたのです。

 とくに研究が盛んに行われている昆虫はミツバチです。

 蜜のある花を見つけたミツバチは同じ場所へ戻ってくるために、花の色や形、匂いだけではなく、時刻をも記憶し、花弁の表面の感触(主に凹凸)などから花の種類を確認しているという報告があります。

 また蜜を採集して帰ってきたミツバチは、暗闇の(3D構造で複雑に作られた)巣内で大群をかき分けて目的の位置まで正確に蜜を運びます。そのためにはしっかりとした記憶に基づいた学習能力が必要と考えられているのです。

 学習とは、ある経験が記憶され、後の行動に適応的な変化として現れること≠ニありましたが、人の脳細胞の数万分の1ほどしか満たない昆虫の小さな脳に、実は大きな神秘が眠っているのです。いいえ、私たちにまだまだ想像もつかないほどの能力が眠っていると考えたほうがいいのかもしれません。

 大学院卒業まで余すところあと1年。

 もう4年も経ったのかと思うとぞっとします。

 この間、昆虫たちを少しでも多く理解しようと四苦八苦励んできたつもりですが、彼らの魅力は日々大きくなるばかりで到底追いつけそうにありません。

 いえ、そもそも理解しようとすること自体が傲慢なのかもしれません。それでもその実像に少しでも近づきたい、こんな気持ちや意欲こそが、学習の基本だと考えています。

 彼らから少なからず学んだことを、これからも活かせるよう努力し続けたいと思います。(韓昌道、愛媛大学大学院博士課程)

[朝鮮新報 2010.3.26]