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「高校無償化」 除外はおかしい 日本の識者の声 国連で日本政府への非難集中

 「高校無償化」から朝鮮学校だけを外すというニュースに、国連の人種差別撤廃条約委員会の委員はどう反応したか。ジュネーブでの見聞を報告したい。

 日本は人種差別撤廃条約を批准しており、定期的に国内の人種差別撤廃への取り組みを国連に報告する。条約委員会は、政府報告書および国内NGOの報告書をもとに、日本政府代表団と対話を行い(俗に「審査」と呼ばれる)、その結果を最終見解として発表する。

 日本政府は2008年8月、実質2回目の政府報告書を提出した(条約上は2年毎に提出することになっているのだが、サボり続けて第3〜第6回分をまとめて出したのである)。前回は2000年1月に第1〜第2回分を出しているから、実に8年ぶりであった。

 これに対して国内NGOも精力的に報告書を委員会に提出。それらを踏まえての審査が2月24〜25日、スイスのジュネーブで行われた。このように、政府もNGOも審査の何カ月も前から入念に準備した報告書について、何とか審査および最終見解に盛り込んでもらおうと思うわけであるが、「高校無償化」の朝鮮学校外しが国内で報じられたのは審査の直前。事前に報告書に盛り込んでいるNGOはもちろんなかった。しかも、当日のロビーイングのため渡航を予定していた在日本朝鮮人人権協会のメンバーのビザが間に合わず、在日朝鮮人当事者はジュネーブにいない状況。「外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク」より参加した師岡康子さんが、審査直前のわずかな時間に、多忙な委員の一部に対して急遽この問題を訴えただけだった。

 もともと日本の人種差別問題のうち、在日朝鮮人の教育問題は委員たちの関心が高い分野である。前回2001年の最終見解でも、「在日コリアン学生が高等教育へのアクセスについて不平等な取り扱いを受けていることに懸念を有する」と指摘されている。今回も、NGO事前提出の報告書には朝鮮学校への財政支援の乏しさ、大学入試資格差別、税制上の差別などが詳述されており、これらの問題について、委員から日本政府代表団に質問や批判が相次いだ。「非一条校への財政援助が少ない。税制上も差別がある」(ソーンベリー委員、イギリス)、「朝鮮学校への嫌がらせが続いている」(ドゥ・グート委員、フランス)、「南北コリアの学校が、他の学校と同等なのに大学入試資格が同等でないことについて、私は受け入れられない。生徒への嫌がらせや攻撃に対する処罰もない。日本とノースコリア政府の関係が悪化しているが、北のミサイルが日本に住んでいる朝鮮学校の子どもたち、罪もない子どもたちに影響するのはおかしい。朝鮮学校だけ税制上控除が認められないのは差別だ」(ディアコム委員、ルーマニア)などなど。

 そして注目すべきは、「高校無償化」からの朝鮮学校外しについて、事前の報告書がなかったにもかかわらず、委員らが敏感に反応したことである。「ウェブサイトで日本の新聞を見た。教育費支援法案について、閣僚が朝鮮学校を外せと言っている。日本の新聞が社説でこれを批判している。この件はどうなっているのか。差別的扱いがなされないよう望む」(アフトノモフ委員、ロシア)、「朝鮮学校を無償化から外すということを日本の新聞の社説が批判していた。子どもの学習権の侵害だ」(カリ・ツァイ委員、グアテマラ)。

 日本政府代表団の答弁は「国会審議を見守る」というだけであり、人種差別と断固闘うという政府の意思は全く見出すことができなかった。

 この原稿を書いている3月12日にも、委員会の最終見解が出されるであろう。「無償化」からの朝鮮学校外しは、国際人権水準に照らしても全く受け入れられない差別であることは明白である。(江頭節子・弁護士)

[朝鮮新報 2010.3.15]