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そこが知りたいQ&A−「無償化」制度の朝鮮学校除外は何が問題?

法的にも除外は不当 子どもの権利条約、憲法にも違反

 4月からの実施に向けた「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案」(高校無償化法案)の審議が国会でされている。民主党は教育政策の集大成としている「日本国教育基本法案」で「何人にも『学ぶ権利』を保障」するとしているが、政府内では朝鮮を敵視する中井洽拉致問題担当相などの一部閣僚らが同制度から朝鮮学校を除外しようとする動きを見せている。「朝鮮学校はずし」が内外の批判を招いている。朝鮮学校除外の問題点をQ&Aでみた。

 Q そもそも朝鮮学校は対象外なのか。

 A 文部科学省が昨年10月に提出した2010年度の予算概算要求には朝鮮学校が対象として含まれている。

 1月29日に閣議決定された高校無償化法案の目的は、教育にかかる経済的負担を軽減し、教育の機会を均等に寄与すること。また、対象となる学校種のひとつに各種学校(高等学校に類する課程として文科大臣が指定)が定義されており、日本国内に住所を有するものであれば外国籍者も支給対象だ。つまり、各種学校の認可を受けている朝鮮学校など外国人学校も含まれているということだ。

 Q 朝鮮学校高級部の教育内容と水準が「高等学校に類する課程」とみなせる根拠はどこにあるのか。

 A 朝鮮学校では、日本の学校制度に合わせて6・3・3・4制を採用しており、学校教育法第1条が定める日本の学校と遜色のないカリキュラムで教育が行われている。

 また、ほとんどの国立大や私立大が、「高等学校を卒業したものと同等以上の学力がある」として大学受験資格を認めている。

 スポーツの分野でもインターハイなど日本の高校が参加する「全国大会」への参加資格を有している。今年度の全国高校ラグビー選手権大会では大阪朝鮮高級学校が3位の成績を上げた。

 Q 「国交がなく教育内容が確認できない」と政府関係者は話しているが。

 A 朝鮮学校の教育課程に関する情報は、各種学校の認可を受ける際に必要に応じて提出している。また、朝鮮学校はそれぞれのホームページや公開授業などを通じて教育内容を公開している。内容の確認や日本の高校との比較も容易にできる。

 朝鮮学校がどんな教科書を使っているのか知らない議員も多いようだが、日本の学習指導要領などを参考にし、朝鮮学校の教員らで構成された「教科書編さん委員会」が制作した自前の教科書を使っている。最近では2003年から06年にかけて全面改編が実施された。内容は、日本での定住を念頭に在日朝鮮人社会の世代交代、在日朝鮮人を取り巻く時代と環境の変化、朝鮮学校に対する保護者のニーズ、日本の実情が考慮されている。

 Q 法曹界からも「不合理な差別」だとの声があがっている。

 A 今回の「除外」の動きは、国際条約や日本の憲法にも違反している。そもそも、朝鮮学校に通う子どもには、子どもの権利条約、人種差別撤廃条約及び国際人権規約などの国際条約、憲法第26条1項(教育を受ける権利)、第14条1項(平等権)の各規定の解釈から、学習権(普通教育を受ける権利及びマイノリティー教育を受ける権利)が保障されている。これらの条約の締約国である日本は朝鮮学校を認め、民族教育を尊重する義務があるのだ。国際的にも懸念の声が強まっており、先月、ジュネーブで行われた国連人種差別撤廃委員会の対日審査会合では、複数の委員が朝鮮学校を「無償化」の対象外にする動きに疑念を示した。

 一方、国際諸条約にかんがみ、332人の弁護士で構成された「外国人学校・民族学校の問題を考える有志の会」は5日、鳩山由紀夫首相と文科相に意見書を提出。日本弁護士連合会会長、第二東京弁護士会会長、自由法曹団などは声明を発表し、「朝鮮学校はずし」の不当性を指摘している。

 つまり、法的にも教育上の内容においても、朝鮮学校は「高校無償化」の適用対象となる条件を満たしている。

 Q 一部の閣僚が対朝鮮「制裁」を除外理由に挙げているが。

 A 国家間の政治・外交問題を教育問題、子どもたちの学習権を保障する問題と結びつけるのは筋違いの主張だ。

 日本政府が朝鮮に対する敵視政策を、国内で実施されている子どもの教育問題にまで適用して人為的に線引きすれば、新たな民族差別、人権侵害を引き起こすことになる。

 朝鮮学校の除外検討理由に国交の有無が論じられているが、朝鮮と同様に国交のない台湾系の中華学校については、対象となることが想定されている。

 「無償化」問題は、在日朝鮮人が日本に暮らすようになった歴史的経緯を踏まえて、「子どもの教育問題」として議論され正しく解決されなければならない。(呉陽希記者)

[朝鮮新報 2010.3.12]